【AI活用時代に備えて】GoogleDriveを”AIフレンドリーな知識倉庫”にするデータ格納戦略を考える

AIの進化が業務のあり方を大きく変えようとしています。これからのAI活用では、私たちが日々蓄積する「データ」こそが競争力の源泉となります。身近なGoogleDriveをAIの「知識倉庫」として最大限に活用するためのデータ格納戦略について考察します。

目次

なぜ今、Google Driveの「知識倉庫」化が必要なのか?

今後のAI活用は、「すべてを記憶した巨大なモデル」から、「非常に賢い小規模モデル + 知識倉庫(RAG)」の組み合わせが主流になると言われています。

ただ、そもそもすべてのデータをGoogle Driveに格納している場合には、わざわざRAGを構築することなく、そもそもこのGoogleDriveそのものがAIにとっての「知識倉庫」とすることができます。

Geminiに「クライアントA社の去年の◯◯は?」と聞いて「はい、こちらです」と瞬時に答えてもらう未来。

そのためには、AIが「読みやすく」「理解しやすい」形でデータを格納しておくことが、非常に重要になってくることになります。

AIフレンドリーな「データ整備の3つの基本」

AIがデータを正確に参照できるようにするためには、基本的な「データ整理」が重要になってきます。

AIが読める「テキストデータ」を最優先に

最も重要なのは、AIが読み取れる「形式」でデータを保存することであると考えられます。

そもそもAIは、「文字(テキスト)」を読み取って情報を理解します。

例えば、スキャンしただけの書類(これらはAIにとって”画像”)は、AIにとっては、中身が読めない「ただの箱」と同じになってしまいます。

  • AIが最も得意な形式
    Googleドキュメント、スプレッドシート、スライド。
    これらはAIにとって最もネイティブで読みやすい、完璧なデータ形式です。
  • AIが読み取れない形式
    画像ファイル(jpeg、pngなど)や、粗くスキャンしただけの「画像PDF」。

ここから考えられることとして、対策として、画像データをできるだけ「テキスト」で読めるように工夫して格納するということが考えられます。

”画像”というよりも、テキストが読み取れる形式のPDFでスキャンして格納するようにする、あるいは、その画像を「アプリで開く→Googleドキュメント」を選択してテキストとして格納するなどです。

「説明的なファイル名」でAIの索引を作る

次に重要なのは、ファイル名です。

AIが「これは、いつの、誰の、何の書類か」を即座に判断できるよう、一貫した命名規則を導入することが求められます。

例えば、「scan_001.pdf」や「A社資料_ver2.pdf」といったファイル名では、人間もAIも中身を推測できません。

そのため、AIが情報を検索する際の強力な「索引(インデックス)」となるよう、構造化されたタイトルをつけます。

  • 悪い例
    R06_決算.pdf、B社(最新).xlsx
  • 良い例
    2025-10-28_株式会社A_月次試算表.xlsx、2025-09-30_B産業様_決算報告書(納品版).pdf、2025-11-01_C商事_打合せ議事録.doc

このように、「日付」「クライアント名」「書類の内容」といった要素を構造化してファイル名に含めることにより、AIの検索精度は飛躍的に向上することになります。

リネームに際しては、GASなどを組んで行ってみるのもよさそうです。

「フォルダ構造」と「説明欄」で文脈を補強する

重要なこととして、ファイル名だけでは伝えきれない「文脈」をAIに与えることです。

GoogleDriveであれば、この文脈を補強する強力な機能が2つあります。

1. 明確なフォルダ構造

「ラベル」機能も便利ですが、それ以上に手軽で強力なのが、「フォルダ階層」です。

例: /クライアント/A社/2025年度/決算資料/

このように明確な階層で管理されている場合、そのフォルダ内にあるファイルは、それ自体が「A社の2025年度の決算資料である」という強力な「ラベル(メタデータ)」を持っていることになります。

2. 「説明」フィールドの活用

見落としがちな機能ですが、AI活用においては非常に強力な武器となります。

Google Driveの各ファイルやフォルダには、「詳細」パネルから「説明」を追記できます。

ここに、タイトルに書ききれないキーワードや概要を書き込みます。

  • ファイル名:2025-10-28_株式会社A_月次試算表.xlsx
  • 説明欄への追記:2025年10月度(9月締め)。営業利益は広告宣伝費の増加により微減。担当:●●。

こうすることで、ファイル名だけでは分からなかった「文脈」がデータに付与され、より曖昧で高度な質問にもAIが対応できる「知識」となります。

【補足】その整理が本当に必要なのか? (AIの進化から考えてみる)

そのような”几帳面な整理”、本当に必要なのだろうか?ということも考えてみます。

最新のAIは、すでに書籍何千ページ分もの情報を一度に読み込み、文脈を完璧に理解する能力を持っています。

AGI(汎用人工知能)の到来も、専門家の間では年単位で予測されていますし、もしもAIが、会社の特定のフォルダにある全ファイルを丸ごと全部一度に読み込めるとしたら、ファイル名が何だろうが関係なくなってくることになります。。

データが多少間違っていても、AIがとても賢くなることから、前後の文脈から正しい答えを導き出すかもしれません。

このような視点に立つとしたら、優先すべきは「完璧なファイル名をつける」という整理の手間よりも、「漏れなくすべてのデータをGoogleDriveに放り込む(デジタル化する)」ことそのものかもしれません。

もしも、やがてのAIの圧倒的な「文脈理解能力」を信じるのであれば、人間の役割は「整理」ではなく、「AIに十分な判断材料(=データ)をとりあえず漏れなく提供すること」だけになる可能性もあると考えられます。

【補足】AIが自動で育てる「知識倉庫」という未来

「人間がAIのために整理する」のではなく、「AIが人間のためにデータを整理する」というワークフローの構築を考えてみます。
現在の業務フローとAI-OCRを組み合わせたプランとして。

ステップ1:AI処理待ちフォルダの設置

Google Driveに 00_AI処理待ち といった名前のフォルダを1つだけ作る。
取得・作成した書類を、何も考えずこのフォルダに放り込む。

ステップ2:GASによるAI自動処理

GoogleAppsScript(GAS)がこのフォルダを常時チェックするようにしておき、ファイルが追加されると、GASがそのファイルをGemini APIに送る。

ステップ3:AIによる「構造化」

Geminiはファイルを読み取り、必要な情報をデータとして抽出する。

ステップ4:AIによる「全自動整理」

GASは、Geminiから受け取った構造化データを使って、以下の処理を全自動で行う。

  • 自動リネーム: ファイル名をAIフレンドリーなものに変更。
  • 自動フォルダ移動: ファイルをAIフレンドリーなフォルダ構成を踏まえて移動。
  • 自動説明追記: ファイルの「説明」欄に情報を書き込む。

このワークフローが実現すれば、人間の作業は「スキャンして特定のフォルダに入れる」だけになります。

その後の「データ化」「整理」という最も大変な作業はGASやGeminiが担います。

何より、GoogleDrive自体が、人間が何もしなくとも、AIにとって最も活用しやすい、完璧に構造化された「知識倉庫」へと自動的に育っていくことになります。

AIを活用した業務の自動化(GASによる自動化など)に、今後ますます注目していきたいなと考えています。

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この記事を書いた人

酒井 寛志(さかい ひろし)
長崎県長崎市で活動する税理士、キャッシュフローコーチ。
AI(Gemini、ChatGPT、Claude)×GoogleWorkspace×クラウド会計ソフトfreeeを活用した業務効率化・テクノロジー活用法を研究する一方、税務・資金繰り・マーケティングからガジェット・おすすめイベントまで、税理士の視点で幅広く情報発信中。

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