”AIの答え”のその先へ。専門家との「リバースエンジニアリング的対話」で見つける、本当に望む未来(ビジョン)

AIが”それっぽい答え”をすぐに出してくれる時代。しかし、そのなんとなくそれっぽい答えは、本当にあなたの望む未来(ビジョン)と一致しているのかどうか? AIの答えの”その先”にある、言葉にならない想いやビジョンを解き明かす鍵となる「リバースエンジニアリング的対話」について考えてみます。

目次

「リバースエンジニアリング」とは?

「リバースエンジニアリング」とはそもそも何か。

「完成品」から「設計図」を読み解く技術

リバースエンジニアリングとは、ひと言で言えば「完成したモノから、その設計図や意図を読み解くアプローチ。

通常のプロセスは、建築家が「設計図」を描き、それに基づいて大工さんが「家(完成品)」を建てる(設計図 → 完成品)という流れ(フォワードエンジニアリング)です。

それに対して、リバースエンジニアリングはその逆です。

すでに建っている「家(完成品)」を注意深く調査・分析し、「この柱の配置は、きっと耐震性を高めるためだろう」「この窓の向きは、光を最大限に取り入れる意図があるな」と推測しながら、元の「設計図」や「設計思想」を解明していきます(完成品 → 設計図)。

具体的には、どのような世界で行われているのか?

リバースエンジニアリングは、もともと製造業やソフトウェア開発の分野で発展してきたものです。

  • 製造業(例:自動車)
    競合他社が発表した新型車を購入して分解します。
    ”なぜこの部品を使っているのか?”、”どうやってこの静粛性を実現しているのか?”と分析し、その製品の根幹にある設計思想や製造技術を学び取ります。
  • ソフトウェア
    あるプログラムが”なぜこのように動くのか?”という動作原理をプログラムの内部構造(コード)を分析することで解明します。

なぜ、わざわざ「逆」からたどるのか?

その目的は、単に”模倣するため”だけというわけではありません。

最大の目的は、「なぜ、そうなっているのか?」という根底にある「理由」や「設計思想」を深く理解することにあります。

完成品には、作り手の様々な意図・工夫・時には妥協の産物(設計思想)が詰まっています。

それは逆からたどることでしか見えてこないという「本質」があるという考え方です。

AI時代の「対話」について考えてみる

「リバースエンジニアリング」という考え方、AI時代の「対話」に応用できるものであるように感じています。

  1. AIの「答え」をリバースエンジニアリングする
    AIが提示した「答え」を見て、”なぜAIはこの結論に至ったのか?”という背景にある”ロジック(設計図)”を読み解く。
  2. お客様の「言葉」をリバースエンジニアリングする
    人の言葉(本当の答え)の裏にある、「本当はどう感じているのか?」「まだ言葉にできていない不安や願いは何か?」という「心の奥底にある設計思想(=ビジョンや感情)」を、対話を通じて共に読み解く。

AIの”それっぽい答え”を「検証」し、「翻訳」する

AIの進化により、誰もが専門的な情報にアクセスし、「答え(完成品)らしきもの」を手軽に入手できるようになっています。

しかし、AIが提示する「答え」は、一見すると”それっぽい”ものの、専門的な観点から見ると単に不正確であったり重要な前提条件が抜けていたりすることも少なくありません。

自分に分からないことをAIに相談して答えを出させる限りにおいて、その答えが本当に正しいのか、自分の状況に本当に当てはまるのか、を判断するのは今のところ困難です。

そう考えると、人間の専門家の価値は、 まずは、AIが生成した”答え”を「検証」すること、お客様のために「翻訳」することであると考えられます。

  1. 検証(ファクトチェック)
    まず第一に、AIが提示した”答え”が正しいかどうかを検証する。
  2. 解明(リバースエンジニアリング)
    AIがどのようなロジックに基づいてその「答え」に至ったのかを分析してみる。
  3. 翻訳(トランスレーション)
    「AIの答えは、この部分では正しいが、今回のケースではこの前提が抜けているため適用できない」といった検証結果を、その人にとっての平易な言葉で丁寧に説明する。
  4. 意味付け(コンテキスト化)
    正しい情報に基づいた上で、それがお客様固有の状況や文脈において「何を意味するのか」を明確に提示する。

AIが「まずは答えを出す役割」だとしたら、専門家はまずはその答えの「正しさ」を検証する「検証者」であり、その答えの「本当の意味」を解き明かす「翻訳者」としての役割を担うことになると考えられます。

AIの「合理的な答え」を超えて、「ビジョン」へ伴走する”共創者”へ

AIの出した答えの検証とその説明が専門家の重要な役割であることは間違いありません。

とはいえ、一般的な分析や論理的な説明であればAIは得意ですし、この能力は今後も伸びると考えられます。

人間の専門家にしかご提供できない代替不可能な価値は、AIの合理的なロジック(Logic)の領域を超えた、「感情(Emotion)」や「ビジョン(Vision)」に寄り添うことであると考えられます。

AIの「合理性」と人間の「想い」のギャップ

AIは、過去のデータから「合理的」あるいは「効率的」とされる答えを導き出すことは得意です。

とはいえ、その合理的な答えが、お客様の「本当にやりたいこと」や「言葉にならない不安」、「大切にしている価値観(本来の設計思想)」と一致しているとは限らないものです。

さらに、それを言語化してAIに伝えること自体、人間が1人で考える限りにおいては、どうしても限界が伴います。

リバースエンジニアリング的対話

人間の専門家の真の価値は、まずはAIが提示した”それっぽい答え”をテーブルに置き、「問い」を立てることにあると考えられます。

「その人の本当の想い(設計思想)と照らし合わせてどう感じるか?」
「この合理的な答えは、本当にその人の望む未来(ビジョン)につながるか?」

AIが「それっぽい答え」を出す存在ならば、人間は「検証」し、「翻訳」し、かつ「本質に迫る問いを立てる存在」になるのでは、と思われます。

AIが作った「答え」を検証・解明するだけでなく、その人自身もまだ言葉にできていない「心の奥底にある理想(設計思想)」を対話によって引き出し、それを未来の”より正しい新しい設計図”として共に描き上げていく。

AIというツールを使いつつ、その人の想いに共感し、そのビジョンを実現するための「共創者」として伴走すること。

AI時代に人間の専門家が提供する独自の価値を考えてみると、AIのロジックを超えた「本質的な対話」と「ビジョンへの共感」であると考えられます。

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この記事を書いた人

長崎で活動する
税理士、キャッシュフローコーチ

酒井寛志税理士事務所/税理士
㈱アンジェラス通り会計事務所/代表取締役

Gemini・ChatGPT・Claudeなど
×GoogleWorkspace×クラウド会計ソフトfreeeの活用法を研究する一方、
税務・資金繰り・マーケティングから
ガジェット・おすすめイベントまで、
税理士の視点で幅広く情報発信中

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