組み立てる手間のかかる家具ほど、なぜか愛着がわく。
自分で焼く料理ほど、なぜか満足度が高い。
一見すると不思議なこの現象の裏には、これからの時代の商売を左右する仕組みが隠れているのかもしれません。お客様自身に一部の工程を担っていただくというこの発想、コストの圧縮と顧客満足を同時にかなえる可能性を秘めているのです。ただし、やり方を間違えると、単なる手抜きに見えてしまいます。
事業家bot著「金儲けのレシピ」(実業之日本社)を参考にして。
ビジネスモデルあれこれ
- 集客より関係性、LTVが商売の土台
- 消費者から購入する
- セルフサービス
- スケールメリット、スモールメリット
- 「1対多」
- 両面に課金する
- 砂糖を売る
- 確率を設計する
- 雰囲気を売る
- 意思決定を支援する
- 仕入れを工夫する
- 贈答品を売る
- 高くて良いもの
- 権威になる
- コアファン共鳴型
- 仕組みそのものを売る
なぜ「自分でやった」は満足に変わるのか
まずは、手間をかけてもらうことが、なぜ不満ではなく満足につながるのかを見ていきます。
手間の分だけ、愛着が生まれる
人は、自分が手をかけたものに対し、実際の出来栄え以上の価値を感じやすいといわれています。
完成品を渡されるよりも、自分で組み立てた家具のほうが、多少のゆがみも含めて愛おしく感じる。
行動経済学の世界では、こうした傾向は「イケア効果」と呼ばれることもあります。
労力をかけた分だけその対象を高く評価してしまうという人間の心の働きです。

参加が、思い出に変わる
手を動かす過程そのものが、体験の一部になることもあります。
家族や仲間と肉を焼きながら囲む食卓は、調理済みの料理を運ばれるよりも記憶に残りやすかったりします。
あるいは大皿を囲んで自分で取り分けるスタイルで親しまれてきた料理などのように、自分の手を動かすという行為は、それ自体が満足の源になり得るのです。
つまり、提供する側がすべてを完璧に仕上げることだけが、満足への道ではないということ。
手間を委ねると、コストと満足が同時に動く
この”自分でやる満足”を、経営の数字の視点から捉え直すと、見え方が変わってきます。
同じ行為でも、設計思想によって価値が反転する
工程の一部をお客様に担っていただくと、その分の人件費は抑えられます。
人件費は、多くの商売で最も重い固定費、つまり売上に関わらず毎月かかる費用の一つです。
ここを「コストを削るためにお客様にやらせる」と捉えると、サービスの質を下げているように見えてしまう。
ところが同じ行為でも、「お客様が主役になれる体験を提供している」と設計すると、それは価値に変わるのです。
やっていることは同じでも、込める思想が正反対なのです。
コストを下げながら、満足を上げる
利益を増やす道は、大きく分けて、売上を増やすか、コストを減らすかの二つです。
顧客参加型の設計がおもしろいのは、コストを減らしながら、同時に体験価値を通じて満足やリピートを高められる点にあります。
一人のお客様が生涯にわたってもたらす利益、いわゆるLTV(顧客生涯価値)を押し上げる効果も期待できるでしょう。
「コスト削減」と「顧客満足」はしばしば相反するものとして語られますが、設計次第では両立させられるのです。

ただし、何でも委ねればいいわけではない
もちろん、手間がそのまま苦痛になる設計では逆効果になってしまいます。
お客様にとって、その作業が楽しさや達成感、あるいは納得につながるかどうか。
そこを見極めないまま負担だけを押し付けてしまうば、満足どころか不満が募ります。
事業で、お客様が主役になれる工程はどこか
では、この発想を自分の商売に引き寄せると、どこから手をつけられるのか。
”触れてもらう”ことが価値になる工程を探す
例えば、会計の現場では、お客様自身に、領収書や請求書を月ごと・支払い方法ごとに整理して保管していただく流れを取り入れることがあります。
これは単に作業を肩代わりしてもらうためではありません。
お客様が自分の数字に直接触れることで、お金の流れへの感度が高まり、打ち合わせの中身が一段と深くなるからです。
提供する側は単純な入力作業を減らし、その時間を財務の対話という付加価値に振り向けられる。
コストの圧縮と、お客様自身の成長が、同時に進む構造になるのです。
「やらせる」ではなく「主役にする」と言い換える
お客様に工程を委ねるとき、言葉を「作業させる」から「主役になっていただく」へ置き換えてみる必要があります。
そうすることで、設計の問いそのものが変わります。
”どうすればその工程が、お客様にとって達成感や学びのある時間になるか。”
その視点で自社の流れを見直すと、思わぬところに、満足とコスト削減を両立させる余地が見つかるかもしれません。
自社の提供工程を一度書き出し、「ここはお客様が主役になれるかもしれない」という箇所を見つけてみるとよさそうです。
手間は、押し付ければ不満になり、楽しんでもらえればファンを生みます。
その境目をどう設計するかに、これからの事業の面白さが詰まっているようにも思います。

