聞き方には、「ずらす対応」と「受け止める対応」とがあります。
ケイト・マーフィ著・篠田真貴子監訳、松丸さとみ訳「LISTEN」(日経BP)を読んで考えたこと。
ずらす対応、受け止める対応
聞き方には、「ずらす対応」と「受け止める対応」とがあるとされます。
このうち、優れた聞き手は、「受け止める対応」をするといわれています。
話を受け止めたうえで意味あるフィードバックを返したり、相手への誤解や不明を避けて十分に正確に相手を理解するためには、受け止める対応が望ましいということになります。
一方で、「ずらす対応」は、基本的に、相手を受け止めずに自分のことへと話題をずらしていることになります。また、相手に暗にYesを誘導するような質問、決めつけのような質問も、相手への興味から出た質問とはいえません。
受け止める対応にはハードルがある
「受け止める対応」にはいくらかのハードルがあることから、なかなか取り得ないとされます。
相手へ質問(クローズドクエスチョンではなくオープンクエスチョン)を投げかけたとき、どのような答えが返ってくるかについての予測はつかないもので、不安を感じさせるものです。
話がどのような方向へ行き着くかも分からないですし、それにはときにかなりの冒険心や勇気が必要とされます。
基本的に、人間には感情が溢れているものです。自分の感情ですら受け止めあぐねるなか、話のなかから予測不能な他人の感情が溢れてくるとしたときに受け止めきれるかどうかということについても不安は伴います。
ネガティブな反応は、ポジティブな反応の5倍の強さで感じさせるともいわれています。
そう考えると、人間関係を円滑にするためには、ポジティブなやりとりが、ネガティブなやりとりに対して5倍以上必要とも考えられます。
また、受け止めずに、やたらとアドバイスをしようと思うときも、上記の感情的なハードルが影響していると考えられています。
相手の、特にネガティブな感情を受け止めることを苦痛に感じてしまうがゆえに、性急なアドバイスをしようとしてしまったり、安心させようとして性急に説得にかかってしまったりしてしまうと考えられます。
相手のためにできること=受け止めること
上記のようななかで、相手のためにできることとは、やはりきちんと「受け止めること」であると考えられます。
相手が直面していることがどのようなものなのかをありのままに理解しようとすること、その感覚を感じ取ろうとすること、そのためにただひたすらに耳を傾けることが、相手に対する最善であると考えられます。
相手の話を正確に理解しようとする過程で、「質問」は生じますが、そのことは聴くことを強化するものです。
ただし、質問には、不純物がなくオープンで正直な質問である必要があるとされます。
不純物とは、提案・批判・アドバイスしてあげよう・救ってあげよう・正そうといった自分の意図です。
このように、ひたすらに聴くことによって、話し手は自分の物語を話すことができるようになり、自分なりの現実を表現でき、さらに、課題に対する自分の感情を客観的に理解することで、次に進むべき道を内なる力によって見出すことができるようになります。