小さな店が顧客の心をつかむための集客について考える④

もし自分のの商圏内に自店よりも圧倒的に規模の大きい「大手チェーン店」や「強力な競合店」が進出してきたら。資本力で勝る相手と同じ土俵で戦うことは、小さなお店にとって得策ではありません。競合と争うことなく、自店の価値を理解してくれる優良な顧客だけを集め、安定して繁盛するための「戦わない経営戦略」について。

中谷嘉孝著「リピート率90%超!あの小さなお店が儲かり続ける理由」(株式会社クロスメディア・パブリッシング)を参考として。

目次

近隣に大手が出現!”戦わずに勝つ”発想

競合店の出現は決してピンチではなく、むしろ自店が「何屋」であり、「誰のための店」なのかを明確にする、ブランド進化の好機と捉えるべきと考えられます。

規模で戦わない

資金力やネームバリューを持つ大手企業と、”価格”や”利便性”で勝負をしとしても、もともと勝ち目はないものです。

大手企業が取る戦略は「強者の戦略」であり、小さな店が取るべき戦略とは根本的に異なるものだからです。

この場合に重要なことは、競合店を”ライバル”と見て対抗意識を燃やすのではなく、自店の「コンセプト」や「独自性」を研ぎ澄ますことであるといえます。

相手の動向を気にして、”あちらが値下げしたからこちらも”・”あちらがチラシを打ったからこちらも”などといった反応をしてしまうと、相手のルールで戦わされることになり、結果、疲弊してしまうことになります。

「異彩を放つ」ポジションを取る

戦わないためには、比較対象にならない存在になる必要があります。

例えば、大手が”安さ・便利さ・大衆向け”を売りにするのならば、小さな店は、以下のようなポジションを取ることで、棲み分けが可能になります。

  • 大手店: 広く浅く、効率重視、誰でも入りやすい
  • 小さな店: 狭く深く、体験重視、選ばれた人のための空間

あえてターゲットを絞り込んで、大手には真似できない「こだわりの空間」や「パーソナルな接客」を提供することで、独自の市場を築くことができます。

売上の80%を作る「20%の優良顧客」だけを選び抜く勇気

人口減少が進み、消費者の好みが多様化している時代において、”すべての人に好かれようとする”八方美人的な経営はリスクが高まります。

ここで重要になるのは、「パレートの法則(80:20の法則)」を意識した顧客選別です。

「捨てる勇気」が利益と質を高める

「売上の約80%は、上位20%の優良顧客(ロイヤルカスタマー)によって作られている」といわれています。

すべてのお客様を平等に扱うのではなく、「自店を深く愛してくれる20%のお客様の満足度を徹底的に高める」ことこそが、経営安定の鍵となります。

相性の悪い顧客や、無理な要求をする顧客への対応にリソースを割くことは、結果として大切な優良顧客へのリソースを割くことでもあり、損することしか生じないといえます。

ターゲットの明確化

”お客様は神様”という言葉を誤解することなく、「自店の価値観に共感してくれる人こそが真のお客様である」と定義し直したほうがよいと考えられます。

視点大切にすべき「優良顧客」距離を置くべき「ミスマッチ顧客」
価値観「店のこだわり」や「提案」に価値を感じてくださる価格の安さだけを基準に選ぶ
関係性スタッフやお店との相互理解で「信頼関係」を築けていける一方的な要求が多く、敬意がない
影響店の「ファン」となり、良い口コミを広げてくださるスタッフを疲弊させ、雰囲気を悪くする

勇気を持ってターゲットを絞り込むことは、機会損失ではなく、むしろ、コアなファン層との結びつきを強め、高収益体質へと転換するための第一歩であるといえます。

社員・顧客と「理念」を共有する”コミュニティー”を創造する

小規模な店舗が目指すべきは、単なる売り買いの関係を超えた「コミュニティー」の形成であると考えられます。

インナーブランディングの重要性

”社員は財産”と言われますが、それはあくまで経営理念やビジョンを共有できている場合に限られます。

経営者の想いやお店が提供したい価値がスタッフに浸透していない状態なのであれば、お客様にその魅力を伝えることはそもそも不可能です。

自社の商品やサービスを心から愛し、その価値を信じているスタッフが接客して初めて、お客様の心は動きます。

まずは社内に理念を浸透させる「インナーブランディング」が、集客の土台になっていきます。

価値観でつながる「強固なブランド」へ

戦わずに勝ち続ける経営のゴールは、「価値観の合うスタッフ」と「価値観の合うお客様」だけで構成された、密度の高い”コミュニティー”を創造することであると考えられます。

これを実現することにより、以下のような好循環が生まれます。

  1. 集客コストの低下
    ファンがファンを呼び込む紹介サイクルが生まれる。
  2. 価格競争からの脱却
    「この店だから」「あなただから」という理由で選ばれ、価格で比較されなくなる。
  3. モチベーションの向上
    価値観の合うお客様に囲まれることで、スタッフも楽しく働くことができる。

規模を拡大することだけが正解では絶対にありません。

独自の理念を掲げ、共感してくれる人たちと深くつながる。そのことにより築き上げた「ブランド」こそが、変化の激しい時代を生き抜く最強の武器となります。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

長崎で活動する
税理士、キャッシュフローコーチ

酒井寛志税理士事務所/税理士
㈱アンジェラス通り会計事務所/代表取締役

Gemini・ChatGPT・Claudeなど
×GoogleWorkspace×クラウド会計ソフトfreeeの活用法を研究する一方、
税務・資金繰り・マーケティングから
ガジェット・おすすめイベントまで、
税理士の視点で幅広く情報発信中

目次