【ひとり社長向け】お金をしっかり残す!法人化によるメリット

目次

法人での”お金が残る節税策”とは?

会社にお金を残しながらできる節税策には、どのようなものがあるでしょうか。

これらは、会社の防衛や将来の貯蓄にもつながるため、優先的に検討したい節税策です。

お金が残る節税策の代表例

  • 役員報酬
  • 非常勤役員報酬
  • 小規模企業共済
  • 企業型確定拠出年金(iDeCo)
  • 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
  • はぐくみ企業年金
  • 出張旅費日当
  • 社宅家賃
  • 生命保険

”お金が残る節税策”の詳細

役員報酬・非常勤役員報酬

法人化の最大のメリットの一つが、社長自身や家族への給与である「役員報酬」を会社の経費にできることです。

所得税は収入が多いほど税率が上がる超過累進税率が採用されているため、社長一人で高額な報酬を受け取るより、役員として業務執行可能な家族にも役員になってもらい、所得を分散させる方が、世帯全体の手取り額が増えます。

2. 小規模企業共済

個人事業主や中小企業の経営者のための、国が運営する退職金積立制度です。
最大の魅力は、「節税・貯蓄・貸付」の3つの機能を備えている点です。

  • 節税効果
    支払った掛金(月額最大7万円)は、全額が個人の所得から控除されます。
  • 出口での税優遇
    将来、共済金を一括で受け取る場合は「退職所得」、分割なら「公的年金等に係る雑所得」となり、いずれも税負担が大きく軽減されます。
  • 活用法
    役員報酬を月7万円増額し、その分を全額、小規模企業共済の掛金に充てるという方法があります。

3. 企業型確定拠出年金

iDeCo(個人型確定拠出年金)の法人版と言える制度です。

  • 掛金の上限が高い
    ひとり社長がiDeCoに加入する場合の掛金上限は月額23,000円ですが、企業型DCなら月額55,000円まで拠出可能です。
  • 掛金は会社の経費
    会社が支払う掛金は全額が経費(福利厚生費)になります。

4. 経営セーフティ共済(倒産防止共済)

取引先の倒産に備えるための共済制度ですが、「貯蓄しながら全額経費にできる」という非常に優れた節税効果があります。

  • 掛金が全額経費
    年間最大240万円(月20万円)の掛金が、全額会社の経費になります。
  • 100%返金
    40カ月以上掛金を支払えば、解約時に支払った掛金の全額が戻ってきます。

5. はぐくみ企業年金

  • 保険会社等が比較的安全な形で運用を行う
    企業型確定拠出年金が自己責任での運用なのに対し、はぐくみ企業年金は元本確保型の給付建ての年金制度です。
  • 途中での引き出しも可能
    企業型確定拠出年金が原則60歳まで引き出せないのに対し、一定の要件を満たせば退職時に一時金として受け取ることが可能です。
  • 掛金は会社の経費
    企業型確定拠出年金と同様に、掛金は全額会社の経費(福利厚生費)となります。

6. 出張旅費日当

  • メリット
    会社側では全額経費になり、受け取った社長個人には所得税や住民税がかかりません。
  • 必須要件
    この制度を活用するには、①「出張旅費規程」を会社で作成し日当の金額を明記しておくこと、②日当の金額が世間相場からして不当に高額でないこと、の2点を満たす必要があります。

7. 社宅家賃

  • 仕組み
    会社名義で住居を賃貸契約し、会社が大家さんに家賃を支払います。
    そして、社長は会社に対して一定の家賃(賃貸料相当額)を支払います。
  • メリット
    結果として、個人と法人の両方で税金と社会保険料の負担を軽減できます。
  • 注意点
    社長が会社に支払う家賃の計算が重要です。
    実務上、手間を省くために「実際の家賃の50%」と設定する例が多いですが、これは損をしている可能性があり、固定資産税の課税標準額を基にきちんと計算すると負担額は実際の家賃相場の10%~20%程度になることも多いです。

8. 生命保険

かつては「節税と言えば生命保険」と言われていましたが、2019年の税制改正で大きな節税効果はなくなています。
現在では、節税というよりは”課税の繰延べ”という側面が強いものとなっています。

しかし、生命保険本来の機能は「保障」です。
社長に万が一のことがあった際に、保険金が会社の借入金返済や、残された家族の生活費になるという備えは、経営者にとって非常に重要です。

法人vs個人事業主 節税策15項目徹底比較

節税という観点で見ると、法人と個人事業主にはどれほどの差があるのか。

節税策個人事業主法人
損失の繰越○ (3年)○ (10年)
確定債務
代表者の給与・賞与×
代表者の退職金×
家族従業員給与
生命保険料
決算変更×
小規模企業共済○ (中小のみ)
出張旅費日当×
社宅家賃×
確定拠出年金
倒産防止共済△(出口戦略難)○(大企業不可)
接待交際費
減価償却
損益の通算

法人による節税メリットとして、特に以下のようなものが挙げられます。

赤字の繰越期間

事業で赤字(欠損金)が出た場合、その赤字を翌年以降の利益と相殺して税金を減らすことができます。

この赤字を繰り越せる期間、個人事業主は3年間なのに対し、中小企業である法人は10年間と、圧倒的に長く設定されています。

決算期変更

個人事業主の事業年度は1月1日~12月31日に固定されていますが、法人は自由に決算日を設定できます。

確定債務

法人・個人事業主共通ですが、経費は”実際に支払ったかどうか”ではなく、”支払う義務が確定しているかどうか”で判断され、これを「確定債務」と呼びます。

例えば、12月決算の法人が、翌年2月に支払う予定の固定資産税などについて、決算日時点で支払いが完了していなくても、支払う義務と金額が確定していれば、その期の経費として計上(未払計上)できます。

決算前に利益が出そうなときは、このような確定債務を漏れなく計上することで、堅実な節税が可能です。

◆ 飲食代について

法人・個人事業主共通ですが、事業に関連する飲食代は、経費として計上できます。

例えば、会議打合せ時の飲食代、取引先の接待等、従業員の福利厚生費などです。

活用の2つの視点

「出口戦略」を意識する

倒産防止共済や生命保険などの節税策は、厳密には「課税の繰延べ」に過ぎません。

掛金を支払っている間は経費になりますが、解約してお金を受け取る際には利益(雑収入)として課税されてしまいます。

そのため、「いつ解約して、何に使うか」という出口戦略が非常に重要です。

例えば、役員退職金を支払うタイミングや、事業が赤字になったタイミングで解約すれば、解約返戻金と大きな経費(または赤字)を相殺でき、結果的に税負担を抑えて資金を手にすることが可能になります。

「お金がなくなる節税」との賢い付き合い方

節税策の中には、取引先との飲食代(接待交際費)のように、経費にはなるものの会社のキャッシュは減ってしまう”お金がなくなる節税”もあります。

もちろん事業に必要な支出は経費にすべきですが、節税のためだけに行うのでは本末転倒になります。

事業が軌道に乗り利益が出てきたステージにおいては、法人化は手元にお金を残すための非常に強力な選択肢となります。

様々な制度を戦略的に組み合わせ、会社に合った「お金が残る仕組み」を構築していくことが可能になります。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!
目次