チョコレートは繊細な食べ物であり、かつ、取り扱う場合の表示においても留意点があります。
株式会社明治チョコレート検定委員会監修「チョコレート検定 公式テキスト 2024年版」(Gakken)を参考にして。
ブルーム現象
「ブルーム現象(ブルーミング)」とは、湿度や温度の変化によりチョコレートの表面に白い粉のようなものをふいたり斑点状のものができ、風味が損なわれたり口どけが悪くなる現象です。
これには、ココアバターと砂糖が関係しているといわれています。
ファットブルーム(ココアバターが原因)
ココアバターは25℃ほどで溶け始め、そのまま冷やされると結晶が粗大化し、表面が白く見えるようになります。
以下が原因で起こりやすいとされます。
- 保存する環境の温度が適切ではない
- テンパリングが不十分
- 長期保存や素材との組合せがよくない
シュガーブルーム(砂糖が原因)
暖かい場所に移すとチョコレートの表面が結露し、中に含まれている砂糖が水分へと溶け出してその水分が蒸発すると、砂糖がチョコレートの表面で結晶化するようになります。
購入時、開封後、保存上の注意点
- 直射日光が当たる場所に置かない
- 高温になる場所に置かない
- 温度管理がされていない場所に置かない
- チョコレートは、周囲のにおいや湿気を吸収しやすいため開封したら早めに食べる
- 水分を含むチョコレート(生チョコレート、ボンボンショコラなど)は、賞味期限が短いため早めに食べる
- 推奨保存温度を確認する(板チョコの場合、15~18℃が理想)
- 一度柔かくなってしまったチョコレートは急激に冷やさない
- ラップやアルミで包んだ上で、インクなどのにおいのしない包み紙やクッキングペーパーで包み、ジッパー付きポリ袋に入れて保存することで、においの吸着や乾燥や結露を防ぐ
表示規約・表示上の注意点
チョコレートの規格基準については、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」が制定されており、様々なポイントが定められています。
「チョコレート生地」とは
チョコレート生地とは、製造前のドロドロに溶けているチョコレートや、原料として固まっている状態のことをいいます。
準チョコレート生地とは、チョコレート生地よりもカカオ分の比率が低く設定されており、チョコレート生地に比べてカカオの風味が乏しくなることになります。
規約では、カカオ・ココアバター・脂肪分・乳固形分・水分によって、以下のように分類されています。
区分① | 区分② | カカオ分 | (うちココアバター) | 脂肪分 | 乳固形分 | (うち乳脂肪) | 水分 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
チョコレート生地 | 基本 | 35%以上 | (18%以上) | - | 任意 | 任意 | 3%以下 |
乳製品タイプ | 21%以上 | (18%以上) | - | 35%以上 (カカオと合わせて) | (3%以上) | 3%以下 | |
ミルクチョコレート生地 | 21%以上 | (18%以上) | - | 14%以上 | (3%以上) | 3%以下 | |
準チョコレート生地 | 基本 | 15%以上 | (3%以上) | 18%以上 | 任意 | 任意 | 3%以下 |
準ミルクチョコレート生地 | 7%以上 | (3%以上) | 18%以上 | 12.5%以上 | (2%以上) | 3%以下 |
「チョコレート類」とは
規約では、「チョコレート類」を以下のように分類しています。
- チョコレート
→生地単独or生地比率60%以上の加工品 - 準チョコレート
→生地単独or生地比率60%以上の加工品 - チョコレート菓子
→チョコレート生地60%未満 - 準チョコレート菓子
→準チョコレート生地60%未満 - カカオマス
→カカオ豆をローストしてすりつぶしたもの - ココアバター
→カカオ豆中の油脂。通常約55%含まれている。 - ココアケーキ
→カカオマスからココアバターを一定量取り除いて固形ブロック状にしたもの - ココアパウダー
→ココアケーキを粉砕して粉末状にしたもので水分7%以下のもの - 調整ココアパウダー
→ココアパウダーに糖類、乳製品、麦芽、ナッツなどを加えたもの
「チョコレート加工品」とは
「チョコレート加工品」とは、チョコレート生地(準チョコレート生地)+ビスケット・ナッツなどのことをいいます。
チョコレート生地(準チョコレート生地)が全重量の60%以上の場合、「チョコレート」「準チョコレート」という扱いとなるとされます。
チョコレート生地(準チョコレート生地)が全重量の60%未満の場合、「チョコレート菓子」となるものとそうでないものとがあるとされます。
具体的には、「チョコレート加工品」としては以下のようなものが挙げられています。
- チョコレート生地(準チョコレート生地)に、可食物が練り込まれているもので、重量割合が40%以上のもの
※例:パフチョコ - チョコレート生地(準チョコレート生地)に、可食物が内部に入れてあるもので、重量割合が40%以上のもの
※例:シェルチョコ - チョコレート生地(準チョコレート生地)に、可食物が内部が入って覆っているもので、重量割合が20%以上のもの
※例:ナッツチョコ - チョコレート生地(準チョコレート生地)に、可食物が内部が入って覆っているもので、重量割合が30%以上のもの
※例:糖衣チョコ - チョコレート生地(準チョコレート生地)と可食物が接合しているもので、重量割合が30%以上のもの
※例:ウェハースチョコ
「純チョコレート」「ミルクチョコレート」「準ミルクチョコレート」「生チョコレート」の違い
純チョコレート | チョコレート生地のみで作られたもの ※カカオ成分:ココアバターのみorココアバターとカカオマスのみ ※脂肪分:ココアバターと乳脂肪のみ ※糖類:砂糖のみ・使用料は全重量の55%以下 ※乳化剤(レシチン):全重量の0.5%以下 ※レシチンとバニラ系香料以外の添加物は使わない |
---|---|
ミルクチョコレート 準ミルクチョコレート | ミルクチョコレート生地・準ミルクチョコレート生地の基準を満たしたものを使用していること |
生チョコレート | ・チョコレート生地が全重量の60%以上 ・クリームが全重量の10%以上 ・水分が全重量の10%以上 ※生チョコレートを全重量の60%以上使用し、かつ、チョコレート生地の重量が40%以上60%未満であるチョコレート加工品は、チョコレート菓子という種類別名称となる。 |
ナッツ類、果物類などの表示
使用していることを表示する場合、以下の分量と定められています。
- ナッツ・果物類→製品重量の生換算5%以上
- 蜂蜜・メープルシロップ・黒砂糖→全重量の2%以上
- コーヒー→コーヒー生豆換算で全重量の1.5%以上
”たっぷり”・”豊富”の表示
規定の基準量の2倍以上の量を使用している必要があるとされています。
表示が義務となっている事項
- 種類別名称
- 原材料名
- 内容量
- 賞味期限
- 保存方法
- 原産国名
- 食品関連事業者
- 事故品を取り替える旨の表示
- アレルギー物質を含む原材料の表示
- 栄養成分表示
- 原料原産地名
- 分別回収のための識別マークの表示
- (チョコレートドリンク)飲用上の注意・希釈倍数の表示
表示が禁止されている事項(不当な表示)
- チョコレートが、他の食品に比べて実際よりも著しく優良であるかのように誤認させてしまう表示
- チョコレートなどの定義・規格に合致しないにもかかわらず、合致しているかのよう誤認させてしまう表示
- 生チョコレートの基準に適合しないチョコレートなどに「生」の文言を使用し、他の食品に比べて実際よりも著しく優良であるかのように誤認させてしまう表示
- 果物類の香料を使用しているのみにもかかわらず、果物類そのものを使用しているかのように誤認させてしまう表示
- 純チョコレートの基準に適合しないチョコレートなどに、「純」「純良」「Pure」などの文言を使用し、他の食品に比べて実際よりも著しく優良であるかのように誤認させてしまう表示
- 客観的根拠に基づかないまま、「最高級」「極上」「ナチュラル」「天然」「自然」「新鮮」「フレッシュ」「特濃」「濃厚」などの文言を使用し、他の食品に比べて実際よりも著しく優良であるかのように誤認させてしまう表示
- チョコレートに使用した可食物について、実際よりも著しく優良・著しく多く・著しく少なく含まれているかのように誤認させてしまう表示
- 賞・推奨などを、受けていないにもかかわらず受けているかのように誤認させてしまう表示
- 官公庁・神社・仏閣などの団体が推奨しているかのように誤認させてしまう表示
- チョコレートの価格・取引条件・景品の品質・内容などについて、実際よりも著しく優良であるかのように誤認させてしまう表示
- 内容物の保護・品質保全の限度を超えて著しく過大な包装で、外部から容易に識別できないようになっているもの
- 輸入品でない・国産でないにもかかわらず、それぞれそうであるかのように誤認させてしまう表示
- 他商品を誹謗中傷する表示
- 伝統・歴史・生産規模・販売量などの信用表示において、実際よりも他社と比較して著しく優位であるかのように誤認させてしまう表示
- チョコレートの商品名・商標・意匠などにおいて、他社と同一あるいは著しく類似した表示