会社の設立を考えたとき、多くの人が「株式会社」と「合同会社」のどちらを選ぶべきか。それぞれにメリット・デメリットがあり、設立コストや社会的信用度も異なります。
株式会社と合同会社の違いとは?
会社を設立するとひと言で言っても、その形態にはいくつかの種類があります。
中でも代表的なのが「株式会社」と「合同会社」です。
それぞれの基本的な特徴と、両者に共通する重要なポイントを見ていきましょう。
株式会社とは?
株式会社は、株式を発行することで株主から資金を集め、その資金を元に経営者が事業を行う会社形態です。
原則として、資金を出す「所有者(株主)」と、会社を運営する「経営者(取締役)」が分かれている「所有と経営の分離」が特徴です。
とはいえ、「ひとり社長」のように小規模な会社では、社長自身が株主を兼ねる「オーナー経営者」であるケースがほとんどなので、難しく考える必要もありません。
社会的信用度が高く、最もポピュラーな会社形態です。
合同会社とは?
合同会社は、アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルとして導入された、比較的新しい会社形態です。
最大の特徴は、資金の出資者と経営者が同じ「所有と経営の一致」である点です。
出資者全員が会社の経営に携わるため、迅速な意思決定が可能になります。
設立コストが株式会社に比べて安いことから、小規模なビジネスや個人事業主からの法人化(法人成り)で選ばれることも増えています。
どちらも「有限責任」!税金の扱いも同じ
この二つの会社形態には、重要な共通点があります。
それは、どちらも「有限責任」であるということです。
有限責任とは、万が一会社が倒産してしまった場合に、出資した金額の範囲内でのみ責任を負えばよいという仕組みです。
また、法人税の計算方法や税率に関しても、株式会社と合同会社で違いは全くありません。
項目別で比較!あなたに合うのはどっち?
それぞれの基本的な特徴がわかったところで、次に具体的な項目で両者を比較してみましょう。
比較表で見る株式会社と合同会社の主な違い
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 設立費用(目安) | 約20万円~ | 約6万円~ |
| 出資・意思決定 | 所有と経営の分離 出資割合に応じた議決権 | 出資者=役員 割合関係なく1人1票 |
| 社会的信用力 | 高い | やや低い |
| 代表者の名称 | 代表取締役 | 代表社員 |
| 役員の任期 | 最長10年(再任可能) | 任期なし |
| 株式の公開(上場) | 可能 | 不可 |
| 決算の公告義務 | あり | なし |
コストを抑えたいなら「合同会社」
上の表からも分かる通り、設立費用をできるだけ抑えたい場合は、合同会社が圧倒的に有利です。
株式会社の設立に必要な「定款の認証手数料(約5万円)」が不要なうえ、法務局に納める「登録免許税」も最低6万円からと、株式会社の最低15万円に比べて安く設定されています。
信用力や事業拡大を目指すなら「株式会社」
社会的信用力を重視するなら株式会社に軍配が上がります。
大企業との取引を考えている場合や、将来的に資金調達のために株式公開(上場)を目指す可能性がある場合は、株式会社を選ぶのが一般的です。
また、役員の任期がない合同会社に比べ、株式会社は役員の任期が定められており、定期的な登記変更が必要になります。
シンプルな3つの判断基準
ここまで様々な違いを見てきましたが、「結局、自分はどちらを選べばいいの?」と迷ってしまう方もいるかもしれません。
会社形態を決めるためのシンプルな3つの判断基準について。
基準①:とにかくコストを抑えて事業を始めたい!
合同会社がニーズに合います。
設立時の費用だけでなく、決算公告の義務もないため、ランニングコストも抑えられます。
基準②:取引先は個人や小規模事業者が中心で、信用面での心配は少ない
合同会社がニーズに合います。
設立コストも低く、経営の自由度も高いため、スピーディーに事業を進められます。
基準③:将来的に大企業との取引や、外部からの資金調達も考えている
株式会社がニーズに合います。
社会的信用度が高く、事業拡大の選択肢が広がります。
将来を見据えた選択を
会社形態の選択は、今後の事業展開を大きく左右する重要な第一歩です。
目先のコストだけでなく、将来のビジョンや取引先の特性などを総合的に考慮して、最適な形態を選びましょう。
ちなみに、もし事業を続けていく中で不都合が生じた場合、合同会社から株式会社へ、またその逆へと組織形態を変更することも可能です(ただし、別途コストがかかります)。
