ドンブリ勘定を卒業する!月ごとに業績を把握する④

毎月の売上や経費を感覚でしか把握できていない場合、会社の全体像が見えないものです。
月ごとに会社の数字をチェックする「月ごとの業績把握術」を身につけることで、全体像を把握することができます。

大野貴史・國村年・松井大輔著「月次決算の実務Q&A」(中央経済社)を参考にして。

目次

業務プロセスを見直す

月ごとに業績を把握するメリットは、以前ご紹介したとおりです。

月ごとに業績を把握するとした場合、早いに越したことはありません。

月ごとの業績を早く把握しようと思う場合、業務プロセスを見直してみる必要もあります。

請求と売上計上のタイミングを揃えるようにする

月次で業績を見ていくにあたっては、「請求書を発行したタイミングで売上を計上する」というシンプルなルールを確立するとよいと考えられます。

実務上、収益が発生するタイミングと請求書を発行するタイミングにはズレが生じがちですが、月次決算の早期化を実現するためには、この2つを可能な限り一致させることが望ましいといえます。

内部統制にも繋がる業務フロー

理想的な業務フローは、営業部門と経理部門が連携する体制を構築することです。具体的には、以下の流れが考えられます。

  1. ① 営業部門: 顧客への商品提供やサービス提供が完了
  2. ② 営業部門 → 経理部門: 売上の根拠となる資料を添付し、経理部門へ請求書の発行を依頼
  3. ③ 経理部門: 依頼内容の妥当性を確認した上で、請求書を発行し、顧客へ送付
  4. ④ 経理部門: 請求書の発行をもって、売上と売掛金を会計帳簿に記録

このように部門を分けることで、営業担当者単独での架空請求といった不正行為を防ぎ、内部統制を強化する効果も期待できます。

「売上根拠資料」は重要

その売上が正当なものであることを客観的に証明する「売上根拠資料」が極めて重要になります。

請求書を発行する際には、必ずこの根拠資料をセットで確認するプロセスを徹底しましょう。

売上根拠資料には、取引の形態によってさまざまな種類があります。

取引の種類売上計上基準売上計上基準
製商品の販売出荷基準出荷伝票
納品基準納品書の控え
検収基準検収書
役務提供(コンサルティングなど)請負契約役務完了確認書
準委任契約業務従事報告書など

特に、コンサルティング業務のような「モノ」の引き渡しがない役務提供型の取引は、売上の計上基準が曖昧になりがちです。

そのため、「何をもって業務が完了したとするのか」を契約で明確にし、それを示す証憑(役務完了確認書など)を得意先から入手するルールを設けることが大切と考えられます。

月ごとに入金消込と債権管理を行う

請求書を発行し、売上を計上したらそれで終わりではなく、その売掛金がきちんと入金されたかを確認し、管理する「入金消込」と「債権管理」も重要です。

毎月の入金消込と原因追及

売掛金の管理において、入金消込は必須の作業です。

毎月、実際の入金額と請求額を照合し、過不足がないかを確認しましょう。

もし請求額と入金額が一致しない場合は、その原因を必ず追及する必要があります。

  • 入金額が多い場合: 複数の請求がまとめて入金された可能性などが考えられます。安易に処理せず、一度「仮受金」として処理し、内容を精査しましょう。
  • 入金額が少ない場合: 銀行の振込手数料が差し引かれている、あるいは取引先で何らかの支払いと相殺されているといったケースが考えられます。

原因が不明なまま放置することは、将来的なトラブルの種になりかねません。

一つひとつ確実に処理していくことが、正確な債権管理に繋がります。

まとめ

今回は、月次決算を早期化し、正確な業績を把握するための業務プロセスについて、3つの重要なポイントを解説しました。

  1. 請求書発行と売上計上のタイミングを合わせる
  2. 売上計上の根拠となる資料を明確にする
  3. 毎月の入金消込を徹底し、差異の原因を追及する

これらのプロセスを見直すことは、単に経理業務の効率化に留まらず、不正を防止し、会社の資産である売掛金を確実に回収できる体制を築くことで、資金繰りの安定にも貢献します。

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