AIエージェントに仕事を任せていると、先月と同じ集計を頼んだはずなのに、「あのExcelファイルはどこにあったか」「前提条件」など、また一から説明することになる。
便利なはずのAIが、実は毎回「思い出させる」時間を食っている、この違和感の正体と、その解決の方向性について。
池田朋弘『Claude 最強のAI自動化術』(芸術新聞社)を参考にして。

「毎回説明する」という見えないコスト
AIに頼むたび、同じ前置きを繰り返していないか
AIエージェントを実際に業務へ組み込んでみると、負担の大きい部分は別のところにあることに気づきます。
それは、「どのデータを見ればいいか」を毎回説明し直す作業です。
先月のアンケート結果はこのファイル、売上の推移はこのシート、というように、置き場所や形式を都度伝え直す。
説明が終わる頃には、本来やりたかった分析に使う時間の大半が消えている、ということが起こりがちです。
そして翌月になると、また同じ説明を一から繰り返すことになります。
蓄積したいデータには2つの種類がある
この負担を減らすには、AIに預けるデータを整理しておく発想が要ります。
蓄積したいデータは、大きく2種類に分けて考えると整理しやすくなります。
ひとつは、会議のメモや調査結果、気づいたことのログなど、形式を決めずにそのまま積み上げていくデータです。
自由記述の欄にどんどん書き足していくイメージに近いといえます。
もうひとつは、毎日の来客数や毎月の売上のように、時系列で規則的に積み上がっていくデータです。
「いつ・何が・いくつ」という型が決まっていて、後から集計したりグラフ化したりするのに向いています。
どちらのタイプのデータも、AIが自由に読み書きできる場所にまとめておけるかどうかで、活用の度合いが大きく変わってきます。

「専用の置き場所」を持つという発想
表計算ソフトやメモアプリでも、データを溜めておくことができます。
ただし、量が増えたり、複数のAIに同時に読み書きさせようとした瞬間に行き詰まってしまいます。
ファイルがどこにあるかを毎回指定する必要がありますし、ファイルの数が増えると、目的の情報を探すことすら難しくなっていきます。
こうした限界を解消するのが、AIと連携することを前提にした専用のデータの置き場所です。
大量のデータを高速に検索・更新できる状態にしておけば、AIと組み合わせて使うときの使い勝手が根本的に変わるのです。
しかも、こうした置き場所を用意するために専門的な知識は必須ではありません。
「学びを保存する場所を作ってほしい」とAIに日本語で頼むだけで、構造を考えて用意してくれる時代になっています。
さらに一歩進めると、毎日決まった時刻に外部の情報を取りに行き、自動でデータを追加し続ける仕組みも作ることができます。
自分のパソコンを立ち上げていなくても、気づけばデータが積み上がっている状態です。
「気づいたときに自分で書き足す」データと、「放っておいても自動で溜まり続ける」データ。
この両輪を持っておくことが、これからのAI活用の基本になっていきそうです。
もちろん、外部にデータを置くということは、設定を誤ると誰でも読める状態になり得るということでもあります。
アクセス権限をきちんと絞る設定は、AIに任せきりにせず、必ず自分の目で確認する意識を持っておきたいところです。

ツールは移り変わるが、データは資産として残る
データを自分の手元に持っておくことの意味は、大きく2つに集約されます。
1つは、説明のコストがゼロになることです。
AIが直接データを読み書きできれば、「まず状況を伝える」という前段の作業そのものが要らなくなります。
分析業務にかかる時間の多くは、実は「データを準備する」時間で消えているケースが少なくありません。
もう1つは、使うAIのツールが変わっても、データ自体はそのまま使い続けられることです。
いま優秀とされているAIも、半年後には状況が変わっているかもしれません。
そのとき、自分のデータが特定のツールの中に閉じ込められていたら、乗り換えるたびに積み上げてきたものがリセットされてしまいます。
データを外部の基盤に置いておく判断は、特定のツールへの依存を避けるための、いわば長期的な投資だといえます。
この視点で見ると、AIエージェントによる自動化は、2つの軸で考えるとうまく整理できます。
1つは、業務の手順そのものを仕組み化していく方向。
もう1つは、日々のデータを蓄積していく方向です。
業務の手順は、状況が変わればわりと早く古くなっていくものです。
一方でデータは、積み上げれば積み上げるほど、後から振り返ったときの価値を増していきます。
目の前の作業をどう自動化するかだけでなく、その過程で生まれるデータをどこに、どんな形で残していくか。
この両輪を意識しておくことが、AIエージェントとうまく付き合い続けるための、地味だけれど大事な条件になっていくように感じています。
