融資申請の際には、借入希望額を記載する欄があり、どのように決めてよいのか迷いがちです。
諸留誕著「顧問先の銀行融資支援スキル 実装ハンドブック」(日本法令)を参考にして。
”いくら借りられるのか”とは聞けない(聞いてはいけない)
融資を申し込もうとする際、「借入希望額」を記載したり、伝えたりすることになります。
ここで、銀行に対して”いくら借りられるのか”と聞くと、”計画性がないのではないか”という印象を与えてしまうことになってしまいますし、基本的に聞いてはいけないものではあります。
自社の事業計画において、「いくら必要なのか」が明確になっているべきものだからです。
融資タイプの整理
融資といっても、資金使途や返済原資によって、主に以下のような項目に分けられます。
- 経常運転資金(継続的に事業運営していくために必要な資金)
- 増加運転資金(売上拡大を要因として必要となる運転資金)
- 設備資金(事業活動を行うために必要な設備を購入等するための資金)
”いくら借りられるのか”を自分で考えるには(増加運転資金)
一般的に、売上が増加していくと、その過程で連動して仕入や経費なども増えていくもので、この増加部分の必要資金につき、「増加運転資金」と呼ばれています。
一見、”売上が増加すると手元の資金は増える”と考えがちですが、通常は、先行投資としての仕入・経費の負担が先に求められ、後から売上入金増がついてくるというタイミングの差から、成長し続けている限りは、”売上は増えているのに手元資金は増えない”という状況に陥りがちです。
「増加運転資金」の借入余力は、以下のようにして考えていくことになります。
「売上増加後の1日あたり売上高×売掛金回転期間+棚卸資産回転期間-買掛金回転期間」
-「売上増加前の1日あたり売上高×売掛金回転期間+棚卸資産回転期間-買掛金回転期間」
- 1日あたりの売上高:月間売上高÷30日
- 売掛金回転期間:売掛金÷1日あたり売上高
- 棚卸資産回転期間:棚卸資産÷1日あたり売上高
- 買掛金回転期間:買掛金÷1日あたり売上高
なお、売上増加前と売上増加後とで各回転期間に差が生じる場合、それはそれぞれに加味する必要があります。
増加運転資金はもともと前向きな理由の融資でもありますし、”売掛金・棚卸資産が換金していけば資金が増える”というイメージを持ちやすいことから、銀行としても取り組みやすい融資であるといえます。
一方で、融資申請の際には、売上増加傾向にあることの裏付けが肝になってくることから、契約書・受注書・受注見込みなど信憑性のある資料の準備は欠かせないと考えられます。