AIは前提を守り、人間は前提を疑う―違いが生むそれぞれの価値―

AIは、人間の指示に忠実に、瞬時に回答を生成します。とはいえ、その答えは本当に正しいのか考える必要があります。
その”差”は多くの場合、「前提」から生じると考えられます。

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税務の質問から考えた、AIと人間の”差”

先日、ある税務相談で、「この契約書の印紙税はいくらか?」という質問がありました。

聞かれて返答した後、契約書の内容自体もタイトルとのギャップもなく実にシンプルな質問であるようにも感じたので、生成AIに答えられるかどうかを試してみることにしました。

生成AIはうまく回答してくれましたが、惜しいところで間違っており、まだ実用段階ではないようは感じました。
ただ、これは数年かければ正確な回答をする可能性も大いにあるように感じました。

一方で、自分の返答とは決定的に異なる点がありました。
それは、そこに「電子契約なら印紙税は不要ですけど、電子契約にできるか検討されましたか?」という一言でした。

印紙税がいくらであるかどうかという質問とその回答はいずれ生成AIはうまく回答できるようになるかもしれないと感じる一方、この”そもそも電子契約はどうなのでしょう”という視点、小さいようで大きい差のようにも感じました。

AIは前提を遵守し、人間は前提を精査する

AIは、与えられた指示や前提条件を忠実に解釈し、答えを返す優れたツールといえます。

ただし、それは”与えられる前提が正しい場合”ということになります。

そもそもプロンプトとして入力する”前提”に疑義がある場合に、人間とAIとが示す反応はまったく異なるものとなります。

AIは、「指示された前提」を忠実に守ることが宿命づけられており、そもそもその前提が正しいかどうかといった視点は持ちえません。

人間は、「そもそもこの質問の前提が正しいのか?」と思うことができ、それを問い直すことができます。

ただし、AIに質問を投げかける際に、”この前提がそもそも合っているかどうか教えて”などといった前提質問を投げかけることも可能ではありますが、それでどこまでチェックが可能かどうか。

前提を整える、回答をチェックする、全体を見渡す

AI時代(少なくとも現状およびそこから少し先まで)、人間がどのような点に役割や価値を発揮できるのか。

  • 「前提」そのものを洞察し、本質的なリスクや別の視点を見つけ、整えること
  • AIから出てきた「回答」をチェックし、責任を持つこと
  • 全体を見渡し、バランスが取れているか感じ取ること

AI活用が進化するなかで、上記のような能力は、まだなかなかAIには代替することは難しいようにも思います。

一方で、前提が正しければ、その処理プロセスのスピード感は、人間はAIにはかないません。

また、AIの仕組みをおおむね知っておかなければ、出てきた「回答」をチェックすることができません。

これらから考えてみると、人間の役割、AIの役割が見えてくるような気がしています。

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