融資申請の際には、借入希望額を記載する欄があり、どのように決めてよいのか迷いがちです。
諸留誕著「顧問先の銀行融資支援スキル 実装ハンドブック」(日本法令)を参考にして。
目次
”いくら借りられるのか”とは聞けない(聞いてはいけない)
融資を申し込もうとする際、「借入希望額」を記載したり、伝えたりすることになります。
ここで、銀行に対して”いくら借りられるのか”と聞くと、”計画性がないのではないか”という印象を与えてしまうことになってしまいますし、基本的に聞いてはいけないものではあります。
自社の事業計画において、「いくら必要なのか」が明確になっているべきものだからです。
融資タイプの整理
融資といっても、資金使途や返済原資によって、主に以下のような項目に分けられます。
- 経常運転資金(継続的に事業運営していくために必要な資金)
- 増加運転資金(売上拡大を要因として必要となる運転資金)
- 設備資金(事業活動を行うために必要な設備を購入等するための資金)
”いくら借りられるのか”を自分で考えるには(設備資金)
「(税引後利益+減価償却費)×10ー(借入金残高-現預金-運転資金)」
「税引後利益+減価償却費」が年間の返済余力で、これの×10(10年で返済できる程度)が借入額の最大値とされており、さらに、ここから既に借りている実質借入金(借入金残高-現預金)のうち運転資金の枠を除いたものが、設備資金の返済余力と考えられています。
設備投資計画書
設備投資計画書を添付することで、銀行の以下の関心トピックへの説明ともなるため、有用とされます。
- なぜ今、設備投資をする必要があるのか?
- 設備投資の内容は妥当か?(高性能すぎないか?)
- 設備投資によって見込まれる増益はどれくらいか?
- 設備投資によって見込まれる利益によって、今回融資の返済は可能になるか?
踏まえて、設備投資計画書に盛り込む内容としては以下のようなものが考えられます。
- 設備投資の概要(必要性、内容の妥当性)
- 設備投資による効果(増加する利益見込み)
- 設備投資スケジュール(いつ資金が必要か)
- 設備投資の資金調達一覧(自己資金・借入の内訳)
- 設備投資そのものの数値見込み(増加売上・増加原価・増加経費・増加利息・増加税金→+減価償却費→簡易キャシュフロー)
- 設備投資後の事業全体の事業計画(売上・原価・経費・利息・税金→+減価償却費→簡易キャシュフロー)
設備資金への考え方のポイント
- 設備資金の借入余力におけるの減価償却費には、設備資金による設備の減価償却費は含まないものとされ、これは、設備資金による設備の費用対効果が読めないからとされています。
- 設備投資では、”借入期間=法定耐用年数”という考え方(最長では10年が目安)が基本であり、運転資金よりも期間を長めに借りることができます。
(月々の元本返済額も低く抑えることができることから、多少金利が高くなったとしてもより長期で借りる視点も重要) - 設備投資計画の際の資金調達には自己資金も2~3割入れることで、設備投資に対する本気度を示す
- あわせて、増加運転資金の打診も行う
- 既存店と新規店とがあれば、分けて資金繰り表を作成する