ドンブリ勘定を卒業する!月ごとに業績を把握する⑦

毎月の売上や経費を感覚でしか把握できていない場合、会社の全体像が見えないものです。
月ごとに会社の数字をチェックする「月ごとの業績把握術」を身につけることで、全体像を把握することができます。

大野貴史・國村年・松井大輔著「月次決算の実務Q&A」(中央経済社)を参考にして。

目次

業務プロセスを見直す

月ごとに業績を把握するメリットは、以前ご紹介したとおりです。

月ごとに業績を把握するとした場合、早いに越したことはありません。

月ごとの業績を早く把握しようと思う場合、業務プロセスを見直してみる必要もあります。

仮払金精算にのなぜルールが必要なのか?

仮払金とは、用途や金額が確定していない経費に対して、会社が従業員へ概算額を事前に渡しておくお金のことです。
この仕組みを適切に運用するためには、なぜルールが必要なのか。

  1. 従業員の負担を軽減するため
    高額な出張費や経費を従業員に立て替えてもらうのは、一時的であっても大きな負担を強いることになります。
    仮払金制度は、この負担を避けるために有効な手段です。
  2. 事務処理を効率化するため
    申請や精算の方法がバラバラだと、経理担当者の確認作業が煩雑になってしまいます。
    決められた手順やフォーマットに沿って運用することで、事務処理をスムーズに行うことができます。
  3. 不正や資金管理のリスクを防ぐため
    ルールが曖昧な場合、横領などの不正につながる可能性があります。
    また、長期間精算されない仮払金が放置されると会社の資金繰りにも影響を与えかねません。
    適切なルールは、会社の資金を守るためにも不可欠です。

仮払金申請精算ルール構築の4つのポイント

では、具体的にどのようなルールを構築すれば良いのでしょうか。ここでは、押さえておくべき4つのポイントを解説します。

ポイント1:業務フローを確立する

まず、申請から精算までの一連の流れを明確に定めます。一般的なプロセスは以下の通りです。

  1. 申請:担当者が「仮払金申請書」を作成し、上長に提出する。
  2. 承認:上長が内容を確認し、承認する。
  3. 支払:経理部門が申請者へ仮払金を支払う。
  4. 精算:業務完了後、担当者は「仮払金精算書」と領収書を上長へ提出する。
  5. 承認:上長が精算内容を確認し、承認する。
  6. 確定:経理部門が最終確認を行い、過不足を精算し、会計処理を確定させる。

ポイント2:申請・精算フォーマットを統一する

申請書や精算書として会社で統一されたフォーマットを用意することで、必要事項の記入漏れを防ぎ、経理部門の確認作業を効率化できます。

ポイント3:期日や限度額を明確に定める

  • 担当部署:仮払金の管理を担当する部署を決めます。
  • 精算期日:「業務完了後、1週間以内に精算する」など、具体的な期日を設けます。
  • 限度額:一度に申請できる仮払金の上限額を定めます。

ポイント4:コーポレートカードの活用を検討する

現金の取り扱いを減らし、横領リスクや仮払いの手間を省くために、役職者などにコーポレートカード(法人カード)を貸与するのも非常に有効な方法です。

仮払金規程を作成しておく

ルールを明確にするために、「仮払金規程」を作成しておくとよいと考えられます。

  1. 仮払いの原則
    部門長及び経理部長の承認により行う。
  2. 仮払申請書
    仮払いを受けようとする者は、「仮払金申請書」に必要事項を記入し、所属長および経理部長の承認を得る
  3. 仮払金の精算
    仮払いを受けた者は、原則として業務完了後1週間以内に、「仮払金精算書」に領収書等の証憑を添付して精算を行わなければならない。
  4. 出張旅費の精算
    出張のため仮払いを受けた者は、帰任後1週間以内に「出張旅費精算書」を提出し、精算を行わなければならない。
  5. 交際費等の精算
    交際費等のため仮払いを受けた者は、業務完了後1週間以内に「接待飲食費精算書」を提出し、精算を行わなければならない。

申請・精算のチェックポイント

ルールを形骸化させないためには、経理部門によるチェックが不可欠です。

申請時のチェックポイント

  • 目的・内訳が具体的か・必要か
  • 金額が妥当か
  • 所定の承認者の承認を得ているか

精算時のチェックポイント

  • 精算書の内容と、添付された領収書の金額や内容が一致しているか
  • 定期的に管理台帳をチェックし、精算が遅れている仮払金がないか
    ※未精算案件の一覧表を作成して経営層に報告するなど、早期精算を全社的に意識付ける。

注意すべき税務上のポイント

仮払金の運用を誤ると、思わぬ税務上のリスクを招くこともあります。

  • 「渡切交際費」について
    毎月一定額の金銭を「交際費」として渡し精算を求めない「渡切交際費」については、使途が明確でないため、税務上はその役員や従業員に対する「給与」と扱われます。
    特に、役員への渡切交際費が不定期である場合、”役員賞与”と判断され、損金として認められない可能性もあるため注意が必要です。
  • 長期間精算されない仮払金について
    仮払金が正当な理由なく長期間精算されない場合、税務調査で会社からその個人への「貸付金」と認定されることがあります。
    貸付金と認定されると、会社は一定の利率で計算した「受取利息(認定利息)」を計上しなくてはならず、課税所得が増えてしまいます。
    特に役員やその親族への仮払金が長期化していないかは、月次決算の際に必ず確認すべき項目です。

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