銀行では、融資申請する企業の決算書をどのように捉えているか。
諸留誕著「顧問先の銀行融資支援スキル 実装ハンドブック」(日本法令)を参考にして。
目次
銀行は決算書を修正して審査している
銀行では、融資申請する企業の決算書を精査し、実態に合うものへと変換したうえで融資審査を行います。
決算書の科目に対して、どのような視点をもっておくとよいか知っておいたほうがよさそうです。
資産の部
現金
- 残高が多額の場合、実態に即していないのではないか(決算書自体の信憑性を疑われる)
- 残高が多額の場合、費用とすべきものをあえて現金のままとして粉飾決算をしているのではないか
- 役員貸付金という科目を避けるため現金勘定を用いているのではないか
- 実際に手元に多額の現金を持っている場合でも、上記の疑いを持たれないために銀行に預け入れたほうが望ましい
- 実際に手元に多額の現金を持っている場合、経緯や理由を確認しておく
売掛金・受取手形
- 不良債権が混じっていないか
- 架空債権が混じっていないか(粉飾決算をしていないか)
- 2期分の内訳書を並べ、相手先・金額に変更がないものはないか
- 件数や金額が多い場合、別途銀行に明細を提示する
- 売掛金・受取手形が、月商の何ヶ月分あるか(回転期間)を、会社ヒアリングの入金サイトと照らし合わせる
- 同業他社に比べて残高が大きすぎないか
- 内訳書には、取引先の住所も記載する(実在を示すために)
棚卸資産
- 不良在庫が混じっていないか
- 架空在庫が混じっていないか(粉飾決算をしていないか)
- 過去の決算書と並べて金額推移を比較する
- 同業他社の在庫水準(棚卸資産回転期間)と比較する
- 在庫を多めに持つ必要があった場合、在庫明細・入出庫表を銀行に提示する
- 在庫の現物を見てもらう
貸付金
- 役員・親族・関係会社への貸付金がないか
- 会社に融資しても個人に流れるのではないか
- 長期貸付金になっている場合、返済を求める意思がないのではないか
- 金銭消費貸借契約書・返済予定表を作成し、毎月返済してもらう
雑勘定
- 仮払金・未収入金・前渡金・立替金・前払費用など
- 資産価値がないものが含まれているのではないか
- 本来は費用処理すべきものを利益を水増しするために雑勘定で処理していないか
- 不良債権・不良在庫・架空債権・架空在庫を隠すために雑勘定で処理していないか
- 内訳書に内容が明記されているか(未記載、不明瞭ではないか)
- 仮科目が決算書に載っていないか
有価証券
- 社長個人の判断で売買されていないか
- 投機目的ではないか
- 融資実行後に有価証券が増えていないか
- 取引先との関係強化のために株式を保有している場合には、固定資産に記載する
- 取引先への出資がある場合、その取引先の財務状態は大丈夫か
固定資産
- 法定限度額まで減価償却費は計上しているか
- 減価償却費の過少計上・未計上による粉飾決算を行っていないか
- 事業に使っている不動産かどうか・遊休不動産がないか
- 事業に必要か(華美すぎないか、立派すぎないか、高級すぎないか、放置されていないか)
- 業績が悪くなると、担保処分を見据えて時価評価される
保険積立金
- 解約返戻金相当額に沿って時価評価される
繰延資産
- 資産価値がないものと考える