逆説的ながら、絞り込むからこそ特定の方の心を動かす強い商品ができるのだと考えられます。
西口一希著「実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社)を参考にして。
購入決定の”決め手”
人が購入を決定するときには、何らかの”決め手(背景・きっかけ)”があります。
では、その”決め手”は何なのか。
行動を追うだけでも分からないものですし、属性でも分からないものです。
あるいは、その人自身にも明確に意識できていないことも多いといわれています。
確実にいえることとして、西口一希著「実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社)で言語化されているのは、「その顧客が、”購入しているブランドが自分にとって特別な便益をもたらしてくれる”と心理的に認識するに至った」というこです。
どのような体験・コミュニケーションを通じ、その商品やブランド独自の魅力から、自身にとっての特別な便益を感じて、購入するに至ったのかということです。
データはデータ
行動を統計に取れば、データができあがります。
しかしながら、あくまでそれらは平均値・最大公約数であり、これらを全体的に捉えて商品開発しようとすると、結局のところどれほど統計学的・論理的に完璧であっても、できあがるものは”誰からも嫌われない代わりに誰からも強く支持されない、当たり障りのない既視感のある鳴かず飛ばずのものが出来上がります。
データはあくまでデータであり、全体を捉えようとしても、”誰からも嫌われない代わりに、誰からも強く支持されない”ものしか出てこないといえます。
”心を動かす”確率を高める
人が購入を決定するときには、”何らかの心の動き”があるはずです。
その”心の動き”を自社に向けてもらえるようにするには、どうすればよいのかを考える必要があります。
”心を動かす”には、どうすればよいのかということです。
例えば、”心を動かす”プレゼントを考えるとした場合、家族・同僚・他人のどれに対して最もイメージが湧き、かつ成功確率が高いか考えてみると、他人よりも同僚、同僚よりも家族、ということになるかと思います。
これは、”その人”への理解の深さが関係しています。
その人の日頃の行動、日頃何を求めているか、生活態度、価値観、趣味などをいかに豊富に知っていて考え抜いているか。
それらが、”心を動かす”ということに関係してくることは自明です。
つまり、よき商品とは、「特定の誰か一人を喜ばせること・幸福にすること・便利になってもらうこと」が起点となっているといえます。
絞り込んでもニッチ化しない
一見、絞り込むことでニッチ化してしまい、市場が狭いのではないか・失敗するリスクが高いのではないかと思いがちです。
しかしながら、逆に、絞り込まずに、「誰からも嫌われない代わりに誰からも強く支持されない、当たり障りのない既視感のある鳴かず飛ばずのもの」を作ったところで、鳴かず飛ばずで失敗する確率が非常に高いということもまた事実ではあります。
逆説的ながら、絞り込むからこそ商品に強い独自性と便益とが生まれ、より多くの人の心を動かす可能性の高いものができあがるのであって、絞り込まなければ誰の心も動かせず、誰からも関心を持ってもらえずに失敗してしまうということになるものです。