【AI時代の知識産業の価値変化】「正解」よりも「安心」が大切にされる?

AI技術の急速な進化は、これまで私たちが”価値がある”と信じてきたスキルの定義を書き換えようとしています。データ分析、資料作成、論理的な思考などこれらホワイトカラーの得意領域がAIに代替されつつある今、人間に残された役割とは何なのか。AI時代における「機能」から「情緒」への価値転換と、最後に残る「私の責任において」という考え方について。

目次

「正解」の提供から「安心」の提供へ

これまで、事業においては、”正確な情報を知っていること”や”論理的に正しい計画を立てること”が高く評価されてきました。

しかしながら、生成AIの普及により、これらの「機能的価値」がコモディティ化しつつあります。

「正解」はAIが瞬時に出す時代

上司への報告資料、市場調査、議事録の要約まで、AIは人間よりも速く、平均点程度の「正解」をすぐに出してくれるようになっています。

つまり、「知識がある」「処理能力が高い」というだけでは、もはや独自の価値を主張しにくい時代になっています。

では、人間の役割はどう変わるか。

それは、AIが出したアウトプットに対して、「文脈に即した安心感」を与える役割へのシフトです。

相手が求めているのは、”大丈夫”という言葉

上司や同僚、取引先が最終的に求めているのは、単なるデータではありません。

”この方向性で問題ないか?”という「不安を解消すること」です。

「AIで調べたデータも踏まえた上で、今の私たちのチーム状況なら、このプランがベストです!」

そう言って背中を押すこと、つまり「安心の提供」こそが、これからのビジネスパーソンにとって最大の付加価値になるということです。

価値の軸これまでのホワイトカラー
(「機能」重視)
これからのホワイトカラー
(「情緒」重視)
重視される能力・情報処理能力
・論理性
・知識量
・共感力
・文脈理解
・安心感の醸成
仕事のスタイル個人のスキルで”正解”を作るツールを活用し”納得解”を作る
相手への貢献課題を解決する方向性に太鼓判を押し、不安を取り除く

「コミュニケーションコスト」の低い”愛される仕事相手”へ

また、社会全体が透明化し、働きやすさが重視される中で、仕事における「人間関係のコスト」を下げることがとても重要になっています。

どれほど優秀でも、偏屈であったり、気難しくて話しにくかったり、わがままで他人を思いやれなかったりするような、コミュニケーションにコストがかかる人材は、静かに敬遠されていく傾向が生まれています。

”機嫌が良い”ことが最強のビジネススキル

ミスを必要以上に厳しく追及したり、論理で相手を常にやり込めたりしようとする態度は、現代のオフィス環境では避けられる傾向があります。

求められるのは、常にフラットで安定しており、話しかけやすい雰囲気を持っていること。

”あの人と仕事をするとなんだかスムーズに進む”・”気持ちよく働ける”という、言語化しにくい空気感(情緒的価値)を作れる人が、組織の中で重宝されるようになると思われます。

”スキル”よりも、”キャラクター”で選ばれる

機能的スキルでの差別化が難しくなっていく分、プロジェクトへ仕事そのものへの協力依頼は、「その人の人柄(キャラクター)」で決まるようになります。

  • 親しみやすさがある
  • 話しやすい
  • 相談しやすい
  • 話すと安心する
  • 素直で一生懸命に取り組む
  • 困った時に、まず顔が浮かぶ

いわゆる「愛嬌」や「人間味」といった要素は、これまでビジネスの”添え物”と思われがちでしたが、AI時代においては、「AIには代替できない、強力なインターフェース」として機能することになります。

AIにはできない、「決断」と「責任」の仕事

ここまで「情緒」や「愛嬌」の重要性を述べましたが、実務において人間が果たすべき大切な役割があります。

それは、AIのアウトプットに対して、「最終的な確認を行い、自分の言葉として届ける」ことであると考えられます。

AIに任せきりにしない

AIを活用して業務効率化することは素晴らしいことですが、もしミスが起きた際に「AIが出力したので…」と言ってしまう途端に、その人の価値がゆらぐことになってしまうことになります(では、最初からAIでよいのでは=代替、となってしまう)。

周囲は、その人に対し、AIの回答そのままではなく、その人の課題感や経験や現場感覚や思いに基づいた判断を求めているためです。

「AIを活用しつつ、私が判断しました」と言える姿勢にこそ、価値や信頼が置かれるというものです。

「素材」を「自分の意見」に昇華させる

これからのホワイトカラーの仕事は、AIが出した「80点の正解」をそのまま右から左へ流すことではなく、AIのアウトプットを積極的に”良質な素材”として捉えたうえで、そこに、人間ならではの付加価値を乗せていくプロセスになると考えられます。

  1. 検証する: AIの回答に間違いや偏りがないか、自分の目でチェックする。
  2. 意味を乗せる: 自分の課題感や、現場の空気感、個人的な思いを加える。
  3. 責任を持つ: 最終的に「私はこう考えます」とスタンスを明確にする。

AIという優秀な部下と協業しつつも、最後には自分の言葉で語ることこそが、AI時代における大きな価値になりそうです。

これからの働き方のバランス

これからのホワイトカラーは、以下の2つのバランス感覚が求められます。

  1. 普段のスタンス:威圧感を消し、周囲を安心させる「親しみやすい調整役」。
  2. ここ一番のスタンス:いざという時に決断し、責任を引き受ける「頼れるリーダーシップ」。

”周囲を考えずに正解を出すマシーン”のような働き方から卒業し、周囲の不安に寄り添いながら、最後は人間として責任を持って決断する。

そんな”体温あるビジネスパーソン”への進化が、AI時代を生き抜く最適解といえるかもしれません。

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この記事を書いた人

長崎で活動する
税理士、キャッシュフローコーチ

酒井寛志税理士事務所/税理士
㈱アンジェラス通り会計事務所/代表取締役

Gemini・ChatGPT・Claudeなど
×GoogleWorkspace×クラウド会計ソフトfreeeの活用法を研究する一方、
税務・資金繰り・マーケティングから
ガジェット・おすすめイベントまで、
税理士の視点で幅広く情報発信中

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