リサーチに決定権を委ねてしまうことの危うさや、データだけでは見えてこない顧客の「感情」を捉える重要性について。
ジョン・スポールストラ著「エスキモーに氷を売る」(フォレスト出版)を参考にして。
リサーチに決定権を譲らないという考え方
事業における重要な意思決定をリサーチの結果だけに頼ることは、時に予期せぬリスクを伴うことがあります。
本書では、意思決定の責任を回避するためにリサーチが利用される傾向が指摘されています。
その象徴的な事例として、コカ・コーラ社の「ニュー・コーク」の失敗が挙げられています。
- 当時の状況:市場シェアを奪うライバルに対抗するため、コークは味を甘く変更することを検討しました。
- リサーチの結果:何十万回もの味覚テスト(ブラインドテスト)では、新しい味の方が好まれるという結果が出ました。
- 実際の反応:しかし、中身が判明した途端、愛用者は以前の味を強く求め、結果として元の製法を復活させる事態になりました。
このように、どれほど巨額の費用をかけた大規模なリサーチであっても、最終的な判断まで委ねてしまうと、顧客の本質的な想いを見誤ってしまう可能性があるのかもしれません。
「活きるリサーチ」と「だまされるリサーチ」の違い
リサーチがすべて不要というわけではなく、その「対象」と「目的」を吟味することが大切です。
著者の経験に基づいた、有効なリサーチと注意が必要なリサーチの違いを整理してみます。
| リサーチの種類 | 特徴と注意点 | 事例 |
|---|---|---|
| 有効なリサーチ | 現在の顧客に、その事業や商品の「経験」について尋ねるもの。 | 日曜夜の試合時間を、実際に観戦に来るシーズンチケット保有者の希望に合わせて変更したケース。 |
| だまされるリサーチ | まだその事業を経験したことがない人たちに、仮定の話で意見を聞くもの。 | 試合に行ったことがない人に「もし行くとしたら何時がいいか」と尋ねる調査。 実感を伴わないため、信頼性が低い。 |
自身の事業を支えてくれている顧客の声であれば、それは非常に価値のある情報になり得ます。
一方で、未経験者に意見を求めても、実感を伴わない回答に振り回されてしまう懸念があります。
事業を成長させるためのリサーチ活用法と結論
リサーチは、決定を下すためではなく、相手を「説得」するためのツールや「事業改善」のヒントとして活用することが推奨されています。
- 信頼性を高めるツールとして
融資を受ける際や投資家の獲得、あるいは価値を証明する場面では、外部のリサーチ結果が大きな助けになることもあるでしょう。 - 「楽しみとゲーム」部門(研究開発)
新商品の開発や既存の事業を改善し続けることは、事業成長に不可欠な要素です。高尚な「研究開発」と呼ぶより、楽しみながら取り組むべき部門と考えます。
最も信頼できるリサーチは、自身の顧客と直接対話し、彼らが何を「感じているか」を肌身で知ることだといえます。
大規模な報告書というフィルターを通す前に、一対一のコミュニケーションから得られる生の声に耳を傾けることが、事業をジャンプ・スタートさせる鍵になります。
