価格競争から脱却し、独自の強みで選ばれるビジネスへと転換するためにすべきことを考える②

価格競争の渦中から抜け出す鍵は、単なる「質の向上」や「特典の追加」ではないといえます。なぜなら、真の価値とは「相手にどれだけの変化をもたらしたか」という変化量で決まるためです。顧客が真に求める「本質価値」を見極めて、独自の強み(異常値)へと転換するための具体的なステップについて。

菅原健一著「厚利少売」(匠書房)を読んで。

目次

価値の再定義と、足し算思考の罠

多くの人が「高く売るためには、質を上げる、あるいは特典を増やすべき」と考えがちです。

これは単なる”足し算思考”であって、ターゲットが求めていない質の追求や、相手の変化量に影響しない特典というものは、かえって”不要なもの”と考えられてしまう可能性があります。

まずは、「価値」というものを、正しく分類する必要があります。

  1. 価値の定義:「価値 = 相手の変化量」である
    顧客が抱える課題が解決され、理想の状態へと導かれる、その「変化量」が、対価の根拠である。
  2. 本質価値
    商品・サービスそのものの核心業務であり、お客様が自分の事業に求めているであろう価値。
  3. 付加価値
    商品・サービスの本質価値に追加されるもの・補完的な価値

むやみに付加価値(おまけ)を増やすのではなくて、顧客にとっての「変化量」を最大化させる要素がどこにあるのかを見極めることが重要です。

「付加価値」と「本質価値」とを再構成し、「異常値」を生む

業界の”当たり前”を本質価値だと信じ込んでいると、競合と差別化できません。

例えば、マッサージの本質価値は「施術の技術力」だと思われがちですが、顧客によっては「リラックスできる環境でお喋りしたい」「スキンケアの相談もしたい」「ヘアアレンジの相談もしたい」「ネイルもお願いしたい」「非日常生活を味わいたい」というニーズが、実は価値としての本質である場合も考えられます。

一般的に「付加価値」だと思われているものを、「本質価値」であると打ち出すことによって、特定のターゲットにとっての「代えがたい存在(異常値)」になることができます。

一般的な本質価値に対し、新たな”本質価値”を生み出した事例

企業・製品従来の「本質価値」新たに定義した「本質価値」
ダイソン掃除機吸引力の強さ吸引力の維持
Apple Watch正確な時間ヘルスケア
ライター文章のクオリティ思考の整理・壁打ち

新たな「本質価値」を見つける方法

独自のポジションを築くには、「提供したものによって、相手がどう変わったか」を丁寧にヒアリングし、予想外の答えが返ってきたらそれを深く掘り下げて、そこから新たな本質価値を見つけ出すということが有効です。

本質価値を見つけるヒント

自分の事業において、どこに「本質価値」を置くべきか迷ったときには、以下の「人が高いお金を払ってもいいと感じるジャンル(人間が本能的社会的に強い価値を感じる領域」を参考にしてみるとよいと考えられます。

  1. お金(自分・自社の利益になるもの)
  2. 時間節約(効率化し、自由な時間を生むもの)
  3. 手間ゼロ(面倒な作業を代行してくれるもの)
  4. 耐久性(壊れにくく、長く使えるもの)
  5. 健康(体にいいもの、寿命を延ばすもの)
  6. プロフェッショナルの知見(専門家の意見やアドバイス)
  7. 限定的・独特(限定的で、選ばれた人だけのもの)
  8. 安全性(人や財産を守るもの)
  9. 知名度向上(ブランドや個人の認知を高めるもの)
  10. 社会的地位向上(社会的地位や認知を向上させるもの)
  11. カスタマイズ(自分だけに最適化されたもの)
  12. 感情的価値(感情的結びつき・思い出・心の充足感を与えるもの)
  13. 特別な体験(他では絶対に味わえない体験)
  14. パフォーマンス向上(能力を物理的・知的・精神的に高めるもの)
  15. 美容・外見の向上(外見をより良く見せるもの)
  16. 教育(知識やスキルを習得できるもの)
  17. 家族や愛する人のためになるもの(大切な人の幸せのためのもの)
  18. 環境への貢献(環境保護につながるもの)

これらの要素を自身のサービスと掛け合わせることによって、価格競争とは無縁の「独自の強み」が見えてくると考えられます。

「過剰なもの」・「希少なもの」

現代社会において、何が「過剰」で、何が「希少」かを知ることも、新たな本質価値を生み出す大きなヒントになります。

過剰なものを生み出したとしても利益は少ないですが、希少なものを生み出せば大きな価値となります。

過剰なもの(利益が少ない)希少なもの(新たな本質価値)
正解問題(課題)
モノそのもの意味(なぜそれが必要か)
データ化されたものストーリー(共感を生む物語)
利便性ロマン(ワクワク)
説得(論理)共感(価値観の共有)
競争(奪い合い)共創(共に創り上げる)

言葉にする

素晴らしい本質価値を見つけても、それが顧客に伝わらなければ存在しないのと同じです。

本質価値は、言葉やビジュアルにして初めて認知されます。

  • 肩書きやキャッチコピーを作る
    「何者であるか」を端的に表すネーミングを言語化します。
  • ビジュアルで直感的に伝える
    機能美を視覚化したり、本質価値を連想させるイメージ画像を用意する工夫が求められます。

「これ、なんだろう?」と相手に思わせる仕掛けがあってこそ、独自の強みは輝き出します。

求め続ける

本質価値を鮮度高く保ち続けるためには、”自問自答”が重要になってきます。

本質価値は時代や顧客の状況によって変化していきます。

「この価値は、今もお客さんが求め続けているものなのか?」

常にこの問いを自分に投げかけ、必要であれば新たな本質価値を再構築する姿勢が必要です。

自分の業界や経験に縛られずに、これまでの経験に縛られずに、「お客様の声に耳を傾けてキャッチアップすること」が大切であると考えられます。

「ブランド」と「チーム」の作る基準

厚利少売を支える事業の構造は、「3階建て」で構成されていると考えられています。

これらを順番に積み上げ、磨き続けることが、高い利益率を維持する秘訣であると考えられます。

つまり、「安心・信頼(=ブランド)」の部分で手を抜いてしまうと、本質価値は見出されないと考えられます。

具体的には、販売者の顔が見えない、情報がまったく出てこない、悪い口コミがたくさんある、問合せしても粗雑な対応をされるなどです。

ビジネスを支える「3階建て」構造

3階付加価値本質価値をさらに魅力的に見せる補完的要素
2階本質価値顧客に圧倒的な変化をもたらす、独自の強み
1階ブランド
(安心・信頼)
土台となる信頼
「ブランド・マントラ」の確立、顧客との誠実な対話によって醸成されるもの

「ブランド(安心・信頼)」をつくる4つのヒント

せっかくの本質価値も、安心感がなければ購入には至りません。

以下の4点を意識して土台を固めるべきと考えられます。

  1. ブランド・マントラを確立する
    自社のDNAを簡潔に表現する言葉を持つということです。
    例えば、Appleのように、事業の方向性や製品の性質をひと言で示すことが”他己紹介”されやすさにつながります。
  2. 既存の信頼と組み合わせる
    シアトルの文化を取り入れたスタバのように、すでに市場で信頼されている文化やブランドを参考として、自身の強みと組み合わせることにより、信頼を醸成できます。
  3. お客様と対話する
    ユーザーのアイデアを取り入れたり、制作過程を公開したりすることで、ファンとの共創ストーリーが生まれ、独自のブランド愛着が深まります。
  4. もらったお金は”投資されている”と捉え、再投資する
    高い対価は「期待」の裏返しであり、いただいたお金をサービス向上や自身の成長に投資し続ける姿勢こそが、プロフェッショナルとしての最大の信頼(ブランド)になります。

チームマネジメントにおける本質価値の見極め

厚利少売を支えるのは「人」ですが、人件費は最大のコストでもあります。メンバーのエンゲージメントを高める際も「本質価値」の視点が欠かせません。

  • 事例:GAPの勤務スケジュール改善 多くの小売業が「給与」で満足度を上げようとする中、GAPは従業員にとっての真の本質価値が「予測可能で一貫した勤務時間」であることを見抜きました。シフトの標準化を行った結果、生産性が6.8%向上し、売上も大幅に増加しました。

従業員が求めているのは「高い給与」だけとは限りません。「成長機会」や「柔軟な働き方」など、自社が提供できる「異常値(独自の魅力)」に共感してくれるメンバーを選ぶことが、少数精鋭で高い利益を出す鍵となります。

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この記事を書いた人

長崎で活動する
税理士、キャッシュフローコーチ

酒井寛志税理士事務所/税理士
㈱アンジェラス通り会計事務所/代表取締役

Gemini・ChatGPT・Claudeなど
×GoogleWorkspace×クラウド会計ソフトfreeeの活用法を研究する一方、
税務・資金繰り・マーケティングから
ガジェット・おすすめイベントまで、
税理士の視点で幅広く情報発信中

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