多くの企業や個人事業主が”安く売らなければ選ばれない”という低価格競争の波にのまれ、利益率の低下や長時間労働に苦しんでいます。世の中にモノやサービスが溢れ、顧客が「普通のもの」でお腹いっぱいになっている現代において、価格ではなく「独自の強み」で選ばれ、持続可能な収益を確保するための価値基準の転換法について。
菅原健一著「厚利少売」(匠書房)を読んで。
価値の再定義とビジネスを支える「4つの基本原則」
まず、事業において、顧客が対価を支払うのは、商品そのものではなく、そこに「価値」を感じるからあであるといえます。
重要なのは、価値を、単なる”機能”や”スペック”ではなく、「相手に変化をもたらすこと」であると定義し直すことです。
例えば、ラグジュアリーブランドに共通している”価値”として以下のようなものが挙げられます。
- 自身が、他人に誇ることができる(経済的成功、社会的地位)と感じられる
- 製品の品質や耐久性が高く、長く使うことができる
- 購入体験や専用カスタマーサポートで高い満足感が得られる
- 限定品や特別品に、希少価値や独自性がある
- ブランドストーリーに共感性がある
- デザイン・芸術性が高く、アートとしての魅力がある
- 再販において高い値がつく(投資対効果が大きい)
顧客が抱える課題が解決されて、理想の状態へと導かれるその「変化」こそが、高い対価の根拠となります。
そこには、利益が2倍になるといった「定量的な変化」だけでなく、家族の笑顔が増えたり、自社の強みが言語化できたりといった「定性的な変化」も、価値の一部になります。
この「変化量」を最大化し、独自のポジションを築くためには、以下の4つの原則を心に刻む必要があります。
価値を高めるための4つの鉄則
| 原則 | 内容の詳細と具体例 |
|---|---|
| 提供価値への「責任」 | 顧客が変化を実感できるまで、徹底的にコミットする覚悟を持つ。 ※売って終わりの「売り逃げ」では× |
| 供給量の意図的調整 | 供給をあえて絞り、プレミアム感を生む。 ※ファーストクラスは、座席数を絞ることで、高額でも選ばれる極上体験を実現する。 |
| 利益脳 | 売上高に捉われず、手元に残る「利益」を重視する。 売上が大きくてもコストがかさむようでは、不測の事態に極めて脆い。 |
| ”異常値”になる | 万人に好かれようとせず、特定のターゲットにとっての「代えがたい存在」を目指す。 100万人に知られることよりも、100人に”絶対に必要”と思われることが重要。 |
たとえ無名であったとしても、相手の人生や事業に、”人生が変わるほどの大きな変化”を与えることができれば、その対価というものは、自然と正当化されていくことになります。
独自の強みへ転換する具体的な3ステップ
現在の薄利多売モデルから、高付加価値なモデルへと移行するためには、以下の3つのステップを循環させることが有効であると考えられています。
”目標とする相手にもたらしたい利益”から逆算し、自分が提供すべき価値の基準を引き上げます。
このことで、自分に対しても、”絶対に相手に価値をもたらすための覚悟と挑戦”にもつながります。
そして、勇気をもって、その提供価値に見合った価格(少し高いと感じさせる価格)を設定します。
価格を上げると顧客数が減るかもしれませんが、お客様にしっかりと手間をかけて質の高いサービスを提供するための「集中」です。
顧客数が減ることで、一人ひとりにかけられる時間やリサーチの密度、サポートの質が劇的に向上します。
本当に自社の価値を必要としている顧客に対して、リソースをフル活用できるようになります。
余裕ができた時間や資金を、さらなる品質向上や独自の体験価値に投資します。
顧客が圧倒的な「変化量」を実感することができれば、満足度はその期待を超え、強力なリピーターや熱狂的なファンを生む好循環が生まれます。
”10人中1人がとことん気に入ってくれれば経営は成り立つ”という言葉があるように、深いファンを作ることで強固なブランドを築きます。
持続可能な成長のために、「利益脳」を磨く
事業の継続において、最も大切なのは「利益」であり、利益は会社がどれだけ社会に役立っているかを示す指標であって、トラブルに見舞われた際につぶれないための防波堤でもあります。
同じ1000万円の利益であっても、利益率の高いビジネスモデルを構築できたほうが圧倒的に持続可能性が高く、さらなる付加価値を生むための余力を持っています。
「利益の最大化」こそが、提供する側も受け取る側も、かつ、社会も豊かになることができる、商売の本質であるといえます。
価格競争からの脱却は、単に「テクニック」ではなく、「顧客の変化に責任を持つ」という経営哲学の決断から始まります。
- 「価値とは、相手への変化量である」と捉える
- 自分の立ち位置を、相手にとっての「異常値」に置く
- 質を高める循環を回し続ける
このプロセスを回し続けることで、より独自の強みが磨かれて、選ばれ続けるビジネスへと転換することができると考えられます。
まずは、今のサービスが、顧客にどのような「変化」を与えているか、その責任をどこまで背負えるか、自問自答することから始め、さらなるその提供価値の変化量の最大化の決断の先に、みんなにとって笑顔の溢れる豊かな事業が待っているといえます。
