事業を長く継続していくために、店舗管理を「見える化」する

毎日忙しく働いているのに、なぜか手元にお金が残らない。多くの経営者が抱えるこの悩みの正体は、実は”どんぶり勘定”という名の「経営のブラックボックス化」にあります。勘に任せた経営から脱却し、長く継続していくべく、安定的に利益を生み出すための「見える化」という武器について。

水野剛志著「飲食店経営で成功するための「お金」のことがわかる本」(日本実業出版社)を参考として。

目次

事業を継続していくための経営の「見える化」4つのケース

実践例1:チームの羅針盤となる「共通の地図」を描く

スタッフがみんな一生懸命働いてくれているものの、それぞれが別々の地図で別々の方向を向いていると、お店という船も前には進みません。

ここで言う”地図”とは、店舗ごとの「具体的目標」のことです。

「前年より良かった・悪かった」という過去との比較だけでは、今日の行動にはなかなか繋がらないものです。

年間目標から逆算して月次・週次の売上や経費の目標値を設定し、それを”チーム全員で目指すゴール”として共有しましょう。

明確な目的地が示されることにより、スタッフ一人ひとりに、「自分たちの店をどう動かしていくか」という当事者意識が芽生え始めることが期待できます。

実践例2:遠い目標を「今日のミッション」に変換する

年間の壮大な目標も、現場で働くスタッフにとっては遠い未来の話に聞こえがちになってしまいます。

大切なのは、その大きな目標を「今日一日で何をすべきか」という具体的なミッションにまで噛み砕くことであると思います。

例えば、「今月の売上目標は500万円」よりも、「今日の売上目標は16万円。そのためには客単価をあと100円上げる工夫をしよう」と伝える方が、圧倒的に行動を促します。

営業日報などを活用して日々の目標と結果とを共有し、達成すれば小さなインセンティブ(売上達成手当など)を出すなど、日々の業務をゲームのように楽しめる仕組みを作ることで、チームの士気と業績が着実に向上していきます。

実践例3:複数店舗を管理するために、「クラウドツール」を用いる

多店舗展開や、オーナーが現場を離れる時間が長くなるほど、経営は「報告頼み」になってしまいます。

しかし、不正確な報告や遅れた情報をもとに判断を下すのは、霧の中を手探りで進むようなもので、これでは、的確な経営判断は難しいものとなります。

例えば、クラウド型のPOSシステムなどは、まさに経営者のための「デジタル操縦席」です。

全店舗の売上や客数、商品ごとの出数といった重要データをいつでもどこでもリアルタイムで確認できます。

データに基づいた客観的な事実が、経験や勘を裏付けてより確かな次の一手へと導いてくれると考えられます。

実践例4:「人に頼る」から「仕組みで防ぐ」へ発想を転換する

レジの打ち間違いや発注ミスは、決して「個人の能力」だけの問題ではありません。

むしろ、人的ミスが起こりやすい業務プロセスそのものに課題が潜んでいるケースがほとんどです。

特に、金銭授受のような絶対に間違えられない業務は、”注意する”といった精神論ではなく、仕組みによってミスを未然に防ぐ発想が不可欠です。

例えば、POSレジと決済端末を連携させ、金額の二度打ちを不要にする。

このような「ミスの起こりえない仕組み」を一つひとつ構築していくことが、お店の信用を守り、スタッフが安心して働ける環境づくりに繋がります。

まずは、ひとつの「見える化」から始めよう

今回ご紹介した4つの実践例に共通するのは、”経営のブラックボックス”をなくし、課題や目標を誰もが分かる形に「見える化」するという視点です。

  1. 明確な目標設定で、チームの進むべき道を「見える化」する。
  2. 日々の目標管理で、現場の当事者意識を「見える化」する。
  3. ITツールの活用で、全店舗の経営状況を「見える化」する。
  4. 業務の仕組み化で、人的ミスの原因を「見える化」し、なくす。

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この記事を書いた人

酒井 寛志(さかい ひろし)
長崎県長崎市で活動する税理士、キャッシュフローコーチ。
AI(Gemini、ChatGPT、Claude)×GoogleWorkspace×クラウド会計ソフトfreeeを活用した業務効率化・テクノロジー活用法を研究する一方、税務・資金繰り・マーケティングからガジェット・おすすめイベントまで、税理士の視点で幅広く情報発信中。

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