売上改善・利益改善の道筋、抽象的なレベルでも知っておくと、道しるべになります。
諸留誕著「顧問先の銀行融資支援スキル 実装ハンドブック」(日本法令)を参考にして。
目次
銀行の姿勢の変化を知っておく
銀行の融資に対する姿勢は、金融庁の指針や指導もあり、変化していく流れにあるといわれています。
”担保・保証がありさえすれば貸す”という姿勢から、”本業を支援する”という姿勢です。
例えば、2021年4月にスタートしている伴走支援型特別保証制度(コロナ借換保証など)においては、経営行動計画書の作成が求められ、銀行はその計画のモニタリングすることとされています。
これをモデルとして、融資全般においても、経営行動計画の作成とモニタリングという流れが広がっていくとも考えられています。
これは、業績が不調な場合において、目標や計画を立てて改善活動を行うのと、やみくもに行動するのとでは、その後の具体的な状況改善において統計的に差があるという考えが根本にあるとも考えられています。
つまり、自社のためにも銀行との関係性においても、”目標や計画を立てて改善活動を行う”という視点が重要になると考えられます。
売上改善の道筋
難易度の高い順に並べると、以下といわれており、以下の順に検討していくとよさそうです。
【既存商品→既存顧客】 方針:顧客へ浸透させる | 既にある高い商品力(高利益率)を既存顧客へより浸透させるためには、「単価向上」や「客単価向上」の引上げが定石と考えられます。 ・品質向上(→単価向上) ・アフターサービス充実(→単価向上) ・割引キャンペーン(→客単価向上) ・ポイント導入(→客単価向上) |
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【既存商品→新規顧客】 方針:顧客を開拓する | 既にある高い商品力(高利益率)を新規顧客へと広げるためには、「新規顧客・販路の具体的開拓」が定石と考えられます。 ・離れた場所への出店 ・オンライン販売への展開 ・ターゲット層の拡大 |
【新規商品→既存顧客】 方針:新商品を開発・提供する | 商品力が低い状態(低利益率)にあるが既存顧客がいるという場合、「新商品開発」「既存商品のオプション品開発」「既存商品のバージョンアップ品開発」が定石と考えられます。 ※開発に際し、「強み」「チャンス」を活かせるか、そのような環境かの検証が重要 |
【新規商品→新規顧客】 方針:多角化する | 商品力が低い状態(低利益率)にあるが既存顧客数も十分ではない場合、「新商品を新顧客に発信する(多角化)」が定石と考えられます。 多角化はハイリスクであるものの、ベターなのは、既存を起点に近隣や活用で展開する形です。 ・水平方向:現状の近隣分野への進出 ・垂直方向:商流の前後への進出(例:メーカーが流通・販売へ) ・集中する:既存ノウハウが活かせる分野へ進出(例:衣料品店が古着店へ) ・集成する:まったく商品・新規分野へ進出(最もハイリスク) |
利益改善の道筋
売上高を増やす | ①まず、売上優先による弊害がないかチェック(過剰値引による利益減、営業時間延長による人件費超過、品揃え強化による管理コスト・ロス増) ②値上げ (→離脱があっても”単価×数量”で増加していることもあるため、離脱率の分岐点を試算する) ③客数が減って創出した時間を、新商品開発・新価値創出に充てる ※長く価格を据え置いている顧客やコストを価格に転嫁できていない顧客に対して値上げアプローチをかける |
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原価率を下げる | 原価率1%改善による利益増加額を見える化し、実行する意義を確認する |
固定費を減らす | ①”減らす”というよりも、”増やさない”という視点で考える ②ムダ使いしないために、経費の予算枠を試算し、モニタリングしていく |
改善策と運転資金
改善策に夢中になりすぎてかえって運転資金が少なくなるケースもあり、注意が必要です。
- 掛売り減少・回収サイト短縮→客離れ→かえって売上悪化
- 在庫減少による欠品→売り逃し→かえって売上悪化
- 支払サイト延長→仕入単価が割高になる場合も→かえって原価率悪化
貫く価値のある改善策で運転資金減しているような場合には、融資で資金調達することでの解決を考えたいところです。