”あなたから買いたい”は最高の褒め言葉。ネット時代にあえて「人から買う意味」を考える

インターネットで何でも手に入る時代。価格や性能を比較し、合理的にモノを選ぶのが当たり前になりました。一方で、効率だけでは測れない「人から買うこと」の意味と価値について考えてみました。

目次

「モノ」ではなく「体験」を、そして「誰から買うか」が価値になる

かつては、私たちは「何を持つか」というモノ消費を重視してきました。

より良い性能、より有名なブランドの製品を持つことが一つのステータスでした。

やがて時代は移り、その商品を通じて何ができるか、どんな気持ちになれるかという「コト消費(体験価値)」が注目されるようになりました。

そして今、インターネットやAIで情報もモノも溢れる時代だからこそ、私たちは新たな価値基準を持ち始めているようにも感じます。

それは「ヒト消費」、つまり”誰から買うか”に価値を置く考え方です。

例えば、こだわりの万年筆を探しているとした場合、ネットでスペックやレビューを比較して人気の1本を買うのも一つの方法です。
一方で、知識豊富な店主のいる文房具店に足を運び、「あなたの書く文字の癖や、どんな時に使いたいですか?」といった対話を重ねながら、数ある中から最適な1本を選んでもらう。
この”「選ぶ時間」そのもの”が、購入したことそのもの、選び吟味する過程、あるいは、購入した万年筆への愛着を体験価値として深めてくれます。

商品を手に入れるまでのプロセスや、そこに介在する「人」とのコミュニケーションが、購入体験全体を豊かにする重要な価値となっているのです。

なぜ私たちは「人」を選ぶのか?AIには真似できない3つの価値

では、なぜ私たちはアルゴリズムによる的確なレコメンドや、ワンクリックの利便性を超えてまで、「人」から買うことを選ぶのか。

そこには、AIや単なるネット販売では決して真似のできない、”人間ならではの価値”が存在するように思います。

その価値を3つに整理してみます。

  1. 予期せぬ発見と出会い(セレンディピティ)
    自分の好みや過去の購入履歴から提案されるネットのオススメは非常に便利です。しかし、それはあくまで「過去の自分」の延長線上にあります。一方、経験豊かなプロは、私たちの潜在的なニーズや、自分でも気づいていない好みを引き出し、「こんな世界があったのか!」という予期せぬ発見をもたらしてくれます。それは、自分の検索スキルだけでは決して辿り着けない、嬉しい驚きとの出会いです。
  2. 深い共感と納得感
    「なんだか分からないけど、モヤモヤする」「こんな感じのものが欲しいんだけど…」といった漠然とした想いを、的確に言語化し、形にしてくれるのがプロの対話です。スペック表を眺めるだけでは得られない、「そうそう、これが欲しかったんだ!」という心の底からの納得感。この深い共感こそが、購入の満足度を決定づける重要な要素となります。
  3. 購入後の安心感と信頼関係
    モノを買うという行為は、支払いが終われば完了ではありません。特に高価なものや、長く使うものであればあるほど、「この後どう使えばいいの?」「もし困ったことがあったら?」といった不安がつきまといます。そんな時、「何かあったら、いつでも私に聞いてください」と言ってくれる担当者の存在は、何物にも代えがたい安心感に繋がります。売って終わりの関係ではなく、購入後も続くパートナーとしての信頼関係こそが、人から買う大きな価値なのです。
観点ネット購入対人購入(優れたプロから)
提案の質過去のデータに基づく最適化予期せぬ発見、潜在ニーズの掘り起こし
納得感スペックやレビューによる論理的な納得対話による深い共感と感情的な納得
購入後自己責任での情報収集担当者への相談という安心感と継続的な関係

これからの営業は、顧客の人生に寄り添う”伴走者”

ここまで見てきたように、私たちが「人から買う」ことに価値を見出すのは、そこに予期せぬ発見深い共感、そして長期的な信頼があるためです。

つまり、これからの時代に求められる営業や販売のプロフェッショナルは単なる「売り手」ではなく、顧客一人ひとりの価値観やライフスタイル、時にはその人の人生観まで理解しようと努め、その人生がより豊かになるための提案ができる”最高のパートナー”や”人生の伴走者”である必要があります。

例えば、資産運用を相談するファイナンシャルプランナーを想像してみた場合、ただ利回りの良い商品を勧めてくる人よりも、こちらの家族構成や子供の将来の夢、自分たちの老後の過ごし方まで実に丹念に親身にヒアリングし、「5年後、10年後を見据えると、こちらのプランがご家族の夢を叶える一番の近道ですよ」と提案してくれる人の方が、心から信頼できます。

私たちは、モノが欲しいのではなく、そのモノを通じて得られる”より良い未来”や、”より豊かな感情”が欲しいのです。

「何を」買うかだけでなく、「誰から」買うか。

そんなことを考えてみるだけで、買い物は単なる消費活動ではなく、人生を彩る忘れられない素晴らしい”体験”になりうると感じることができます。

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