新規融資を受けた後の展開として、どのようなパターンが考えられるか。
諸留誕著「顧問先の銀行融資支援スキル 実装ハンドブック」(日本法令)を参考にして。
目次
融資メンテのバリエーション
新規融資を受けた後の展開としてどのようなパターンが考えられるのかを知っておくことで、どのようなときに銀行にはどのように相談すればよいかが分かるようになります。
- 折り返し融資
- 短期継続融資
- 一本化する
- プロパー融資を引き出す
- 金利を下げる
- 経営者保証・担保を外す
- 資本性借入金
- メインバンクを見直す
- リスケジュール
④プロパー融資を引き出す
プロパー融資とは、民間銀行の融資の2タイプ(保証付き融資、プロパー融資)のうちのひとつです。
保証付き融資は、信用保証協会の保証がついていることから銀行にとってはリスクが低く、取り組みやすいものになります。
一方で、プロパー融資は、銀行がすべてのリスクを負うことからリスクが高く、取り組むにはハードルがあるというものになります。
基本スタンス
会社からすると、借りやすい保証付き融資に頼りがちになりますが、保証には限度枠があり、頼りきりでは限界が訪れることになります。
また、保証付き融資の場合、利息とは別途、信用保証料というコストが発生することにもなります。
そのため、難易度の高いプロパー融資が受けられるタイミングにあれば、それを逃さずにプロパー融資で資金調達しておき、ややきついときのために保証付き融資の枠を温存するという方針を取りたいところです。
プロパー融資相談のタイミング
以下のような場合には、銀行にプロパー融資を相談できる環境が整っていると考えられます。
- 簡易CF(税引き後利益+減価償却費)に余裕がある、債務償還年数(借入金/簡易CF)が10年以内、債務超過ではない
- 年商規模が、金融機関ごとの目安年商規模(都銀:数十億円以上、地銀:1億円以上、信金:1億円未満)を超えている
- 複数銀行と取引を始め、銀行間競争が期待できる
- 銀行から”貸したい”というアプローチがある(→条件として提示する)
- 経営計画書を作成している
- 銀行に試算表を提示的に提示している
- その銀行と十分な取引実績(返済実績)がある(逆に、初取引は保証付き融資とする)
- 預金残高が多い
- 納税資金・賞与資金など、資金使途明確・比較的短期の融資を受けることができている
- プロパー融資を見据えて、保証付き融資を借りる(年商に見合った金融機関から保証付き融資を借りる)
- アフターコロナでは、保証付き融資の保証実行が増えており保証付き融資の審査が厳しくなっているため、経営計画書・ロカベン・事業性評価を完備しつつプロパー融資を交渉できるようにしていくほうがよい
保証付き融資で交渉すべき場面
プロパー融資>保証付き融資、ではあるものの、常にプロパー融資を交渉しようとすると常識からズレてしまうこともあり、留意が必要と考えられます。
以下のような場面においては、最初から、保証付き融資の相談で進めたほうがスムーズになると思われます。
- 初取引の銀行のとき(まずは取引実績を作っていくため)
※保証付き融資の枠を空けておくため、日頃から、既存融資を少しずつプロパー融資に移行させておく - 業績が悪いとき
※保証付き融資の枠を空けておくため、日頃から、既存融資を少しずつプロパー融資に移行させておく - メインバンクから融資を受けるとき
※その代わり、制度融資・特別枠のような銀行にとってのボーナス融資についても、メインバンクから最初に相談する