会社の決算日、いつにする?資本金はいくらがベスト?設立前に知っておきたい会社税金の基本

「決算日」と「資本金」は、何となくで決めてしまうと、後から”もっと考えておけばよかった…”と後悔しかねない重要なポイントです。特に節税という観点から、この2つの項目の基本的な考え方とベストな決め方を考えていきます。

目次

「消費税の免税メリット」に対する考え方

会社設立時に考えたいことの1つは、消費税の免税制度を最大限に活用することです。

新たに設立された法人は、原則として、設立当初の2期間は消費税の納税が免除されます

この制度をフル活用できるかどうかは、まさに「決算日」と「資本金」の決め方にかかっています。

ただし、設立時からインボイス登録するかどうかによっても大きく変わるため、留意が必要です。

あなたの会社にベストな決算日は?4つのポイントで考える

会社の決算日は自由に決められますが、以下の4つのポイントを戦略的に設定することにより、メリットが生まれます。

ポイント1:消費税の免税期間(最大24ヶ月)を考える

消費税の免税期間は原則2期分のため、その恩恵を最大限に受けるには、第1期の事業年度を設立日から可能な限り長い「12ヶ月」に近づけることが鉄則です。

  • 良い例: 第1期を12ヶ月に設定→免税期間は合計24ヶ月(1期目12ヶ月+2期目12ヶ月)
  • 悪い例: 第1期が2ヶ月で終了→免税期間は合計14ヶ月(1期目2ヶ月+2期目12ヶ月)

わずかな設定の違いで、10ヶ月分も免税期間を失う可能性があります。

ただし、設立時からインボイス登録するかどうかによっても大きく変わるため、その点についても十分な検討が必要です。

ポイント2:会社の繁忙期を事業年度後半に設定しない

事業年度の後半と繁忙期とが重なると、想定外の大きな受注がある場合、急激に利益および税額が増加してしまうリスクがあります。

一番忙しい時期を事業年度の前半に設定することで、じっくりと着地となる利益を予測しながら計画的に節税対策を練ることが可能になります。

ポイント3:納税資金のキャッシュフローを考慮する

法人税等の納税は、原則として決算日から2ヶ月以内に行う必要があります。

会社のキャッシュフローに余裕がある時期を納税タイミングに合わせることで、資金繰りが苦しくなるのを防げます。

ポイント4:法人住民税均等割を初年度のみ節約する

法人住民税の均等割は、事務所などを設置していた月数に応じて月割りで計算され、1ヶ月未満の端数は切り捨てられます

そのため、設立日を月初(1日)ではなく「2日以降」にするだけで、設立した月の1ヶ月分がカウントされず、初年度の均等割をわずかですが節約できます。

資本金はいくらにする?6つの視点から考えるベストな金額

資本金は会社の信用度を示す指標ですが、税制上の「壁」が存在します。税金と信用の両面から最適な金額を判断するとよいと考えられます。

ポイント1:会社法上の最低ラインを理解する

現行の会社法では、最低資本金制度が撤廃されたため、資本金1円からでも株式会社を設立することは可能です。

これにより起業のハードルは下がりましたが、前述の信用の観点から、実際に1円で設立するケースは多くありません。

ポイント2:消費税の免税メリットを受けるなら1,000万円未満

設立時の資本金を1,000万円以上にしてしまうと、その時点で消費税の課税事業者となり、設立1期目から消費税を納税する義務が発生します。

これにより、本来であれば最大2年間受けられるはずだった消費税の免税メリットを、完全に失うことになります。

消費税のことを最優先するならば、資本金は999万円以下に設定することが絶対条件です。

ポイント3:法人住民税均等割の負担を抑えるなら1,000万円以下

法人住民税の一部である「均等割」は、会社の利益が赤字であっても必ず支払わなければならない税金です。

この税額は資本金の額に応じて階段状に設定されており、資本金が1,000万円を超えると税額が大きく跳ね上がります

例えば、東京都23区内の場合、資本金1,000万円以下なら年額7万円ですが、1,000万円を超えると年額18万円となり、負担が倍以上に増加します。

ポイント4:中小企業の税制優遇措置を活用するなら1億円以下

税法上、資本金が1億円を超えると「大企業」として扱われ、中小企業に認められている様々な税制上の優遇措置が受けられなくなります。

例えば、「年間所得800万円以下の部分に対する法人税の軽減税率」などが適用対象外となるため、特別な理由がない限りは資本金1億円以下に設定するのが賢明です。

ポイント5:社会的信用力を確保するならできるだけ多く

資本金は、会社の財務的な体力や規模を示す指標として、取引先や顧客からの信用に影響します。

法律上は1円でも設立可能ですが、会社のウェブサイトやパンフレットに「資本金1円」と記載されていると、「経営基盤が弱いのではないか」という印象を与えかねません。

ある程度の金額を設定することで、事業に対する本気度を示し、円滑な取引につながります。

ポイント6:融資審査を有利に進めるならできるだけ多く

金融機関から融資を受ける際、資本金は「自己資金」と見なされ、審査における重要な評価項目となります。

資本金の額が大きいほど経営者の事業へのコミットメントが強く、会社の財務基盤が安定していると判断され、融資審査で有利に働く傾向があります。

資本金は「1,000万円未満でできるだけ大きく」が王道

ひとり社長や小規模法人の資本金の王道としては、「税制上有利になる、1,000万円未満の範囲でできるだけ大きく設定する」のがベストな選択です。

自己資金に限りがある場合でも、社会的な信用を考慮し、最低100万円、理想としては旧有限会社法で定められていた300万円程度を目安とすることがよいと考えられます。

また、「設立時は800〜990万円でスタートし、消費税の免税期間が終了した3期目以降に1,000万円へ増資する」というのも有効な戦略です。

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