新規融資を受けた後の展開として、どのようなパターンが考えられるか。
諸留誕著「顧問先の銀行融資支援スキル 実装ハンドブック」(日本法令)を参考にして。
融資メンテのバリエーション
新規融資を受けた後の展開としてどのようなパターンが考えられるのかを知っておくことで、どのようなときに銀行にはどのように相談すればよいかが分かるようになります。
- 折り返し融資
- 短期継続融資
- 一本化する
- プロパー融資を引き出す
- 金利を下げる
- 経営者保証・担保を外す
- 資本性借入金
- メインバンクを見直す
- リスケジュール
⑥経営者保証・担保を外す
経営者保証
保証人と連帯保証人とでは性質が異なり、連帯保証人は”催告検索の抗弁権”がないことから、保証人という立ち位置にかかわらず銀行から返済を求められるとそれが正当に認められるという特性があることから留意が必要です。
銀行が、経営者に連帯保証人であることを求めるのは、単に信用補完であることのみならず、会社と社長は”一心同体”であると考えているということと覚悟を求めているということもあると思われます。
経営者保証に関するガイドライン
2013年、日本商工会議所・全国銀行協会が事務局となり「経営者保証に関するガイドライン」が公表されています。
また、2023年4月からは、銀行に対して「経営者保証の説明義務」が課せられたため、銀行が連帯保証を求める際には、その必要性や解除したい場合の具体的改善点の説明をするような方針が発表されています。
これらの状況から、経営者保証との距離感を図ることができるようになってきているようです。
経営者保証が不要になる場合
銀行側としては経営者保証を必要と感じている段階で、借りる側が無理に経営者保証をなしにしようとする場合、単に、融資が受けにくくなると考えられます。
「経営者保証に関するガイドライン」においては、経営者保証が不要となるための目安として、以下が挙げられています。
- 法人のお金と個人のお金が明確に区分されている
(不動産の所有形態、親族の不動産である場合の賃料設定、法人個人のお金の貸し借り、役員報酬金額、交際費の額) - 債務償還年数が15年以内かどうか、自己資本比率が20%以上かどうか
- 毎月、試算表を作成し、銀行に提示しているか
経営者保証を外す交渉のタイミング
- 新しく融資を受けるとき(契約がリセットされるとき)
- 銀行から融資の営業を受けたとき(経営者保証なしであれば検討する、と対応する)
- 経営者保証が外れた実績があれば、それをもとに他銀行も交渉する
- 事業承継のタイミング
- 金額的に必要以上の部分にまで経営者保証がついていないか確認する(簡易CF×15年が目安)
担保
担保は、まず、「不動産評価額(土地:路線価÷80%、固定資産税評価額÷70%、建物:再調達価格-経年劣化)×掛け目(60~80%)」とのバランスを見てみたいところです。
また、保証付き融資(保証協会)とプロパー融資(銀行)とで担保を共有していることがあるため(優先見合い・劣後見合い、同順位見合い)。担保の設定状況は確認したいところです。
場合によっては、保証協会に直接担保提供したほうが保証付き融資を受けやすくなるということも考えられます。
抵当権
根抵当権と抵当権とがあり、根抵当権は、複数繰り返される融資をまとめて対象にできることから銀行から勧められがちですが、返済が進んだ場合の担保余力が活かせなくなることから、可能であれば通常の抵当権にできないか考えたいところです。
また、そもそも担保が必要なのかについても考えておきたいところです(他銀行では担保不要かも。)。