ドンブリ勘定を卒業する!月ごとに業績を把握する⑤

毎月の売上や経費を感覚でしか把握できていない場合、会社の全体像が見えないものです。
月ごとに会社の数字をチェックする「月ごとの業績把握術」を身につけることで、全体像を把握することができます。

大野貴史・國村年・松井大輔著「月次決算の実務Q&A」(中央経済社)を参考にして。

目次

業務プロセスを見直す

月ごとに業績を把握するメリットは、以前ご紹介したとおりです。

月ごとに業績を把握するとした場合、早いに越したことはありません。

月ごとの業績を早く把握しようと思う場合、業務プロセスを見直してみる必要もあります。

業績を把握するために、費用計上を「発生主義」で

正確な月次の損益を把握するためには、費用の計上ルールを「発生主義」に統一することが不可欠です。

  • 発生主義とは:現金の支出のタイミングにかかわらず、モノやサービスを利用した時点で費用を認識する考え方
  • 現金主義とは:現金を支払った時点で費用を認識する考え方

多くの中小企業では、管理が簡単な現金主義を採用しているケースが見られます。

しかし、現金主義には大きな落とし穴があり、例えば、月末に利用したサービスの支払いが翌月になった場合、その費用は翌月に計上されます。

これでは、業績を見る際に、当月の利益が不当に多く見えてしまうことになります。

”今月は儲かった!”と誤った経営判断を下してしまう危険性があるのです。

業績を正しく見ていくためにも、費用は「発生した月」に計上する発生主義を徹底することが重要になります。

支払方法別に考える!費用計上のための経理フロー構築

費用を発生主義で正しく計上するためには、支払方法に応じた経理の仕組みづくりがポイントになってきます。

支払パターン概要
① 振込み買掛金や未払金として計上、後日振り込むもの
② 自動引落し家賃や水道光熱費など、毎月口座から自動で引き落とされるもの
③ クレジットカードコーポレートカードなどで支払い、後日まとめて引き落とされるもの
④ 立替金従業員などが一時的に支払いを立て替えるもの

振込み

掛取引の場合、モノやサービスを利用してから請求書が届き、後日支払い、という流れが一般的です。

重要なのは、当月発生した費用の請求書を、いかに早く集めて当月中に費用計上するかです。

支払依頼の社内締切日」を設けるなどして、費用の計上漏れや月ズレを防いでいくようにします。

自動引落し

水道光熱費や通信費など自動引落しの費用も、引落されたタイミングではなく、請求書(や利用明細)を受け取った時点で費用計上するのが原則ですが、毎月ほぼ同じ額などであれば、概算で対応することが可能になります。

クレジットカード:

従業員には、領収書を受け取ったら速やかに提出を行うよう徹底させましょう。

請求書が間に合わない!「概算計上」で月次決算を止めないようにする

「取引先から請求書がどうしても間に合わない…」
そのような場合、「概算費用」として数値を計上する方法を考えます。

過去の実績(前月や前年同月など)や契約内容に基づいて合理的に費用を見積もり、仮の金額で計上する方法です。
そして、翌月に正式な請求書が届いた時点で、確定額との差額を調整します。

月次の損益に大きな影響を与える重要な費用について、あらかじめ社内で概算計上のルール(対象科目、金額基準、承認プロセスなど)を定めておくとよさそうです。

まとめ

  • 費用の計上は「発生主義」を徹底する
  • 支払方法(振込み、自動引落し、カード)ごとの経理フローを確立する
  • 請求書が未着の場合は「概算計上」を活用する

これらの仕組みを構築することで、費用の計上漏れや月ズレを防ぎ、より精度の高い月次決算が可能になります。

経営の意思決定の質を高めるためにも、自社の費用管理プロセスを見直してみたいところです。

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