相手の話の核心をとらえ、深い信頼関係を築くには、自分自身を「透明」に保つことが大切だと言われています。しかし、透明になるとは自分をなくすことではなく、自分の「あり方」を定めることから始まります。自分の軸を明確にすることで自他の境界線を引き、相手の核心をとらえるコミュニケーションのステップについて。
和仁達也著「コンサルタントの言語化力」(かんき出版)を参考にして。
「やり方」より「あり方」。モットーがブレない自分をつくる
コミュニケーションにおいて、私たちはつい「やり方(Doing)」を求めがちですが、それ以上に重要なのが自分自身の「あり方(Being)」であると考えられます。
あり方とは、「当然こうあるべき姿、状態」を指します。
ごく日常的な「モットー」を言語化するだけでも、自分のあり方は定まります。
- モットーの例
「迷ったら難しい道を選ぶ」「丁寧に生きる」「いつも笑顔で」「約束を守る」などでもOK - モットーの効果
単にポジティブな気持ちになるためのスローガンではなく、自分がどのような姿勢で物事と向き合いたいかを示す目標となり、自分らしさを保つ軸になります。
自分の軸がブレブレだと、まわりの人の心はだんだん離れていき、勝手な思い込みで相手の話の重要なポイント(核心)を見逃してしまいます。
まずは自分を言い表す言葉を持ち、日々の行動の指針とすることが対話の質を上げる第一歩となるのです。
【逆説的】自分の軸があるからこそ、”自他の境界線”が引ける
自分のモットーを持つことの最大のメリットは、自分と他人の間に自然な「境界線」を引けるようになることです。
これは、コミュニケーションにおける非常に深いポイントです。
| モットーの有無 | 自他の境界線 | 対話における状態 |
|---|---|---|
| モットーがない | 境界線があいまい。 誰かの意見に左右されたり、状況に流されたりしやすい。 | 勝手に「こういうことを言いたいんだろう」と決めつけてしまい、核心が見えなくなる。 |
| モットーがある | 「人は人、自分は自分」というように、必要以上に踏み込まない境界線を引ける。 | 相手の軸も尊重し、不用意に境界線を踏み越えない。 結果として自分を「透明」に保てる。 |
ブレない軸を持っている人は、相手の領域に不用意に踏み込むことがないのです。
自分の色が決まっているからこそ、相手を塗りつぶさずに受け止めることができ、相手をそのまま受け止められるようになります。
「判断の保留」と「安心・安全・ポジティブ」で、相手を映し出す透明な存在へ
自分のモットーによって境界線を引いたうえで相手の核心をさらに引き出すためには、以下の実践的なステップが有効であるとされます。
判断をいったん保留し、言葉を熟成させる
相手の発言にツッコミを入れたくなっても、ストレートに伝えるのは避けます。
早急に判断を下さず、いったん立ち止まって結論を保留することが、自分を透明にするためには大切です。
その場ですぐに口に出さず、言葉を一晩寝かせて「熟成」させることで、相手への伝わり方は角が取れてまろやかに変わっていきます。
「安心・安全・ポジティブ」な場をつくる
相手が気兼ねなくリラックスして言語化できる「安心・安全・ポジティブな場づくり」を心がけます。
- 肯定語を使う
「なるほど」「確かに」「いいですね」といった言葉で受け止め、相手に安心してもらいます。 - 笑顔で向き合う
相手と向かい合うときは自分の忙しさをいったんオフにし、話しやすい表情(笑顔)を意識します。 - 脱完璧主義
お互いに完璧を求めず、間違った意見も一つのアイデアとして受け入れる寛容さが心理的安全性を築きます。
コミュニケーションにおいて相手の核心をとらえるには、表面的な会話のテクニックを磨くのではなく、まず自分自身の「あり方」や「モットー」を確立することが重要であるといえます。
自分の軸をしっかりと持って自他の境界線を引き、判断を保留する姿勢や安心・安全・ポジティブな場づくりを通じて相手をフラットに受け入れること。
このプロセスを経ることで、初めて自分のフィルターを外し、相手の思いや背景をありのままに映し出す”透明な鏡”になることができます。
ブレない自分を持つことこそが、逆説的に自分を透明にし、相手との深い信頼関係を育む鍵となるのです。
