顧客を単なる「買い手」ではなく「ヒーロー」に変えることで事業の継続性を高める工夫について。
ジョン・スポールストラ著「エスキモーに氷を売る」(フォレスト出版)を参考にして。
事業を活性化させる「ジャンプ・スタート」の視点
事業が伸び悩んでいるとき、多くの場合はコスト削減やリストラといった「削る」選択肢が取られがちかもしれません。
しかし本書では、そうした方法は一時的な収益改善にはなっても、長期的には成長を遅らせる可能性があると指摘されています。
鍵となるのが、事業を「ジャンプ・スタート(急始動)」させるマーケティングの考え方です。
- 現状の打破
目標を設定し、それをクリアしていく過程に楽しさを見出すことが推奨されています。 - 組織の活性化
従業員の意欲が高まり、組織全体が生き生きとした状態へ変わっていくことが期待できます。 - 持続的な成長
結果として事業を成長させ、より大きな利益をもたらす可能性が高まります。
守りの姿勢だけでなく、前向きなマーケティングによって事業のモードを切り替えることが、再建の第一歩といえるかもしれません。
顧客を「ヒーロー」にする、という新たな関係性
著書でのポイントとして、商品を売るだけでなく「クライアントをヒーローにする」という哲学にあります。
顧客(特に企業の担当者)は、高額な契約や新しい提案を受け入れる際、”もし失敗したら責任を問われるのではないか”という不安を抱えている場合があるものです。
本書では、セールスの視点を以下のように切り替えることの重要性が示唆されています。
| 従来の考え方 | クライアントをヒーローにする考え方 |
|---|---|
| 商品やサービスを売るだけで責任が終わる。 | 顧客の事業を成功させるために必要なすべてを行う。 |
| 顧客との間が一時的である。 あるいは対立的な関係が生じることもある。 | 顧客を”社内の成功者”と考え、強固な信頼関係を築く。 |
| 短期的な売上数値を優先する。 | ”一生の友人(顧客)”と考え、事業を継続させる。 |
単に性能や価格を訴求するのではなく、その事業を採用した顧客担当者が社内で高く評価されるようサポートすることこそが、真のジャンプ・スタートに繋がります。
成果を「見える化」するツールの活用と結論
顧客をヒーローにするための具体的な手段として挙げられているのが「年次報告書」の作成です。
これは、自分たちがどれほど素晴らしい仕事をしたかを単に自慢するものではなく、顧客がいかに賢明な判断を下し、事業に貢献したかを文書化するプロセスです。
- エグゼクティブ・サマリー
事業によって得られた具体的な利益の概略を、担当者一同の署名入りで伝えます。 - プロモーションの詳細
実施した施策のステップとその価値を詳しく説明します。 - 実例の証明
広告のサンプルなどを添え、内容に偽りがないことを示します。
この報告書は、顧客が自分の上役に成果を証明するための強力な武器となり、顧客を昇進や昇給へと導く手助けになる可能性があります。
”クライアントをヒーローにする”という取り組みは、一見すると手間がかかるように思えるかもしれません。
しかし、このプロセスを通じてスタッフの仕事の質が向上し、顧客の忠誠心も劇的に高まることが期待されます。
顧客を組織内の主役に据えることは、競合他社が入り込む隙をなくし、自身の事業を安定させるための最も効果的な「守り」であり「攻め」の戦略になるといえます。
