複数の銀行から同時に資金調達してもよいのかどうか。その場合の留意点などがあるか。
諸留誕著「顧問先の銀行融資支援スキル 実装ハンドブック」(日本法令)を参考にして。
目次
協調融資
複数の銀行から同時に資金調達することは可能で、代表なものとして「協調融資」があります。
特に、融資額がやや大きいような場合(設備投資などで創業融資で希望額1,000万円超になる場合など)、複数の銀行で融資を組んでもらう場合が考えられ、協調融資の場合、一般的には、「民間銀行+公庫」を指します。
- 民間銀行の選び方のポイント:
特に創業時や創業間もない場合には、都市銀行よりも、地方銀行・信用金庫などのほうが相談に応じてくれやすい(保証協会を通さないプロパー融資も検討してくれやすい。)。 - どちらに先に相談すべきか:
どちらが先でもOKだが、アテがなければ先に公庫+公庫から民間銀行を紹介してもらうというパターンも可能。 - 協調融資のデメリット①:
どちらかがNGとなると、資金調達や事業計画そのものに大きな影響を与えるため、もう片方もNGになる可能性が高い。
その意味では、単独融資を優先検討し、難しい場合には協調融資を検討するほうがベター。 - 協調融資のデメリット②:
準備書類が2倍になる。
その意味では、単独融資を優先検討し、難しい場合には協調融資を検討するほうがベター。 - 協調融資のデメリット③:
公庫は1ヶ月程度だが、民間銀行で制度融資なども活用する場合には時間がかかる(2ヶ月程度)。
協調融資ではなく、同時申込みの場合
協調融資ではなく、単純に複数銀行に同時に申し込む場合には、留意が必要です。
- 複数銀行で融資申請を進めている旨は必ず伝える
- 民間銀行が複数の場合、結果、信用保証協会に行き着く場合が多い
- もし両銀行とも審査に通った場合、必ずどちらからも借りる旨を必ず伝える
(審査した挙げ句に断られるのではないかという銀行の警戒を解いておく。)
シンジケートローン
「民間銀行+民間銀行(商工中金)」での協調融資の場合、「シンジケートローン」という形態もあります。
ただし、それぞれの銀行から十分な融資を受けられているのであれば、あえてシンジケートを組む必要も薄いと考えられます。
- シンジケートローンのメリット①:
複数行からの融資なので多額の融資が可能。 - シンジケートローンのメリット②:
「短期継続融資」や「長期借入金」など複数の融資を組み合わせて資金繰り改善を図ることができる。 - シンジケートローンのメリット③:
アレンジャー・エージェントなどまとめ役がいることが多いため、銀行対応の負担が軽減される。 - シンジケートローンのメリット④:
取引銀行のバリエーションが増え、取引実績を作ることができる。 - シンジケートローンのメリット⑤:
業績のよい会社への提案が多いため、事例紹介などされることで対外的信用が上がる。 - シンジケートローンのデメリット①:
手数料が多く高い(アレンジメントフィー、エージェントフィー)。かつ、一括払いであることが多い。 - シンジケートローンのデメリット②:
窓口が1本化(アレンジャー、エージェント)されることにより、他銀行との接点がなくなる - シンジケートローンのデメリット③:
特約条項(コベナンツ)があることが多く、財務制限(2期連続赤字など)に抵触すると一括返済を求められることもある