孫子の兵法(24~26/形編)

「孫氏の兵法」から学べること。

目次

24)形編/まずは守りを固めて待つ

原文

孫子曰、昔之善戰者、先爲不可勝、以待敵之可勝、不可勝在己、可勝在敵、故善戰者、能爲不可勝、不能使敵可勝、故善戰者、能爲不可勝、不能使敵可勝、故曰、勝可知、而不可爲

書き下し分

孫子曰く、昔の善く戦う者は、先ず勝つべからざるを為して、以て敵の勝つべきを待つ。
勝つべからざるは己に在るも、勝つべきは敵に在り。
故に善く戦う者は、能く勝つべからざるを為すも、敵をして勝つべからしむること能わず。
故に曰く、勝は知るべくして、為すべからず、と。

昔の戦争がうまかった者は、まず味方の守りを固めて敵が勝てないような態勢を作り、その上で敵に弱いところを見せて、確実に勝てるときを待ったものである。

敵が勝てないようしっかりとした守りの態勢を作ることは自分たちで行えること。
一方で、敵に弱いところを見せて確実に勝てるようになるかどうかは敵次第ではある。

従って、うまく戦いを行う者は、敵が勝てないようしっかりとした守りの態勢を作ることはできるが、敵に弱いところを見せて確実に勝てるような状況については作り出せるものではない。

そのため、勝つということを知ることはできるが、それをすぐに実現することができるかは分からないと言われる。

25)形編/まずは味方を安全に守り、完勝を手にする

原文

不可勝者守也、可勝者攻也、守則不足、攻則有餘、善守者、藏於九地之下、善攻者、動於九天之上、故能自保而全勝也

書き下し分

勝つべからざる者は守なり。勝つべき者は攻なり。
守は則ち足らざればなり、攻は則ち余り有ればなり。
善く守る者は九地の下に蔵(かく)れ、善く攻むる者は九天の上に動く。
故に能く自ら保ちて勝を全とうするなり。

敵が勝てない態勢とは守りに関することであり、敵に勝つようにする態勢というのは攻めに関することである。

守るのは戦力が足りないからであり、攻めるのは戦力が十分で余裕があるからである。

守りのうまい者は、大地の深くに潜んで動きを悟らせないようする。
攻めのうまい者は、天高くからよく見て好機を逃さないように動く。

だからこそまずは味方を安全に守り、完全な勝利を手にすることができるのである。

26)形編/有名であることと有能であることは異なる

原文

見勝不過衆人之所知、非善之善者也。戰勝而天下曰善、非善之善者也。故舉秋毫不爲多力。見日月不爲明目。聞雷霆不爲聰耳

書き下し分

勝を見ること衆人の知る所に過ぎざるは、善の善なる者に非ざるなり。
戦い勝ちて天下善なりと曰うは、善の善なる者に非ざるなり。
故に秋亳を挙ぐるは多力と為さず。日月を見るは明目と為さず。雷霆を聞くは聡耳と為さず。

戦いにおける勝ちの要素を見抜く能力が世間一般人と同じようなレベルであっては、優れた者であるとはいえない。
戦いに勝って天下の人々が素晴らしいと褒めたとしても、優れた者であるとは限らない。

これは、軽い毛を持ち上げられるからといって力持ちであるとはいえず、太陽や月が見えるからといって目がいいとはいえず、雷鳴が聞こえるからといって耳がよいとはいえないことと同様である。

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