カカオ豆からチョコレートになるまで、どのような工程があるのか。
株式会社明治チョコレート検定委員会監修「チョコレート検定 公式テキスト 2024年版」(Gakken)を参考にして。
※イラストは、AIツール(Imagen3)を使用して作成しています。
目次
カカオ豆からチョコレートになるまでの工程
STEP
原料の受入れ
STEP
選別(クリーナー)
- 悪い豆、石、砂、ごみなどの異物を取り除く
- 風選、比重選別、マグネットなどによる磁性金属除去を用いる
- 品種ごとにサイロに貯蔵される
STEP
ロースト
- 100~140℃の熱を加え、カカオ豆独特の香りと風味を引き出す
※チョコレートの香りはローストにより決まるといわれる - 焦げる寸前のところでロースターを止める必要があり、非常に難しい
- ローストによって生じる香りの成分は1000種類以上ある
- ロースト方式①「豆ロースト法」(そのままロースト)
※殺菌は、クリーニングされたカカオ豆が水蒸気で数秒間殺菌され、その後乾燥してからローストされる - ロースト方式②「ニブロースト法」(豆を粗く砕き種皮を除いたカカオニブ状態でロースト)
※殺菌は、ローストの途中でローストドラムへ水蒸気を吹き込むことで殺菌とローストが同時に行われる - ロースターの上部の開閉式の棚に載せられ、上から下へ移動する過程で熱風で加熱ローストされ、すぐに冷却される
※豆ロースト法の場合、その後に種皮と「カカオニブ」とに分離される
STEP
分離(皮を取り除く)
- ウィノワという装置により、カカオ豆を粗く砕き、種皮(シェル)等を取り除き、「カカオニブ」を取り出す(ウィノーイング(風選))
- シェルと「カカオニブ」をさらにふるいによって分離していく
(風によりシェルは上へ、カカオニブは粒の重さで下へ)
STEP
磨砕
- 「カカオニブ」を細くすりつぶし、ペースト状の「カカオマス」となる
- カカオニブは繊維質が多く堅いため、装置により粉砕していく
- カカオニブに含まれるココアバターにより、粘度のある液体となる
- ボールミルにカカオマスが供給され、撹拌羽根が鉄球を動かすことによって、通過するごとに微細に粉砕される
- カカオマスはタンクに貯槽され、チョコレートやココアの原料となる
STEP
混合
- 「カカオマス」に砂糖・ココアバター・ミルクなどを混合する
- チョコレートのレシピに応じ、各原料を計量する
STEP
微細化
- 「レファイナー」という装置で生地を微細化することで、チョコレート粒子の大きさが20ミクロン以下に(人間がざらつきを感じない大きさ)
- ロールが密着しているそれぞれの隙間で引きちぎられるように粒子が粉砕されていく
- ペースト状からフレーク状へ変化していく
STEP
精錬(コンチング)
- 「コンチェ」というチョコレート処理装置により、チョコレート生地を長時間練り上げる(コンチング)
※元々の装置がコンチ貝に似ていたことから命名される - ”練る”と”粉砕する”を同時に行う
※現在では、レファイナーの性能が上がり、コンチェは練るのみとなっている - コンチングによって水分蒸発が促進され、酢酸も蒸散され、揮発させることも役割のひとつ
- ただし、揮発性の高い香気成分も失われてしまうため、バランスを調整する必要がある(メーカーごとの独自の考えで設定される)
- 練り上げることで発生する熱によって、キャラメルのような香味を生成することができるとされる
- コンチングによる化学的変化の詳細は未解明な部分が多い
- コンチングの主目的は物理的変化を得ることであり、化学的変化は後工程の別装置で行われることも多い
- コンチングはランニングコストが高く、できるだけ短時間でコンチングを終了させたほうが経済効率性が高い
STEP
調温(テンパリング)
- 「テンパリング」=テンパリングマシンにより、チョコレートの温度を調節し、ココアバターを安定した結晶にする
- 株から共有されたチョコレートが撹拌されながら冷却ゾーンを通過していく
- その後、加熱ゾーンへと導かれ再加熱される
- テンパリングにより、型から隔離でき、艶のある見た目と口溶けのよいチョコレートができる
STEP
充塡
- 「モールダー」により、型にチョコレート生地を流し込む
- 型を激しく振動させて気泡を除く
STEP
冷却
- クーリングトンネル内のコンベアに乗せて冷やし固める
- 冷却初期はゆっくり冷やし、冷却第2段階では強制冷却し、チョコレートの固化を促進する
- 冷却の最終段階では、少しの温度上昇を行う
- 温度管理をしっかり行うことで、ファットブルームとシュガーブルームを防ぐことができる
STEP
型抜
- 「デモールダー」という機械で型を裏返し、チョコレートを剥がす
STEP
検査・梱包
- 「ラッピングマシン」でチョコレートをアルミ箔やレーベルで包装し、段ボールケースに箱詰めする
STEP
出荷
- 倉庫で、一定期間、熟成(エージング)させ、溶けないよう温度管理された状態で各店舗に運ばれる
※発酵のポイント
- カカオ豆はカカオポッドから取り出され、パルプに包まれた状態で発酵処理に移される
- 微生物の働きが重要となる
- 微生物の最適な培地となるのがパルプ
- パルプには水分・糖分が豊富に含まれており、微生物が繁殖しやすい
- カカオ豆は、バナナの葉で包まれたり、木箱に入れて上面にバナナの葉を敷き詰めたりし、数日間放置することで発酵させる
- 発酵初期(1~2日)にはパルプが覆っているなかで数種類の「酵母」「嫌気性細菌」が優先的に繁殖し、パルプ内の糖類からエタノールを生産し、果物の粘り気のある成分となるペクチンを分解する酵素を分泌する→パルプが分解されていくことで空気が生じ、「好気性細菌」が繁殖しやすくなり、「乳酸菌」・「酢酸菌」が出現する→酢酸を産生する過程で大きな発熱を伴い、酢酸と熱によって死滅して発芽しなくなり、カカオ豆の内部のでんぷんやタンパク質が細胞の外へ放出されて、酵素や微生物によるで分解により糖とアミノ酸が生成される→「芽胞細菌」が増殖する→「糸状菌」が表面に表れる
※培地となるパルプの状態が影響する