飲食店経営を左右する「FLRコスト」「投資回収期間」の知識

飲食店経営の鍵を握るのが、飲食業の三大コストと呼ばれる「FLRコスト」の管理と、出店時に不可欠な「投資と回収」の視点といわれています。

目次

飲食店経営の心臓部!FLRコスト

飲食業の経営状態を的確に把握し、利益をコントロールするために最も重要な指標が「FLRコスト」です。

これは飲食業の三大コストの頭文字を取ったもので、経営の根幹を揺るがす要素であると言っても過言ではないといわれています。

  • F (Food) : 原価(食材費やドリンクの仕入れ費)
  • L (Labor) : 人件費(スタッフの給与や社会保険料)
  • R (Rent) : 家賃(店舗の賃料)

事業を継続している多くの飲食店は、このFLRコストを適切に管理することで、安定した利益を生み出しています。

利益の分かれ道「FLR比率」

FLRコストを語る上で最も重要なのが、売上全体に対してFLRコストが占める割合を示す「FLR比率」です。

そして、この比率の適正水準は「70%以内」が理想とされており、金融機関、経験豊富な経営者の間において、お店の経営状態を測る「共通言語」として広く使われているものです。

この「FLR比率70%」という基準は、長年の飲食業界の中で確立されてきた「経験則」であり、経営を成功させるための重要な指標です。

飲食業においては、FLR以外にも例えば下記のような「その他の経費」がかかります。

  • 水道光熱費
  • 広告宣伝費(グルメサイト掲載料など)
  • 消耗品費(おしぼり、洗剤など)
  • 通信費、決済手数料、修繕費 など

これらの「その他の経費」は、飲食業において、一般的に売上の「15%~20%程度」を占めます。
FLR比率を70%に抑えることによって、営業利益を10%確保することができ、経営を安定させ、次の投資をも考えられる健全な水準を確保できます。

項目売上に対する比率説明
売上 100%
FLRコスト△70%原価(F):30%、人件費(L):30%、家賃(R):10%の合計。
その他の経費△20%水道光熱費や広告宣伝費など。
営業利益 10%お店の手元に残る利益。

「投資と回収」の視点

飲食店を開業するには、高額な初期投資が避けられません。

そこで重要になるのが、出店にかける費用を「投資」と捉え、その投資を何年で「回収」できるのかを計画する「投資と回収」という考え方です。

投資回収年数、その計算方法と考え方

「投資回収年数(投資を何年で回収できるか)」は、以下の計算式で算出できます。

投資回収年数 = 初期投資額 ÷ 年間回収金額(キャッシュフロー)

  • 初期投資額: 物件取得費、内装工事費、厨房機器費、ライセンスなど、店を開けるために必要なお金の合計です(運転資金は含みません)。
  • 年間回収金額(キャッシュフロー): 簡単に言うと「その店が1年間で生み出す現預金」のことで、「経常利益」+「減価償却費」のことです。

この計算により、”この投資は何年で元が取れるのか”ということを、客観的な数字で判断できるようになります。

投資回収年数の目安「居抜き1年、スケルトン3年」

投資回収年数には、物件の種類に応じた目安があります。

物件タイプ回収年数の目安なぜ、この年数が目安なのか?
居抜き物件1年・既存の内装や厨房設備が使え、初期投資を大幅に抑えられる。
・投資額が少ない分、早期の回収が期待できる。
・1年で投資を回収できれば、2年目以降に生み出す利益は既存サービスの向上や次の事業展開へ再投資しやすく、経営の安定と成長のスピードが上がる。
スケルトン物件3年・内装が何もない状態から店を造るため、デザインの自由度が高い。
・工事費用がかさみ、初期投資が高額になる。
・飲食業界のトレンドや競争環境は短期間で大きく変化する可能性があり、「3年」以内に投資を回収できなければその後の経営リスクが高まる。
※「3年」:事業の持続可能性を判断する一つの基準とされる。

継続的に利益を生み出すための3つの鉄則

FLR比率を毎月算出し、「黄金比70%」を死守する

感覚的な経営から脱却し、毎月必ず「FLR比率」を確認して、店の”健康状態”を数字で把握しましょう。

もし比率が悪化しているようであれば、F(原価)、L(人件費)、R(家賃)のどこに問題があるのかを分析し、迅速に対策を打つことが、利益を守る(=事業を継続していく)ための絶対条件となります。

出店時は必ず「投資回収計画」を立て、客観的に判断する

”この場所なら成功しそうだ”という希望的観測だけで高額な投資を決断するのは危険とです。

物件を決める前にその投資額を何年で回収できるのかを必ずシミュレーションし、 目標とする回収年数をクリアできるかどうか、よく検討する必要があります。

常に「改善」を続け、数字を動かす努力をする

FLRコストも投資回収計画も一度決めたら終わりではなく、より良い条件の仕入れ先を探して原価(F)を改善する、オペレーションを見直して生産性を上げ人件費(L)を最適化するなど、日々の地道な改善努力が、結果として利益体質の強い店を作り上げることにつながります。

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