多くの人が足踏みしてしまうのは、知識がないからではなく、失敗への不安が気になってしまうから。リスクを抑えながら独自の市場を築くための「スモールスタート」と、軌道修正し続けるための重要なマインドセットについて。
菅原健一著「厚利少売」(匠書房)を読んで。
「主人公兼脚本家」の視点で、ビジネスの物語を描く
独自の強みで勝負する「厚利少売」への転換を阻む最大の要因といわれているのは、スキルの不足ではなく、”やったことがない”・”周りに反対される”・”失敗したらどうしよう”といった心理的ブレーキであることが少なくありません。
事業において、他人や環境に価値判断を委ねてしまう”サブキャラ”のままでは、状況が変わるたびに振り回されてしまうことになります。
頼りにしていた上司がいなくなったり、市場のルールが急変したりしたとき、自分の足で立てなくなってしまいます。
重要なのは、自分を「主人公」として捉え、かつ、物語全体を俯瞰する「脚本家」の視点を持つことであると考えられます。
この2つの視点を持つことにより、一時的な感情的な浮き沈みに左右されず、独自の強みを築くための行動を冷静に選択できるようになります。
主人公の視点
- 自らが価値を見つけ、磨き、相手に届ける
- 価値提供から顧客との関係構築までを自らが主導する
- 目の前の課題に全力で取り組む行動者
脚本家の視点
- 自分というキャラクターを客観視し、物語を面白くするための演出家
- 困難に直面したとき、”ここで主人公はどう動くべきか?”・”この失敗は後の逆転劇への伏線”・”ここで相手の期待に応えなかったらストーリーが終わる”と、冷静に自分に指示を出す
- 長期的なストーリーラインを描き、感情に流されずに軌道修正を行う
リスクを最小限に抑える「エフェクチュエーション」
”独自の市場を築く”と聞くと、大きなリスクや投資が必要だと感じるものの、かといって、一か八かの賭けに出る必要もありません。
「小さく始めて小さく拡大する(スモールスタート)」ことが推奨されます。
会社の業績悪化や環境の変化など、現状維持を選んでもリスクはゼロにはならないのであれば、自分でコントロールできるリスクを取って前に進む方がむしろ健全であるともいえます。
ないものねだりをするのではなく、今、自分が持っている手段(資源)から行動を生み出す考え方として、「エフェクチュエーション」という考え方があります。
具体的には、以下の3つの要素を棚卸しすることから始めます。
| 手段(資源) | 内容 | 具体的な問いかけ |
|---|---|---|
| ① 私は誰か (Who I am) | アイデンティティ 性格 特性 | ・自分が苦なく続けられること ・どんな価値観を大切にしているか |
| ② 私は何を知っているか (What I know) | 専門知識 スキル 経験 趣味 | ・過去の経験から得た教訓 ・どんなスキルが人の役に立ったか |
| ③ 私は誰を知っているか (Whom I know) | 人脈 社会的ネットワーク | ・信頼できる相談相手 ・協力してくれそうなパートナー |
「業界の非対称性」を利用して価値を生む
自分の手持ちのカードを確認したら、それを「別の場所」で使えないか。
ある業界では「当たり前」のスキルが、別の業界では「喉から手が出るほど欲しいスキル(異常値)」になることがあります(業界の非対称性)。
今あるものを掛け合わせたり、場所を変えたりするだけで、リスクを負わずに「独自の強み」を作り出すことができるのです。
「軌道修正力」を持ち、1年後の景色を変える
大切なのは、最初から完璧な計画を立てることではなく、状況に合わせて柔軟に変化する「軌道修正力」であるといえます。
「利益を上げる=努力量を増やす」ではなく、「時給単価を上げる方法」を考えてみます。
つまり、これまで100万円で売っていたものを、どうすれば付加価値をつけて1,000万円で売れるのか? そのために必要なスキルや場所はどこか?
まずは「今の自分が持っているもの」を見つめ直し、今日からできる小さな一歩を踏み出します。
- 完璧主義を捨てる
計画通りにいかないことを失敗と捉えずに、「データが得られた」と前向きに考えます。 - 顧客の声を聞く
自分の思い込みではなく、顧客の反応や変化を羅針盤にし、”違ったな”と思ったら素直に方向転換します。 - 時間を味方につける
