多くの小さな店が、SNSやネット集客に力を入れても”なぜか顧客が増えない”という悩みを抱えています。手軽な集客ツールに頼りきってしまうほど、本当に来てほしい「生涯顧客」は遠ざかっている可能性もあります。集客の「量」ではなく「質」に焦点を当て、顧客と「価値」でつながるためのヒントを探ります。
中谷嘉孝著「リピート率90%超!あの小さなお店が儲かり続ける理由」(株式会社クロスメディア・パブリッシング)を参考として。
集客の「量」を追うほど、「質」が遠のく理由
手軽に始められるSNS発信や、広範囲に宣伝できる集客サイトは、集客方法として無料または安価でもあり、一見すると効率的に見えます。
しかし、これらの方法は、お店の「本当のファン」を育てるには不向きな側面があると考えられます。
”「条件」で選ぶ”顧客層の存在
集客サイトの利用者は、「今すぐ行けて便利か」「どれだけお得か」といった、その時々の利便性や価格を基準にお店を選びがちです。
お店への深い理解や共感や愛着よりも、あくまで自分だけの都合のみを最優先するので、長期的な信頼関係(リピート)には繋がりにくい傾向があります。
”情報の質と、利用する人間の属性は比例する”傾向があるといわれています。
お得さや便利さだけを求める層は、提供される情報の深さやお店の”本質的な価値”には関心が薄い可能性があるためです。
常に比較される競争の場
InstagramやX(旧Twitter)などは、無料で発信できる反面、誰もが発信できる”ライバルだらけ”の世界です。
つまり、ユーザーは常に他と比較しており、その時々の流行や目新しさで移りやすく、お店を一生支え続けてくれる「生涯顧客」が育ちにくいといえます。
不特定多数に向けたSNS発信よりも、例えばLINE公式アカウントなど、既存の顧客や見込み客の表情が見えてより深く繋がることができるツールのほうが、信頼関係の構築には有効である可能性もあります。
集客の「量」ではなく「精度」にこだわる
これからの集客で本当に必要なのは、数を集めること(量への執着)ではなく、「自分が求めている属性のお客様がしっかり集まっているか?」という、「精度へのこだわり」であると考えられます。
「価値」とは「相性」である
特にオーダーメイドビジネスのように、お客様一人ひとりと向き合う業態では、「相性」が非常に重要になります。
お客様と真摯に向き合い、悩みに寄り添い、お客様の声に耳を傾けてはじめてお客様はそのお店の正直な意見を聞き入れてくれ、そのお店は、真にその人に合った最も最適な提案を行うことができます。
これは、一方通行的な色合いの強いWebマーケティングとは相性が悪いといえます。
こまめな情報発信などいわゆる”熱心な”マーケティング施策に懸命に取り組んだとしても、それがが”かえって不快だ”という声をもらうこともあるということになります。
そもそもの問題として、「価値」は、受け取る人によって高価値にも無価値にもなります。
例えば、どれほど美味しくて価値の高い牛肉が手に入っても菜食主義者にとってはそれは無価値に映ります。
つまり、「価値とは相性である」ということであり、同じ物であっても、”スピードと手軽さ”を求める層と、”素材や手作り感”を求める層がいるように、価値観は人それぞれです。
つまり、”熱心な情報発信”も、その価値を必要としない顧客にとっては、「不要なもの」であったりします。
立地や空間、接客レベルといった「周辺価値」も含め、自店の持つ価値を正しく理解し、「価値とは、相思相愛の相手、いわば運命の人にめぐり会うためのツール」であると捉えて、すべての人に好かれようとするのではなく、自店の価値観と相性の良い人(運命の人)にめぐり会うことこそが重要であると考えられます。
”集客の要らない店”になるためのリアルブランド戦略
目指すべきゴールは、「顧客にとって唯一無二の店(=リアルブランド)」になることであると考えられます。
”知名度だけの店”と”リアルブランド”の違い
私たちは、”ブランド=有名な店”と誤解しがちですが、単に知名度が高いだけの店は”ブランドもどき”であって、本物のブランドとはいえないものであると考えるべきです。
| 比較 | 知名度だけの店 (ブランドもどき) | リアルブランド |
|---|---|---|
| 定義 | ただ単に有名な店(知名度が高い) | 明確な強み(リアルブランディング力)を持ち、 「その店に通う明確な理由」をお客様が持っている店 |
| 指標 | 知っている人が何人いるか? | ”この店でなくてはダメだ”という熱心なファンが何人いるか? |
| 目指す姿 | 知名度の向上 | ”潰れたら困る!”とお客様から言われるお店 |
ブランドの本質は「信頼」である
「信頼」はどう築かれるのか。
それは、テクニック以前の「真摯に向き合う姿勢」であり、かつ、信頼を得るために必要なことは、「その人の悩みに寄り添う気持ちである」という点に尽きると考えられます。
ブランドの本質とは「信頼」であって、自分らしさ(強み)とお客様との約束を守り続けた結果、築かれるものであると考えられます。
「強み」とは決して突飛なものではなく、”人間として自分自身が仕事を通じて積み重ねてきたきわめて人間臭い経験”こそが、最強の強み(=根本価値)となり得ると考えられます。
まずは、”目の前の既存客の「理解度」を大切に育てる”ことこそが最優先であって、それが叶えば、お客様から「リアルな口コミ」が自然と発生し、おのずと新たなお客様を呼んできてくれることになります。
真に目指すべきゴールは、相思相愛のお客様たちに囲まれ、「集客の要らない状況」になることであると考えられます。
