経営の悩みの大半は”どう売るか”に集中していますが、世の中には、「売る」ことではなく「買う」ことを主役に据えた商売が存在しており、かつ、その「買う商売」のほうが、実は利益を出しやすいという少し意外な構造があるようです。
事業家bot著「金儲けのレシピ」(実業之日本社)を参考にして。
ビジネスモデルあれこれ
- 集客より関係性、LTVが商売の土台
- 消費者から購入する
- セルフサービス
- スケールメリット、スモールメリット
- 「1対多」
- 両面に課金する
- 砂糖を売る
- 確率を設計する
- 雰囲気を売る
- 意思決定を支援する
- 仕入れを工夫する
- 贈答品を売る
- 高くて良いもの
- 権威になる
- コアファン共鳴型
- 仕組みそのものを売る
ほとんどの経営者は、「売る」ことのみを考えている
思考が「出口」に向いている
経営者にとっての感心のほとんどが「どう売るか」に向いています。
新しい集客の方法、値上げのタイミング、商品の見せ方、広告の打ち方。
どれも大切な論点です。
これらはすべて商売の「出口」、つまりお金が入ってくる瞬間にまつわる話です。
一方で、商売には「入口」もあります。
つまり、何を、どこから、いくらで仕入れるか。
この入口の側は、出口ほど熱心に語られることがありません。

「買う」を主役にした商売がある
中古品の買取を専門にする商売について。
中古本、中古車、ブランド品。
これらの業態は、お客様に「売る」ことよりも、お客様「から」買い取ることに、商売の重心を置いています。
街の買取店にとって、利益が生まれる本当の勝負どころは、売る瞬間ではなく、買い取る瞬間にあります。
いかに良いものを、いかに適正に安く仕入れられるか。
ここが整うと、逆説的に、売ることへの苦労も軽減されるのです。
「売る商売」と「買う商売」。
同じ商売でも、利益の源泉を置く場所が違います。
なぜ「買う商売」は、利益が出やすいのか
なぜ「買う」に重心を置くと、利益が出やすくなるのでしょうか。
その理由は、売り手と買い手の「真剣さの差」にあります。
消費者は「売るプロ」ではない
消費者がモノを買うとき、たいてい慎重です。
数百円の差を気にし、隣の店まで足を運ぶこともあります。
機会が多いですし、おのずと価格感応度が高いといえます。
ところが、同じ人がモノを「売る」ときには、やや様子が変わります。
使わなくなった本やバッグを手放すとき、その正確な相場を調べ抜いてから売る人はなかなかいません。
”捨てるよりは、いくらかでもお金になればいい”。
そんな気持ちで手放すことが多いものです。
つまり、消費者は「買うプロ」ではあっても、「売るプロ」ではないのです。
ここに、相場を知る側が価値を生む余地が生まれることになります。
利益は「相場を知っていること」から生まれる
相場を知っている者が、相場を知らない者との間に立つ。
手放したい人にとっては、面倒な相場調べをせずに現金化できる。
買い取る側は、適正な目利きによって価値あるものを再び世に送り出せる。
両者にとって意味のある取引であるともいえます。
粗利、つまり売上から原価を引いた利益は、「売値」と「仕入れ値」の差で決まります。
多くの経営者は、この粗利を増やそうとするとき、反射的に「売値を上げる」ことを考えます。
けれど、粗利を決めているもう一方の要素は「仕入れ値」です。
買う商売が強いのは、この仕入れ値を下げる力に、商売そのものの設計が向いているからであるといえます。

「買う」のはモノだけではない—労働力という入口
けれど、「買う」対象はモノだけではありません。
人の手、つまり労働力もまた、取りまとめて価値に変えられる「入口」のひとつです。
人手を「取りまとめて」価値にする
インターネットで仕事を発注できるクラウドソーシングや、人材派遣の仕組みについて。
世の中に散らばっている個人の労働力を集め、それを企業へ束ねて届ける。
この「取りまとめ役」は、間に立つことで成り立つ商売です。
個人にとっては、自分に合った仕事が見つかる。
企業にとっては、必要なときに必要な人手がすぐ手に入る。
散らばっていたものを束ねて、双方にとって使いやすい形にする。
ここに、”取りまとめる側の価値”が生まれます。
なぜ「取りまとめ」にニーズがあるのか
では、企業はなぜ自分で直接人を雇わず、こうした仕組みを使うのか。
理由のひとつは、必要な分だけ、すぐに手当てしたいという事情にあります。
日本では、一度正社員として雇い入れた人に長く働いてもらう前提が強く、雇用は手厚く守られています。
これは働く人にとって大切な仕組みですが、企業の側から見ると、仕事の量が増えたり減ったりするたびに人数を調整するのは、簡単ではありません。
そのため、「必要なときに、必要な分だけ」という流動的な人手に、確かなニーズが生まれます。
固定費を変動費に変えるという視点
この”労働力を取りまとめる”発想は、自社の経営にも裏返して応用できます。
人件費は「固定費」です。
仕事があってもなくても、毎月決まってかかります。
一方、外注や業務委託で必要なときだけ依頼する人件費は、「変動費」に近づきます。
使った分だけ、というわけです。
キャッシュフローの観点では、固定費を変動費に近づけられると、売上の波に対して経営が柔軟になります。
毎月必ず出ていくお金が軽くなれば、利益が出始める損益分岐点も下がります。
とはいえ、なんでも外に出して変動費にすればよい、というわけではないものです。
会社の核となる仕事や、社内に蓄えるべきノウハウまで手放してしまうと、目先の身軽さと引き換えに、組織が育つ力を失います。
人を「変動するコスト」としてだけ見るのか、「育てて価値を生む資産」として見るのか。
その線引きこそは、経営者に問われる判断力であるといえます。
自社の「買う側」に眠る利益を探す
この「買う商売」の発想は、買取業を営む人だけのものなのか。
そうともいえません。
どんな会社にも「入口」があり、そこには見過ごされた利益が眠っている可能性があります。
「入口」を一度、棚卸ししてみる
自社が何かを仕入れ、外注し、調達しているか。
材料の仕入れ先、外注している業務、長く取引している協力会社。
これらの「入口」を、出口と同じくらいの真剣さで見直したことが、どれくらいあるでしょうか。
値上げ交渉や新規開拓と違い、仕入れ・調達の見直しは地味で、後回しにされがちなのです。
ただ、粗利という観点では、売値を1割上げるのも、仕入れ値を1割下げるのも、利益への効き方はそう変わりません。
むしろ、お客様の理解を得にくい値上げより、仕入れ側の静かな見直しのほうが、抵抗なく粗利を改善できる場合もありえるのです。

ただし、「買う」に偏りすぎない
買う商売がいつでも万能というわけではありません。
安く仕入れることに偏りすぎると、在庫を抱えるリスクや、目利きできる人材への依存という、別の弱点が生まれます。
良い仕入れも、出口である販売とつながって初めて利益になります。
大切なのは「売る」を捨てることではなく、「売る」に偏っていた視点を「買う」にも開き、両方のバランスで利益構造を眺め直すことであるとは思います。
