生成AIというと、文章の要約や資料作成といった”業務効率化”ばかりが注目されがちですが、お客様へのメッセージを”伝える言葉”から”伝わる言葉”へと翻訳し、事業を行っている人間の「人間らしい物語性の造形を深める」という意味における”付加価値の創造”にもあると考えています。
ただ”伝えるだけ”では、伝わらない
事業においては、日々、正確な情報を取引先に伝えることが求められます。
しかし、その淡々とした正しさや効率を追求するあまり、コミュニケーションが意図せず事務的になりがちです。
時としてその伝え方は、時に、細かすぎるという印象、血の通っていない印象、冷たい印象、上から目線という印象を感じさせてしまう可能性もあります。
相手が人間として本当に求めているのは、情報そのものだけでなく、その背景にある「安心感」や「共感」、そして未来への「希望」であったりします。
つまり、”情報に、自社ならではのどのような感情的な価値を乗せて届けられるかが大事”になると考えいます。
逆説的ですが、そこで活躍するのが生成AIです。
生成AIを単なる文章作成ツールとしてではなく、”ロジック（論理）をエモーション（感情）へと翻訳してくれる「コミュニケーションの翻訳機」”の叩き台として活用することで、相手にとって価値ある言葉、”伝わる言葉”を届けることができます。
【Before/After】生成AIでここまで変わる！メッセージ変換5つの実例
単なる事務的な連絡がどのように変化するのか。
ポイントは、生成AIに考えてもらったことをあくまで土台・きっかけとして、自分の気持ちを最大限に乗せることかと思っています。
事例1：融資が無事に実行された時の報告
【翻訳前】
日本政策金融公庫からの融資の件、8月22日にご指定の口座へ着金されたようでした。
設備資金として、お客様に美味しいパンを提供するためにご使用いただければと思います。
【翻訳後】
公庫の融資、8月22日に無事入金されていたようでした。本当におめでとうございます！
新しいオーブンが厨房にやってくると思うと、私もとても嬉しいです！
”新しいオーブンで、次はこんなパンを焼いてみたいんです”と嬉しそうに話してくださった〇〇さんの顔が目に浮かびます。
これから、お店がもっとお客様の笑顔で溢れる場所になるが楽しみです。
引き続き、理想の実現を全力でサポートさせていただきたく考えております！
事例2：資料提出のお願い
【翻訳前】
決算に必要な〇〇の資料ですが、まだご提出いただいておりません。
8月30日までにご提出ください。
【翻訳後】
決算の件ですが、〇〇社長のこの一年間の頑張りを最高の形で着地させるため、あと少しだけお力をお貸しください。
もし、お手元で準備にてこずっている資料などがあれば、遠慮なくお声がけください。
一緒に準備方法などを考えたいと思っております！
事例3：業績が芳しくない月次報告
【翻訳前】
前月分の試算表をお送りします。
ご確認の通り、売上が前月比で20%減少し、営業利益は赤字となっております。
早急に経費の見直し等、対策を講じる必要があると思います。
【翻訳後】
〇〇社長、前月分の試算表をお送りいたします。
先月は大きなイベントの準備もあり、大変な中でのご奮闘、本当にお疲れ様でした。
数字を見ると、今月は少し我慢の月になりました。
ただ、このような時だからこそ次の一手が見えてくる機会ではないかとも私は思っています。
来週のお打ち合わせで、数字の背景にあるお話をぜひぜひお聞かせください。
切り拓くための作戦を一緒に練り上げていけたらと思っております。
事例4：業績がよかった月次報告
【翻訳前】
前月の試算表がまとまりましたので、ご報告いたします。
売上高は前年同月比で150%でした。
引き続き、この調子で頑張ってください。
【翻訳後】
先ほどまとまった前月の数字、売上が過去最高を記録しておりました。おめでとうございます。
特に、社長が春からずっと種をまき続けてきた新サービスが見事に大きな花を咲かせた感じですね。
”絶対にうまくいく”と信じて諦めずにやり抜いた社長の情熱がこの最高の結果に繋がったのだと思うと、感慨深いです。
事例5：決算・申告完了の報告
【翻訳前】
本日、無事に税務申告書の提出が完了いたしました。
納税額は〇〇円となります。
納付書を同封いたしましたので、期日までにご納付ください。
控えは後日郵送いたします。
【翻訳後】
〇〇社長、一年間、本当にお疲れ様でした。
本日、〇〇社長と社員の皆様の努力の結晶である決算書・税務申告書を、無事に税務署へ提出完了いたしました。
今年は新店舗のオープンもあり、本当に激動の一年でしたね。その大きな挑戦を乗り越えられたこと、感慨深いです！
AIは思考のパートナー。心を伝える主役はいつだって「人間」。
逆説的ですが、生成AIは私たちのコミュニケーションを、より温かく、人間らしいものへと進化させる可能性を秘めています。
ここで絶対に誤解してはいけないことがあります。
それは、AIはあくまで思考を深めるための「ヒント」や「アイデア」をくれる壁打ち相手・叩き台を提供してくれる相手だということです。
AIが生成した美辞麗句を、ただコピー＆ペーストして送るだけでは、絶対に相手の心には響きません。
（逆の立場になってみると、AI100%の文章っぽいかどうかというのはよく分かるものです。）
大切なのは、AIが提示したいくつかの案を「たたき台」にしながら、「本当に伝えたいことは何だろう？」「自分なら、どんな言葉で気持ちを表現するだろう？」と、”自分の「人間らしい感性」と向き合う時間を持つこと”であると考えられます。
テクノロジーが進化しても、インターフェイスが生身の人間であることはひとつの価値であると考えられます。
たとえ少し不器用でも、”自分の言葉で、自分の気持ちを伝えること”。
この人間らしいバイアスは、意外とあらゆるテクニックを超えて、人間に対して価値を持つことがあると考えられます。
