”資金繰りが厳しい、、”と感じるとき、何が原因として考えられるのか、原因が分かれば対応案を考えることもできます。
増山秀和著「資金繰りなるほどQ&A」(中央経済社)を参考にして。
営業活動とその資金の流れを確認する
営業活動とその資金の流れを俯瞰してみると、以下のようになっています。
- 商品を仕入れる(買掛金の発生)
- 在庫が発生する(在庫の発生)
- 商品を販売する(在庫の解消)(売掛金の発生)
- 仕入代金を支払う(買掛金の解消)
- 販売代金を回収する(売掛金の回収)
お金の流れだけで考えてみると、以下です。
「資金」→「買掛金」→「在庫」→「売掛金」→「資金」
このように、最初に手持ちで持っていた資金が、利益が乗った形で再び資金として手元に戻ってくるまでに、タイムラグがあることが分かります。
「運転資金」とは
最初の資金がやがては利益の乗った形で資金として戻ってくるわけなので、必ずしも悪い状態ではないのですが、現実問題として、そのタイムラグの間は手元に資金がありません。
そして、そのタイムラグの間にも、人件費・家賃などの諸経費の支払いが発生していきます。
ここのタイムラグを凌ぐ資金のことを「運転資金」といいます。
設備購入のための資金(設備資金)とは異なり、「運転資金」は”つなぐための資金”なので、上記のサイクルのどこにあるかによって多少の変動はあるものの、基本的には平均して同額が手元にあるべきものという特徴があります。
具体的に、この「運転資金」は自社にとっていくらくらいであるのかは、上記の経緯から、以下によって計算されます。
「売掛金」+「棚卸資産」-「買掛金」
資金化されずにいる「売掛金」と「棚卸資産」の合計額から、支出せずに資金として手元に持っておくことができている「買掛金」を差し引く形です。
ここから、営業活動を”つなぐ”資金として、どの程度常に手元にあったほうがよいかが分かると、”手元資金の目標”や”足りない場合に銀行に相談すべき金額”が分かってきます。
回転期間を把握し、対策する
上記のような事情から、手元資金を厚くするためにはということを単純に考えると、以下の方向性が基本であることが分かります。
- 売掛金:発生から回収まで、短ければ短いほどよい
- 在庫:発生から解消まで、短ければ短いほどよい
- 買掛金:発生から解消まで、長ければ長いほどよい
ただ、実際にはそうはいかないものです。
仕入先へなかなか支払わないということになると、仕入先の不満が溜まりがちになりますし、信用への不安にも繋がる可能性もあります。
得意先からも、早く支払って欲しくとも、立場の違いから交渉しづらい現実もあります。
在庫に関しても、もちろん思うように早く売れてくれればよいですが、うまくいかないこともあります。
ただ、方向性としては上記に変わりはないため、それぞれの項目の取引先等の要素ごとに分解し、交渉可能な部分を地道に探していくことができれば、資金繰りが改善していくことになります。
- 売掛金
→取引先等別に分解→回収遅延が起こっていないか、回収早期化ができないかを検討 - 在庫
→商品別に分解→停滞しているものがないか、停滞しているものを値下げ販売するかどうかを検討 - 買掛金
→取引先等別に分解→支払周期が早すぎるところはないか、支払周期の適正化が可能かを検討