GeminiのGemに特定の情報を参照させる「Gemi+知識」と、指定の資料を読み込んでそこをもとに答える「NotebookLM」。どちらも革新的なAIの使い方ですが、”どう使い分ければいいの?”となりがちです。両者の根本的な違いから具体的な活用シーン、そして最も重要なAIの”制御(コントロール)”という感覚について考えてみました。
「創造性の制御」か「解釈の制御」か:AIへの期待で選ぶ
GeminiのGemの知識に資料を読み込ませて使う「Gem+知識」と、同じく資料を読み込ませて使う「NotebookLM」。
この二つのツールの最大の違いは、AIに何を期待し、何を制御しようとするかにあります。
- 「Gem+知識」
広範な情報をベースに新しいアイデアを生み出す「創造性」が期待できます。しかし、その出力が事実に基づかないハルシネーションでないかについて人間が十分に制御する必要があります。 - 「NotebookLM」
指定された資料という「根拠」に基づいて回答します。しかし、その解釈の仕方に誤りがある場合もあるため、その妥当性について人間が制御する必要があります。
例えるなら、「Gem+知識」は「アイデア豊かで、時々話も盛る同僚」、「NotebookLM」は「資料は正確に引用するが、たまに解釈については間違えてしまう部下」のような存在。
どちらのAIと仕事を進めるかで、あなたの関わり方も変わってきます。
| 特徴 | Gem+知識 | NotebookLM |
|---|---|---|
| AIへの期待 | 創造性 | 正確性 |
| 制御の対象 | ハルシネーションでないか | 解釈に誤りがないか |
| 情報の扱い方 | ユーザーが指定した資料を参照 | ユーザーが指定した資料のみを集中分析 |
| 得意なこと | アイデア創出、壁打ち、草案作成 | 複数資料の比較、論点の抽出、ファクトの深掘り |
「創造性へ期待する」と「解釈を戦わせる」、あなたの目的はどっち?
AIの何をコントロールしたいかで、具体的な活用シーンを選んでいきましょう。
【創造性を引き出し、ハルシネーションを制御する】「Gem+知識」が活躍するシーン
特にゼロから何かを生み出す場面で「Gem+知識」は強力なパートナーになります。
ただし、出力された内容が「もっともらしい嘘」でないか、常に疑う視点が重要です。
- 新しい企画のアイデア出し
「知識内にある過去の成功事例と市場調査レポートを基に、新しいキャンペーンのアイデアを5つ提案して。※提案の根拠がどの資料に基づいているか、合わせて示して。」 - コミュニケーションの創造
「前回の議事録の内容を踏まえて、クライアントとの関係を軟化させるようなお礼メールの文案を作成して。※事実に反する表現や、過度に楽観的な記述が含まれていないか確認すること。」
【根拠資料からの正確性を重視し、解釈の妥当性について制御する】「NotebookLM」が活躍するシーン
情報の正確性が何よりも重要な場面で、「NotebookLM」はその真価を発揮します。
ただ、AIの解釈を鵜呑みにせず、根拠と照らし合わせながら吟味する姿勢が求められます。
- 複数情報の厳密な比較・分析
(複数の論文PDFをアップロードして)「これらの論文が『AIの倫理問題』をどのように解釈しているか、その共通点と相違点を整理して。※AIの要約が各論文の論旨を正しく反映しているか、必ず原文(引用箇所)と照合すること。」 - 専門的な内容の正確な理解
(契約書のPDFをアップロードして)「この契約書の中で、当社の責任範囲について記述されている箇所を全て抜き出し、その内容を解釈して。※特にリスクに関わる解釈は、法務担当者によるダブルチェックを必須とすること。」
AI活用の成否は、人間による『制御』がすべて
「Gem+知識」も「NotebookLM」も、それ単体で完璧なわけではありません。
AIを使いこなすとは、それぞれのツールの特性を理解し、その出力を人間が適切に『制御』することに他なりません。
- 「Gem+知識」を使うとき
私たちは、その「創造性」を最大限に引き出しつつ、それがハルシネーションに陥らないよう情報のインプットとプロンプトで巧みに手綱を握る必要があります。 - 「NotebookLM」を使うとき
私たちは、AIが提示する「根拠」の正確性を信頼しつつも、そこから導き出される解釈が妥当であるかを、批判的な視点で検証する責任を負います。
結局のところ、AIがどれだけ進化しても、その出力に対する最終的な判断と責任を負うのは私たち人間です。
AIを「思考を放棄するための魔法の箱」ではなく、「思考を加速させるための、制御すべきパートナー」として捉えることが大事といえそうです。
