AIは答えを、人は問いを生み出す。不確実な未来を創造するために、人間にしかできないこと

AIが驚くべきスピードで進化し、あらゆる疑問に”答え”を提示してくれる時代になりました。とはいえ、AIが示す最適解だけでは乗り越えられない、前例のない課題や人の感情が複雑に絡み合う問題に直面したときに人間の真価が問われることになります。

目次

AIが出す「答え」の限界と、人間の「問い」が活きる領域

AI、特に生成AIは、インターネット上の膨大なデータや過去のパターンを学習し、最適な「答え」を導き出すことを得意としています。

精密な文章要約や作成、市場データの分析など、これまで人間が時間をかけて行ってきた業務を瞬時にこなします。
この能力は非常に強力で、私たちの業務を効率化する上で欠かせないものであるといえます。

ただ、AIが提示する「答え」には限界があります。それは、AIの答えは単に「過去のデータ」に基づいているという点です。

一方で、私たちの事業や生活の現場は、過去のデータだけでは計れない問題に満ちています。

「本質的に高難易度の不確実性を含むもの」ともいえ、具体的には、以下のような要素を含む領域です。

  1. 正解が一つではない問題
    未来を左右する判断や、新しい事業の創造など、誰も正解を知らない課題。
  2. データ化できない要素
    お客様の言葉にならない不安、職場の人間関係、組織独自の文化や理念、個人の夢や情熱といった、定量化できない情報。
  3. 前例のない状況
    急激な市場の変化、新たなテクノロジーの登場、予期せぬ社会情勢の変化など、過去の経験が通用しない場面。

このような領域では、AIが過去のデータから導き出した「最適解」が必ずしも最善の未来に繋がるとは限りませんし、委ねるわけにもいきません。

むしろ、このような場合においては、AIに「何を分析させるか?」「どのデータを重視するか?」、そして「AIが出した答えをどう解釈し、どう行動に移すか?」という、人間が発する「問い」の質こそが、未来を大きく左右すると考えられます。

「問い」の力が未来を切り拓く3つの場面

では、実際に事業において、「問い」の力はどのように発揮されるのか。

AIの「答え」だけでは乗り越えられない3つの具体的な場面を想定してみます。

場面設定AIができること(答えの提示)人間にしかできないこと(問いの創出)
複雑な人間関係が絡むプロジェクト各部門の過去データに基づき、最も「効率的な」人員配置や予算配分を提案する。「このプロジェクトで私たちは何を成し遂げたいのか?」と目的を問い直し、ビジョンを共有する。
各担当者の不安や期待に耳を傾け、「どうすれば全員が納得できるか?」という感情的な着地点を探る。
顧客も気づいていない潜在ニーズの発見膨大な顧客データから、「最も人気のある機能」や「売れ筋の価格帯」を分析・報告する。顧客との対話の中で、「なぜこれを選ぶのだろう?」「この人の生活がもっと豊かになるには?」と根源的な問いを立てる。
データに現れない、顧客自身も言語化できていない願望や課題を掘り起こす。
前例のない危機的状況での意思決定過去の類似ケースや経済データから、複数の対応シナリオとそれぞれの成功確率をシミュレーションする。限られた情報の中で、「私たちが絶対に守るべきものは何か?」と理念を問い直す。
データ上の確率だけでなく、従業員の士気や社会への影響も考慮し、「どの未来を選択するか」という倫理観と責任を伴う決断を下す。

AIが提示する「答え」はきわめて有力な参考情報ではあります。

一方で、その情報をどう活かし、より良い未来に繋げるかというプロセスについては、人間に委ねられています。

未来を創造する「問い」を生み出す4つの力

「本質的に高難易度の不確実性を含む事実」において価値を生むのは、「問い」の力であると考えられます。

では、その力を身につけるためには、どのような能力が必要なのか。

  1. 共感力と対話力
    相手の言葉にならない想いや背景を深く理解し、本音を引き出す力。
    これは、課題の核心に迫る「良い問い」の出発点となります。
  2. 創造的構想力
    既存の枠組みや過去の成功体験にとらわれず、全く新しい視点から未来のビジョンを描く力。
    「もし〜だったら?」という仮説の問いが、イノベーションを生みます。
  3. 倫理観と責任感
    データ上の正しさだけでなく、「それは人として、社会として本当に正しいのか?」と問う力。
    そして、その決断の結果に最後まで責任を持つ覚悟です。
  4. 複合的な意思決定力
    AIが示す定量的なデータと現場で感じる空気感や人の感情といった定性的な情報を統合し、最終的な判断を下す力。

単純な分析や情報整理といった”答えを出す”作業はAIに任せ、人間は、ビジョンを描き、人の心の琴線を高度に読み未来を創造するという、より人間らしい領域に時間と情熱を注いでいくということがポイントになりそうです。

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