商品の劇的な改良を待つのではなく、今ある商品でいかに事業を成長させるかという著者の視点は、多くの担当者にとって新たな気づきになるかもしれません。リストラなどの消極的な手段に頼らず、ワクワクするような工夫で成果を上げるヒントについて。
ジョン・スポールストラ著「エスキモーに氷を売る」(フォレスト出版)を参考にして。
「商品が救ってくれる」という期待を手放す
多くの事業において、「商品がもっと良くなれば売れるのに」と考えがちですが、著者はあえて「自社の商品が、われわれを救うことはない」というルールを掲げています。
これは、商品の欠点や弱点に目を向けるのではなく、与えられた”現状の商品”をいかに工夫して届けるかに集中するためだといえます。
- 完璧な商品を待たない
完璧な商品であればマーケティングをせずとも自然に売れていくはずです。しかし、現実にはそのような商品は稀であり、マーケティング担当者の役割は「与えられた商品をいかに魅力的に伝えるか」にあるのではないか。 - 「ちょっとしたイノベーション」の積み重ね
画期的な新製品を開発することだけがイノベーションではありません。今ある商品の特性を再発見したり、見せ方を変えたりする「マーケティングにおける小さな工夫」が、大きな変化をもたらすきっかけになるのかもしれません。 - 現場のアイディアを活かす
特にサービス産業などの事業では、多額の費用をかけずとも、従業員のちょっとしたアイディアが新しい価値を生み出す「新商品」に繋がる可能性があります。
停滞を打破する「4つの基本ルール」
「ジャンプ・スタート・マーケティング」を実践するためには、スタッフの注目を正しい方向へ向けるための指針が有効かもしれません。
著者がシンクタンク・セッションで活用した「4つの基本ルール」を、現代の事業に当てはめて整理します。
| ルール | 内容のポイント |
|---|---|
| 1. 自社の商品が、われわれを救うことはない | 商品の改良を待つのではなく、今の状態でいかに勝負するかを考える。 |
| 2. 成功が見込めそうな分野を限定する | 全方位に力を分散させず、最も成果が出そうな特定のターゲットや機会に集中してエネルギーを注ぐ。 |
| 3. 限定分野での戦略をつくりだす | 選んだ分野で確実に「完売」や「目標達成」を生むための具体的なパッケージや付加価値を考案する。 |
| 4. 商品に対する新規の注文をとる | 既存の延長線上ではない視点を加え、これまでリーチできていなかった新しい顧客層からの関心を引き出す。 |
これらのルールを共有することで、チーム全体の思考が、「できない理由」を探すことから「どうすれば可能か」を考える方向へとシフトしやすくなる可能性があります。
価値のパッケージ化がもたらすブレイクスルーと結論
著書では、魅力に欠ける対戦カードのチケットを売るために「著名な講演者によるセミナー」を組み合わせた特別なチケット・パッケージを考案しました。
これは、単にスポーツを観戦するという枠を超え、企業が「従業員の教育や意欲向上」のために購入したくなるような、新しい事業価値の提案でした。
- 「ビッグな商品」への転換
単なる観戦チケットの切り売りではなく、著名なゲストの講演という付加価値をつけることで、巨大企業からの大口注文を獲得することに成功したようです。 - 成功がさらなる成功を呼ぶ
このような工夫によって「完売」の実績が増えると、それがチームの勢いとなり、事業全体に自信と活気がもたらされることが示唆されています。
今まで接点のなかった層との関係構築にも繋がった点は、非常に興味深い成果といえます。
事業を成長させる鍵は、必ずしも商品の抜本的な改革にあるとは限りません。
今あるものをどう定義し直し、何と組み合わせるかという「マーケティングのちょっとしたイノベーション」が、想像以上の成果を導く可能性があります。
大切なのは、既存の枠組みにとらわれず、常に新しい工夫を楽しみながら試み続ける姿勢なのかもしれません。
