人は、聞いたことよりも聞かなかったことを後悔し、言わなかったことより言ったことを後悔する、といわれています。
ケイト・マーフィ著・篠田真貴子監訳、松丸さとみ訳「LISTEN」(日経BP)を読んで考えたこと。
自分の気持ちを率直に伝えることの功罪
他人に自分の気持ちを率直に伝えることは、手放しによいことなのかどうか。
ときにそれは、他人よりも自分の自我を優先させるということともいえます。
人は、”聞いたことよりも聞かなかったことを後悔し、言わなかったことより言ったことを後悔する”、ともいわれています。
特に言ってしまったことの後悔は大きいもので、”あのときもっとしっかり相手の話を聞いていればよかった・質問を投げかけたりしていればよかった”と思うものです。
機会とは実にタイミングがあるもので、そのタイミングを逃してしまうと、人の話というものは聞くことができなくなってしまいます。
聞かなかったことに後悔しないように、言ってしまったことを後悔しないように、と考えると、必ずしも常に自分の発言を優先するというのではなく、他人の話に耳を傾け、相手が自分の発言を聞く心の準備ができているかどうかのタイミングを見極めるということも重要ということになります。
個人主義と安心感のバランス
人は、別の人とコミュニケーションを取って連携することで、動物として生き残り、人としての社会を発展させることができてきたともいわれています。
個人主義は重要であるとはいえ、そのことによって他人の話を聞くことの価値が相対的に下がってしまっており、結果として、他人との連携・連帯感・帰属意識・一体感・安心感といったものを感じにくくなってしまうという弊害もあると考えられます。
また、SNSなどの進展は、あまりにも多くの情報・人の物語・他人の考えが溢れ、人として通常持ちうる消化キャパシティを超えてしまっているといわれています。
キャパシティを超えてしまった結果、情報の質も価値も感じることができなくなってしまっていると考えられます。
また、インターネットで氾濫している情報に触れる頻度は増える反面、親しい人と親密にじっくりと対話することが減り、そのような意味でも、情報の質や価値が下がっているとも考えられています。
価値ある情報は、聞くことから生まれる
人は、人同士と連携することで、様々な課題を解決してきています。
つまり、いかに他の人と連携することができるかは、人が生きて残っていくという意味でも重要なことであると考えられます。
そして、その他人と連携するということは、他人から情報を得ること、つまり、「聞く」ことからスタートします。
かつ、他人から話してもらえる(聞くことができる)ようにするには、まずは相手を思いやり、気配り、分別を持って接し、倫理的にふるまうことが重要になります。