「自分の考えては本当にこれでベストだろうか?」と思うことがあります。その原因は、自分では気づきにくい”思考の偏り”にあるのかもしれません。そこで、生成AIを思考のパートナーとして活用し、思い込みの壁を壊し、かつ、新たな視点を手に入れるための活用という視点で考えてみます。
なぜ起こる?一人では気づけない人間の”思考の偏り”の正体
人は誰しも、物事を判断する際に、無意識に”思考の偏り(認知バイアス)”の影響を受けているといわれています。
これは必ずしも注意力が散漫だからというわけではなく、脳が効率的に情報を処理するために備わった仕組みの一種だそうです。
しかし、これは、事業の場面では、時に視野を狭め、最適な判断を妨げる原因になってしまうことがあります。
認知バイアスについて調べてもみると、例えば、以下のようなものがあるようです。
- 確証バイアス
自分が信じたい情報や、仮説を支持する情報ばかりを集めてしまい、反論する情報を無視・軽視してしまう傾向。 - 正常性バイアス
多少の異常なことが起きても”まだ大丈夫だろう”と事態を過小評価してしまう傾向。 - 内集団バイアス
自分が所属するグループの意見を過大に評価し、外部の意見を軽視してしまう傾向。
過去の成功体験ですらも、時として”自分はこのやり方でうまくいってきたから”という思い込みを強化し、新しい発想や変化への対応を遅らせる罠になってしまうこともあります。
これらは無意識に働くようで、人が1人で考えているだけではなかなか気づくことができず、思考の「盲点」となってしまいます。
生成AIを壁打ち相手にする!思考の偏りをなくす3つの力
では、どうすればこの”思考の偏り”から自由になれるのか。
例えば生成AIは、人間とは異なる思考プロセスを持っていることから、この”思考の壁”を打ち破るための力を持っているとも考えられます。
感情に左右されない客観的な視点
誰しも感情や経験、その場の空気に判断を左右されがちです。
一方で、AIは感情を持たず、与えられたデータに基づいて中立かつ論理的に分析を行います。
そのため、”この企画は素晴らしい”といった思い込みに対し、”客観的なデータに基づくとこのようなリスクが考えられます!”といった冷静なフィードバックを与えてくれます。
圧倒的な情報量に基づく網羅性
一人の人間がアクセスできる情報量には限界があります。
しかし、生成AIはインターネット上の膨大なデータを学習しており、私たちが見落としているような多角的な視点を提供してくれます。
- 自分とは異なる業界の成功事例
- 歴史的な背景や過去の失敗事例
- 最新の技術トレンドや海外の動向
- 想定していなかったターゲット層の視点
自分だけではたどり着けない情報を瞬時に提示してくれるので、網羅的に考えることができるようになります。
多様な役割を演じる柔軟性
生成AIの面白い点は、特定の役割(ペルソナ)を与えたうえで、対話できることともいえます。
そのため、これにより意図的に自分と異なる立場からの意見を引き出すことができるようになります。
役割(ペルソナ)の例 | 得られる視点 |
---|---|
批判的な評論家 | アイデアの弱点、リスク、矛盾点を洗い出す |
熱狂的な顧客 | アイデアのどの部分に魅力を感じるかを知る |
競合企業の戦略担当者 | 競合の視点から見た脅威や対抗策を予測する |
全くの素人 | 専門用語に頼らない、分かりやすい説明になっているかを確認する |
AIに「役割」を演じさせれば、一人で擬似的なブレインストーミングを行うことができるため、思考の偏りを強制的に取り除くことができます。
生成AIとの対話で新たな視点を手に入れる方法と今後の展望
それでは、具体的にどのように生成AIと対話すれば、新たな視点を手に入れることができるのか。
例えば、以下のようなプロンプトが考えられます。
思考を深めるプロンプト例
このアイデアについて、考えられる弱点やリスクを10個挙げてください。
私が気づいていないであろうこの企画の盲点は何ですか?
もしあなたが〇〇(例:顧客、投資家、競合他社)の立場なら、この企画をどう評価しますか?
このアイデアとは全く逆のアプローチを3つ提案してください。
この計画の前提となっている「思い込み」を指摘してください。
これらの質問を投げかけることで、AIが自分では見えなかった側面を映し出してくれる可能性があります。
AIとの対話を習慣化し、思考の柔軟性を手に入れる
生成AIは、単に調べ物をするためのツールではなく、対話を通じて私たちの思考の偏りを補正し、より網羅的で客観的な視点を与えてくれる”思考のパートナー”として有効だと感じます。
とはいえ、あくまで重要なのは、AIの回答を鵜呑みにせず、人間が事実確認およびコントロールし、最終的な意思決定を行うという姿勢であるといえます。
AIが提示した多様な視点を参考にしつつ、かつ、自分自身の経験と判断力を掛け合わせることで、これまで以上に質の高いアウトプットを生み出すことができるのでは、と考えています。