安売りの波に飲み込まれず、適正な利益を確保し続けるためには、供給量を増やす前に、自分たちの価値を本当に必要としている顧客を見つけ出す必要があります。「需要の見極め方」や「顧客との向き合い方」について。
菅原健一著「厚利少売」(匠書房)を読んで。
”なんとなく”からの脱却。顧客の解像度を上げる
顧客の「解像度」を上げることが非常に重要になります。
解像度が低い(=ターゲット像がふわっとしている)と、以下のような弊害が生まれやすくなります。
- 解決策が短絡的になる
例えば、女性ならピンクが好きだろうといった固定観念で決めてしまう - 中長期的な視点が欠ける
目先の数字にとらわれ、改善のサイクルが回っていかない - 誰にでも当てはまる提案しかできない
その結果として、”安さ”でしか勝負できなくなる
「属性」ではなく「価値基準」で考える
では、どのようにすれば、解像度が高まるのか。
年齢や職業といった「属性」ではなく、相手の「価値基準」に注目するという視点です。
その場合、人はどんな時に高額な金額であっても支払うのか?というシチュエーション(文脈)についてしっかり掘り下げる必要があります。
- よりリアルなシチュエーションの仮説
- 求められる価値・変化
- 新たな提案の可能性
”顧客が求めている「変化」は何か?”を連想ゲームのように深掘りすることで、顧客の解像度が飛躍的に高まります。
「困っている人」にフォーカスする
商売の本質は、「困っている人を助けること」ともいわれます。
「困っている度合い」が深いほど、解決できた時の価値(変化量)が大きくなり、熱心なファンになってくれる可能性が高まります。
「自分が何を売りたいか」よりも「誰が困っていて自分ならどう助けられるか」から逆算する方が、結果として独自の強みを見つけやすいと考えられます。
需要を見極めるためのステップ
独自の強みで選ばれるためには、実際の行動を通じて需要を確かめる必要があります。
ターゲットが「どんな時に」「何を」求めているのか、具体的なシチュエーションを想像し、紙に書き出してみます。ここでは予想や願望が含まれていても構いません。
次に、その仮説が正しいかを確認します。
ターゲットに近い属性の人々を観察し、芋づる式にターゲットになりそうな人の周辺にいる人もさらに観察することで、同じような価値観を持つコミュニティが見えてきます。
何を好み、何を好まないのか(何に価値を置き、何に価値を置かないのか)。
20人程度を詳細に観察すれば、彼らの「価値基準」がかなり具体的に見えてきます。
リサーチである程度確信が得られたら、実際にアプローチします。
モニター価格などを通じて、実際に体験してもらいます。
ここでの重要なポイントは以下の2点であると考えられます。
- 定価を伝える
「本来は30万円のサービスですが、今回はモニターとして3万円で提供します」と伝えることで、価格のアンカーを打ちます。 - 成果にコミットすること
割引するからといって手を抜かず、定価以上の価値を提供する覚悟で臨みます。
この段階の目的は、売上ではなく、「リアルな感想(フィードバック)」を得ることにあります。
体験後に必ず行うべきなのがヒアリングです。
「提供の前後で何が変わったか」を確認します。
顧客自身も「質問されて初めて気づく価値」があるため、積極的なヒアリングが不可欠です。
具体的には、以下のような項目を聞き出します。
- 使ってみてどうだったか?
- 競合他社よりも優れていると感じた点はどこか?
- 利用中に困惑した点や迷った点や分からなかった点はあったか?
- 何を改善すべきか?
- この商品を友人や知人に推薦したいと思うか?
そして、何よりも重要なのが「価値(=相手の変化量)」についての問いです。
- Before-Afterで、何が変わったか?何が変わらなかったか?
- なぜ変わったと感じたか?なぜ変わらなかったと感じるか?
「After」の先(Before → After → 「After」)
重要なこととして、”単なる結果(After)”だけでなく、「その先にある変化(After-After)」まで見据えるという視点です。
- Before: 痩せたい
- After: 痩せた(機能的価値・付加価値)
- After-After: 自分に自信が持てるようになり、家族との会話が増えて家庭が明るくなった
この「After-After」こそが、顧客が真にお金を払ってでも得たいと感じる本質価値といえます。
顧客自身も気づいていない「未来の変化」を言語化し、提供できたとき、ビジネスは、価格競争とは無縁の領域へと進化していくことになります。
ビジネスパートナーとして顧客を「選ぶ」覚悟
供給者と顧客は対等なパートナーであるべきであり、「顧客を選ぶ」覚悟が必要になります。
お互いに幸せになれる関係性を築くために、以下の基準を満たす相手を顧客とすべきであると述べられています。
- 本気で変わりたいと思っている
- 一緒に決めたことを、それどおりに行動してくれる
- 異常値さを受け入れてくれる
- 数少ない供給を、与えてあげたいと思える
「断る勇気」を持つ
この基準に合わないと感じたら、勇気を持って「断る」ことが必要です。
「コスト」ではなく「未来への投資」であることを説明したうえで、それでも価値観が合わなければ、お互いのために取引を見送る。
この姿勢を貫くことが、長期的にはブランドの信頼性を高め、理想的な顧客だけが集まる好循環を生み出すことになります。
供給を絞り、選ばれる存在へ
価格競争から脱却するとは、単に値上げをするということではなく、需要を正確に見極め、自分たちの価値を本当に必要としている「困っている人」を見つけ出し、その人たちだけに最高の「変化」を提供することであり、そのためにあえて供給量を絞る、ということです。
