試算表・前期比較試算表・月別損益推移などの資料は、なかなかとっつきづらいものではありますが、その変化の原因を考えるところから改善が始まるともいえます。
なぜ悪かったのか、なぜよかったのか
「経営感覚」と「経営数字」のすり合わせをしていくことが非常に重要だと思っています。
例えば、”今月とても忙しかったのに、利益が出なかった”として、その原因が把握できていない場合、「経営感覚」と「経営数字」とが一致していない状態といえます。
打つべき対象が認識できていないままに打つ手を考えることにもなってしまい、経営判断に自信が持てなくなってしまいます。
経済的な利益を追うことばかりが経営ではないですが、一方で、事業の存続には「資金=数字」が不可分であることということも、厳然たる事実です。
”なぜ悪かったのか”ということについては、どのようにしていけばよいかということが、ある程度まで共通している部分があります。
一方、”なぜよかったのか”ということについては、複数の理由があることが多く、原因が分からないということが今後の成長の速度を鈍らせてしまうことにもなってしまいます。
数字の変化を見ていく
上記のような状況を避けるためにも、試算表・前期比較試算表・月別損益推移などの資料から、定期的に、数字の変化を見ていった方がいいと思います。
数字は毎日・毎月変化し、まったく同じ数字になる日・月ということはまずありません。
ということは、数字それぞれに性格や特徴があるということでもあります。
”変化”なので、何から何に変化したか、その変化の幅の原因を整理していくということを指します。
この”何から何に”ということは、複数の尺度があります。
代表的には、前月と当月、前年同月と当月、といったものです。
季節性のある業種であれば、前月と当月を比較するよりも、前年同月と当月を比較する方が分かりやすい場合があるなどケースバイケースで尺度を変えるのがよいかと思います。
「なぜ」という視点
前月や前年同月と比較してみて、「なぜ?」と考えます。
- 売上が下がっている→「なぜ、下がったのか」→「客数が下がったのか、客単価が下がったのか」
- 経費が増えている→「なぜ、増えたのか」→「投資効果があると見込んで投下したものか、浪費かもしれないものか」
掘り下げていく都度、具体的なイメージ(経営感覚)と結びついてきます。
例えば、売上が下がった原因が客数低下ということであれば、競合店ができたのか・店舗前の通行量が減ったのか・店舗展示に変化がなく飽きられているのではないか等です。
「どうすればよいか」という視点
比較をもとに、「どうすればよいか?」と考えてみるという視点もあります。
- 車両費が高い→「どうすればよいか」→「少ない車両で同じ業務量をこなすことはできないか」
- 閑散期に赤字になっている→「どうすればよいか」→「シフトを工夫し、売上はそのままで人件費をスマートにすることはできないか」
- 残業代が多い→「どうすればよいか」→「残業になる原因を考えてみる。原因によっては業務効率を上げる方法を工夫する」
”健康的な強制力”でペースを作るのが最もよい
経営数字を見ていくには、「定期的」な習慣が必要になります。
「月に一度」が最も振り返りがしやすいかもしれません。
この「月に一度」を継続していかなければいけません。
経営者1人の努力でそれができるということが最もよいのかもしれませんが、経営者として複数の業務を同時進行していくなかで、1人でそれを継続していくということは難しいと感じる場合も多いものです。
このような場合、無理なく、苦にならず、継続していけるペースづくり(”健康的な強制力”)として、自分以外の第三者と定期的な打合せの機会を持つことが、とても有効な解決策といえます。
自分以外の第三者としては、自分以外の役員や親族、税理士、コンサルタントなどが挙げられるでしょう。
定期的に見ていく機会を“自分以外の誰かとの約束”という形で作り、かつ、一緒に見ていくなかで「盲点への気づき」を与えてくれる存在と一緒に振り返ることにより、より有意義で効果の高い打合せができると思われます。