小さな店が顧客の心をつかむための集客について考える⑤

市場が飽和し、変化のスピードが加速する現代において、小さな店が生き残るためには、これまでの「業界の常識」を疑い、競争のルールそのものを変えることが第一歩。あえて立地のセオリーを外して固定費を抑える「守りの戦略」、顧客の”自己投資”の心理を掴む「攻めの戦略」を組み合わせることで、価格競争を回避しつつ熱心なファンを増やす考え方について。

中谷嘉孝著「リピート率90%超!あの小さなお店が儲かり続ける理由」(株式会社クロスメディア・パブリッシング)を参考として。

目次

「立地」と「借金」の常識を疑う:負けない経営の土台

多くの開業者は、人通りの多い駅近やロードサイドなどの好立地を求め、多額の初期投資と毎月の重い家賃負担を背負ってスタートします。

しかしながら、人口減少が進み、ネットで情報を得るのが当たり前になった現代において、この従来型の”一等地に店を構える”という考え方は、大きなリスクを伴います。

小さな店が不況にも揺らがない”負けない経営”を実現するためには、以下の視点を持つことが重要です。

家賃という固定費をなくす:損益分岐点を下げる

中心部での高額な賃料での経営ではなく、郊外であっても「持ち家(店舗兼住宅)」を活用する、あるいは中古物件をリノベーションするなどして、住居費と店舗賃料の両方を圧縮することを検討したほうがよいと考えられます。

テナント賃料負担がなければ、損益分岐点を極限まで下げることができます。

これにより、”今月の家賃のために、値引きしてでも客を呼ばなければならない”という悪循環から脱却でき、売上の変動に左右されない精神的に余裕のある強い経営体質が生まれます。

店舗においてこだわりたいのは「シチュエーション」

重視すべきは立地の便利さよりも、その場所が持つ「シチュエーション(薫り)」であると考えられますす。

「海が見える」「美しい並木道がある」「隠れ家のような静けさがある」といった、景色や風情そのものが強力な来店動機となります。

アクセスが少し不便であっても、その場所の空気が特別であれば、顧客はわざわざ足を運びたくなります。

”そこに行くこと”自体が小旅行のような価値を持ちます。

”生活臭”を徹底して排除する:店舗は「お客様との価値交換のための神聖な場所」

自宅や持ち家を活用する場合、最も注意すべきなのが”生活臭”であると考えられます。

慣れ親しんだ空間には、住んでいる人間には気づかない生活の匂いや雰囲気が漂いやすいものです。

しかし、お客様とお金のやり取りをする店舗は、生活とは一線を画した「神聖な価値交換の場所」です。

デザインや動線を工夫し、プライベートな気配を完全に遮断すること。

非日常を提供できなければ、顧客は夢を見ることができずに、対価を支払う気持ちになれないことを肝に銘じる必要があります。

”実質借金”こそが会社の免疫力を下げる要素

できるだけ低金利で借り、なおかつ手元に現金を厚く残しておくことで、精神的な安心を得ることができ、不測の事態(天変地異やパンデミックなど)にも耐えうる体力を温存できます。

”生活の財布”と”自己投資の財布”

産業には、景気や社会情勢に左右されやすい「衰退産業」と、不況下でも伸び続ける「成長産業」とがあります。

小さな店が価格競争に巻き込まれず高単価を実現するためには、顧客が持つ”2つの財布”の性質を意識しておく必要があります。

顧客が持つ”2つの財布”の違いと戦略

特徴生活の財布自己投資の財布
対象産業衰退産業(供給過多・日用品)成長産業(美・健康・教育など)
購買動機必需品、節約志向、仕方なく払うときめき、夢、悩み解決、未来への期待
価格感度1円でも安さを求める価値を感じれば高くても喜んで払う
景気影響強く受ける(ガソリン代が上がれば節約される)受けにくい(自分への投資は削らない)
時間の価値時短・効率重視質の高い時間の享受

価値交換のカギは、「時間のコントロール」

時代が変わっても、価値交換の本質的な鍵は「時間のコントロール」にあるとされます。

例えば、アンチエイジングのように「老化(時間)を遅らせる」こと、一時的な美しさではなく「時間をかけて本質的な魅力を育てる」ことにこそ、高い価値が生まれるという考え方です。

単なる時短やタイパではなく、「顧客の人生の時間そのものを豊かにコントロールしてあげられるかどうか」が、高単価サービスの条件へとつながっていくと考えられます。

”会員制ビジネス”という発想

どれだけ良いサービスを提供していても、”いつ客が来るかわからない”という「待ちの姿勢」は、経営ではなくギャンブルに近い不安定な状態になってしまいます。

天気や競合店の動向に一喜一憂せずに、安定した収益と信頼関係を築くための着地点としては、完全予約制など会員制ビジネスであると考えられます。

未来の売上を確定させる「仕組み化」

会員制ビジネスの肝は、来店時に「次回の予約」を習慣化していくことにあります。

これにより、翌月、翌々月の予約が埋まり、数ヶ月先まで売上が見通せるようになります。

売上のメドが立てば、過度な集客広告を打つ必要も在庫を抱えすぎるリスクもなくなるのです。

結果、経営者は目の前の顧客へのサービス提供に100%集中でき、顧客満足度がさらに向上するという好循環が生まれることになります。

会員制ビジネス=お店は「会員のためのもの」である

会員制というのは、単にお店が安定するためのシステムという捉え方ではなく、その中心は、「会員を守るための覚悟」にあります。

一見客からの問い合わせが殺到しても、既存の会員枠を最優先に考えて、その確保のためには丁重にお断りする。

そうした「”会員”ファースト」の徹底した姿勢があればこそ、顧客はお店を信頼し、生涯のパートナーとして選び続けてくれることになります。

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この記事を書いた人

長崎で活動する
税理士、キャッシュフローコーチ

酒井寛志税理士事務所/税理士
㈱アンジェラス通り会計事務所/代表取締役

Gemini・ChatGPT・Claudeなど
×GoogleWorkspace×クラウド会計ソフトfreeeの活用法を研究する一方、
税務・資金繰り・マーケティングから
ガジェット・おすすめイベントまで、
税理士の視点で幅広く情報発信中

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