事業の成功は多くの経営者が追い求める目標ですが、その道のりは複雑で、何から手をつければ良いか悩むことも少なくありません。
成功している企業に共通して見られる「5つのキーワード」を考えてみることで、持続的な成長を実現するための羅針盤となるといえます。
水野剛志著「飲食店経営で成功するための「お金」のことがわかる本」(日本実業出版社)を読んで考えたこと。
安定経営の羅針盤となる「5つのキーワード」
- 魅力的な目標と事業コンセプトを持っている
- 仕組みを構築し、改善サイクルを実現していける
- 潤沢な資金を保有し、常に選択肢の多い状態で経営判断していける
- 税金や公的資金(補助金等)とうまく付き合えている
- 適切な財務戦略を持ち、金融機関ともうまく付き合えている
事業の設計図を描く「コンセプト」と「仕組み化」
魅力的な目標と事業コンセプトを持っている
「魅力的な目標・事業コンセプト」と聞くと難しそうですが、要するに「うちの会社は、誰のために、どんなことで喜ばれて、他と何が違うのか?」をハッキリさせるということです。
これがしっかり決まっていると、たくさんの良いことがあります。
- お客様が選びやすい
→「ここが好き!」「これが欲しかった!」と、あなたのお店やサービスを選ぶ理由が生まれます。 - スタッフが迷わない
→「自分たちの仕事はこれだ!」とみんなが同じ方向を向いて頑張れるので、チームワークが良くなります。
良い目標・コンセプトは、お客さんを惹きつける磁石となり、社内をまとめる旗印にもなる、とても大切なものです。
仕組みを構築し、改善サイクルを実現していける
経営者一人が頑張るだけでは、会社はなかなか大きくなれません。
そこで大事になるのが、「経営の”仕組み”を構築し、改善サイクルを実現する」という考え方です。
- 仕組み化とは?
「仕事のやり方をマニュアル化し、誰がやっても同じようにできるようにすること」です。
まるで料理のレシピのように、仕事の手順を決めておけば、属人化せず、熟練の差なく、誰でもと同じ品質のサービスを提供しやすくなります。 - 改善サイクルとは?
これは、「やってみて(Plan→Do)、考えて(Check)、もっと良くする(Action)」をクルクル繰り返すための魔法のサイクルです。
サイクル | やること | 例え |
---|---|---|
P(計画) | 「よし、こうしてみよう!」と計画を立てる | 「次ではこうするぞ!」と計画を立てる |
D(実行) | とにかく、やってみる | 計画通りに実行してみる |
C(評価) | 「どうだったかな?」と振り返る | 結果を見て、どこがダメだったか分析する |
A(改善) | 「次はこうしよう!」と改善する | テコ入れ部分を見つけ、計画を直す |
この「仕組み化」と「改善サイクル」があれば、会社はどんどん学習し成長していくことができ、問題が起きてもみんなですぐに対応できる、強くてしなやかなチームを作ることができます。
会社のお金を意識して守り育てる
潤沢な資金を保有し、常に選択肢の多い状態で経営判断していける
創業したばかりの経営者にとって、最も重要で頭を悩ませる問題です。
設備など開業そのもののための「設備資金」だけでなく、すぐには売上が立たなくてもスタッフのお給料や家賃を払えるだけの「運転資金」が不可欠です。
自己資金の状況を考えつつ、足りない部分は融資などで調達しつつでも手元に資金さえあれば、急な出費があっても慌てませんし、経営者自身の頭のなかも「お金の心配ばかり…」とならず、常に選択肢の多い状態から冷静な経営判断をすることができ、自信を持って本業に集中できます。
目安として、最低でも月商の2~3ヶ月分、できれば半年分くらいの運転資金があると、心に余裕が生まれます。
税金や公的資金(補助金等)とうまく付き合えている
税金や公的資金(補助金等)とうまく付き合えているかどうかで、会社に残るお金の額は大きく変わってきます。
- 税金
税金は、”後払い・まとめ払い”になっていることも多いものです。あらかじめいくらくらいの納税になりそうかを予測しつつ、それを手元資金の日頃の管理に加味したり、節税を考えたりしておくことが鍵となります。 - 公的資金
国や市町村が「頑張る会社を応援しますよ」という補助金・助成金等を用意してくれています。これらは返さなくていいお金も多く、これらの情報にしっかりアンテナを張って取りこぼさないようにしておきたいところです。
適切な財務戦略を持ち、金融機関ともうまく付き合えている
会社を成長させるには、新しい機械を買ったり、人を増やしたりといった投資が必要です。
会社に急な資金が必要になったとき、結果、相談相手になってくれるのは、銀行などの金融機関です。
普段から金融機関とコミュニケーションを取っておき、「うちの会社は今こんな状況で、将来はこうなりたいんです」と定期的に状況を共有しておくことで、いざ資金が必要なときに、話がスムーズに進みやすくなります。
5つのピースを組み合わせて、成功の絵を完成させよう
ここまで見てきた5つの鉄則は、いわばパズルのピースのようなものです。
一つひとつが大事ですが、全部がガチッとはまってはじめて、一枚の絵が完成します。
- 良いコンセプトがあれば、銀行もお金を貸したくなります。
- 改善サイクルを回し、税金・公的資金ともうまく付き合っていけば、会社の利益が増え、お金の心配が減ります。
- 手元に十分な資金があれば、目先の売上に追われず、本当にやりたいコンセプトを追求できます。
これらは全てつながっています。
この5つのものさしでチェックしてみて、足りないピースを見つけて一つひとつ埋めていくことで、安定した経営への近道となると考えられます。