ドンブリ勘定を卒業する!月ごとに業績を把握する①

毎月の売上や経費を感覚でしか把握できていない場合、会社の全体像が見えないものです。
月ごとに会社の数字をチェックする「月ごとの業績把握術」を身につけることで、全体像を把握することができます。

大野貴史・國村年・松井大輔著「月次決算の実務Q&A」(中央経済社)を参考にして。

目次

ドンブリ勘定が招く落とし穴:なぜ”なんとなく”では危険なのか?

”うちの会社は、なんとなく儲かっているはず”・”今月は忙しかったから大丈夫だろう”と思いがちですが、その”なんとなく”はよい状態ではないといえます。

日々の忙しさに追われ会社の数字を細かく見ない「ドンブリ勘定」状態は、多くの経営者が陥りがちな落とし穴です。

”なんとなく”のドンブリ経営では、以下のような問題が見過ごされがちになります。

  • 「なぜお金が増えないのか」が不明なまま
    特定の商品やサービスが損失を出しているのか、価格は適正か、取引量は適正か、原因が分からなければ対策を立てることができません。
  • 気づかないうちに赤字に転落しているリスク
    1年に1回まとめてで数字を見る状態では、赤字に陥っていていたとしても、その兆候に気づくのが遅れてしまいます。月ごとであれば対応できていたことが、手遅れになることもあります。
  • 資金ショートの不安
    手元の現金がどれくらいあるのか、増える傾向にあるのか、減る傾向にあるのかが不明確だと、賞与や納税など数ヶ月に1回現れる支払いに対応できず、資金繰りに悩む可能性があります。
  • 適切な投資判断ができない
    人を雇っても大丈夫か、設備投資はいつ行うべきかなど、事業のペースや収支分岐点となる目安が分からなければ、博打を打つような危険な経営判断になりがちです。

ドンブリ勘定では、会社の現状を正確に把握できず、従って、経営判断が遅れたり、誤ったりするリスクが高まります。

月ごとに業績を把握し改善していくペースを作るメリット

ドンブリ勘定から脱却し、会社の経営を盤石にするための最も効果的な方法の一つが、「月ごとの業績把握」です。

毎月定期的に会社の経営数字を見返すことで、まるで体の異常を早期発見するように、経営上の課題やアイデアの実現化のチャンスをタイムリーに捉えることができます。

月ごとの業績把握によって得られる具体的なメリットは、次の通りです。

販売価格等の判断根拠を正確に整理できる・収支分岐点となる売上を把握できる
・商品の原価を早期に把握できる
・取引先別にどうか、商品別にどうか、といった切り口での損益を早期に把握できる
・部門別にどうか、店舗別にどうか、といった切り口での損益を早期に把握できる
・お客様の動向や傾向、売れ筋商品や不採算商品を早期に把握できる
原価管理、損益管理ができる・損益が黒字傾向か赤字傾向か早期に把握できる
・前年同月との比較を行うことで、事業の傾向を把握することができる
・経費の予算イメージとのすり合わせを早期に把握することができる
・事業の予測の精度を上げることができる
資金繰りのコントロールができる・速いタイミングで金融機関への融資交渉をすることができる
・資金繰り状況を早期に確認できる
・賞与の算定根拠に役立てることができる
・税額予測を早期に行うことで、資金対策を早期に行うことができる
・税額予測を早期に行うことで、経費の予算イメージをコントロールすることができる
経営判断に自信を持つことができる・設備投資資金、新規人員採用によるコスト増の回収イメージを正確に把握し、自信を持って判断できる
・設備投資のタイミングを正確に考えることができる
・人材採用のタイミングを正確に考えることができる
・未回収債権の滞留状況を早期に把握できる
・棚卸資産の滞留状況を早期に把握できる
・支払い状況で漏れや誤りがないか早期に把握できる
・支払いペースと金額に異常がないか早期に把握できる
・部門管理者と共有することにより、採算意識を持たせることができるようになる
・経営課題を早期にあぶり出したり、経営アイデアを的確に具体化したり、タイムリーに経営判断することができるようになる
決算手続きの負担軽減・決算手続きの業務負担を軽減できる
・経理誤りを早期発見できる
・大局的に異常な数値を早期発見できる

月ごとの業績把握を始める第一歩と、経営への活かし方を考える

月ごとの業績把握を始めること、最初から完璧を目指す必要はなく、まずは習慣づけをするという小さな一歩から始めてみましょう。

まずは、毎月定期的に”振返りの時間”を設ける(月約720時間のうち1時間を確保)ことから始めるとよいと思われます。

売上がどうだったか、経費は増えていないか、資金は足りているか、といった基本的な項目から確認を始めていくとよさそうです。

月ごとの業績把握は、単に過去の数字を確認するだけではなく、これらの情報を未来の経営に活かすことが最も重要です。

  • 自信を持って経営判断できる
    毎月の数字から得られる”気づき”を基に、商品の改良、新しい商品の企画、人材活用の見直しなど、具体的な経営アイデアを、自信を持って判断できるようになります。
  • イメージと実際との比較の徹底
    イメージと実際とを比較することで、どこにズレがあるのか、なぜズレが生じたのかを知ることができ、精度を高めることができるようになります。
    これにより、より精度の高い経営計画を立てることができるようになります。
  • 目標の設定と進捗管理
    適切な年間の目標を立てることができるようになります。
    また、それに沿って、月ごとの目標を設定し、実際の業績と照らし合わせることで、目標達成に向けて何をすべきかを意識することができるようになります。
  • 従業員との意識共有
    会社の数字を部分的にでもオープン化し、従業員にも月ごとの業績を共有することで、全員に採算意識が生まれ、会社の成長に貢献しようという意識が高まります。

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