経理データの仕訳登録から、税務申告書のチェック、ブログの執筆まで、Claudeに繰り返し頼む作業をひとつずつ手順書の形にして積み上げてきました。
そんな中で「Claude最強のAI自動化術」という書籍を読み、自分たちの積み上げ方そのものを見直したくなる一節に出会いました。「スキルの作り方には、8つの定型パターンがある」という整理です。
自分たちのスキルがこの8パターンのどこに偏っているのか考えてみるよい機会になりました。
池田朋弘『Claude 最強のAI自動化術』(芸術新聞社)を参考にして。
スキル化の8パターン
同書によれば、スキルの作り方にはいくつかの定型パターンがあり、自分の業務がどれに当てはまるかを考えると、スキル化の入り口が見つけやすくなるといいます。
全部で8つあり、前半の4つはどちらかというと「同じ作業を量産する」ことに重心があり、後半の4つは判断や検証の要素が強くなります。
まずは全体を一覧で見取り図にしたうえで、ひとつずつ見ていきます。
| パターン | ひとことでいうと |
|---|---|
| ①テンプレート充填型 | 決まった型に情報を流し込む |
| ②条件分岐カスタマイズ型 | 条件によって出力を切り替える |
| ③データ集約→分析型 | 複数のデータを集めて分析する |
| ④ソース変換型 | ひとつの素材を複数の形に展開する |
| ⑤差分検知→更新型 | 変化を検知して関連資料を更新する |
| ⑥ルールベース検査型 | 決めたルールで対象を照合する |
| ⑦対話→構造化型 | 会話・議事録から情報を抜き出し整理する |
| ⑧多段階リサーチ→判断材料型 | 情報収集から提言まで判断材料を作る |

自分の業務がこの8つのどれに当てはまりそうか考えてみると、たいていの業務はどれかに分類できる、と書籍は述べています。
実際に当てはめてみると、たしかにしっくりくる業務が次々に浮かびました。
①テンプレート充填型
決まった型に情報を流し込んで成果物を作るパターン。
週報や経費レポート、採用の内定通知書などが当てはまります。
書籍でも、もっとも取り組みやすい入門型と位置づけられていました。
毎回、書式は同じなのに手間だけかかるような作業は、たいていここに分類できます。
②条件分岐カスタマイズ型
入力される条件によって、出力する内容を切り替えるパターン。
業界別の導入事例や、職種ごとに内容を変える研修コンテンツ、一人ひとりに合わせたオンボーディング資料などが例に挙がっていました。
テンプレート充填型との違いは、出す型そのものが相手によって変わる点にあります。
③データ集約→分析型
複数のデータソースから情報を集めて分析し、レポートにまとめるパターン。
予算と実績の差異分析や、KPI(重要な経営指標)をまとめたダッシュボード、市場トレンドのサマリー作成などが該当します。
バラバラの場所にある数字を、毎回自分で拾い集めている作業があれば、この型の候補です。
④ソース変換型
ひとつの素材を複数のフォーマットに展開するパターン。
ブログ記事をSNS投稿用に書き直したり、セミナー動画から短い広告動画を切り出したり、製品発表の内容をFAQやランディングページに変換したりする使い方が紹介されていました。
ひとつ作ったら、あとは器を変えて使い回すという発想です。
⑤差分検知→更新型
元のデータに変化があったことを検知して、関連するドキュメントを自動で更新するパターン。
FAQの差分更新や、固定資産台帳の更新、製品アップデートに伴う説明資料の改訂などが挙げられていました。
元がこう変わったからこっちも直さないと、という連動作業に向いています。
⑥ルールベース検査型
決められたルールに沿って、対象物をチェックするパターン。
契約書のチェックや、ブランドの表現チェック、法規制への適合チェックなどが該当します。
ルールさえ明文化できれば、見落としなく淡々と照合してくれるのが強みです。
⑦対話→構造化型
会話や議事録のような、そのままでは扱いにくいデータから必要な情報を抜き出し、構造化するパターン。
1on1の振り返りシート作成や、次にやるべきことの抽出、どの部署に引き継ぐべきかの判断などに向いているとされていました。
人と人のやり取りという、もっとも整理が後回しになりがちな情報を扱う型です。
⑧多段階リサーチ→判断材料型
情報収集、比較分析、シミュレーション、提言というように、複数の段階を踏んで判断材料をまとめるパターン。
競合分析や新規事業の投資判断、費用対効果の分析などが例として紹介されていました。
8つの中でもっとも工程が長く、人が最終判断を下す前段までを丸ごと引き受けさせる型といえます。
業務領域を横断すると、使い道はもっと広がる
書籍では続けて、8つのパターンを実際の業務領域に当てはめた具体例が、8つの領域にわたって紹介されていました。
営業から人事、プロジェクト管理まで、ほぼすべての部門が対象になっている点にまず驚かされます。
ここではそのエッセンスを整理します。
| 業務領域 | 具体例(一部) |
|---|---|
| 営業・顧客対応 | リードの属性に応じたアプローチメールの作成/顧客ごとにカスタマイズした提案書の生成/見積書・契約書ドラフトの作成 |
| マーケティング・コンテンツ | ブログ記事の検索エンジン最適化/SNS投稿の生成/広告A/Bテスト結果の分析と改善提案 |
| カスタマーサクセス・サポート | 契約プランに応じたオンボーディングガイドの自動生成/専門部署への引き継ぎ要否を判断するエスカレーション基準の提案 |
| 財務・経理・法務 | 予算実績の差異分析レポート/固定資産台帳の更新と減価償却費の計算/契約書ドラフトの差分チェック |
| 経営・戦略・企画 | 顧客が「片付けたい用事」を分析するJTBD(ジョブ理論)フレームワークの活用/新規事業立ち上げの投資判断資料の作成 |
| 人事・採用・組織 | キャリアパス・能力開発計画書の個別作成/求人票の作成と多言語化 |
| プロジェクト管理・チームコラボ | 対象に応じてトーンを変える会議議事録や進捗報告書の自動生成 |
| 業務オペレーション・社内管理 | 新入社員のオンボーディング手続きの整理/経費精算データの読み取りと整形 |
とりわけ財務・経理・法務の領域は、当事務所の本業とそのまま重なります。
固定資産台帳の更新や差異分析レポートは、まさに日々クライアントに提供している価値そのものです。
この一覧をあらためて前章の8パターンと照らし合わせると、財務・経理・法務の具体例の多くは「データ集約→分析型」や「ルールベース検査型」に、経営・戦略・企画の具体例は「多段階リサーチ→判断材料型」に近いことがわかります。
業務領域と活用パターンは、別々の軸ではなく、掛け合わせて考えるものだと気づかされました。

こうして並べてみると、共通しているのは「毎回同じことをやっている」「フォーマットが決まっている」「過去の知見をそのつど探し直している」と感じる作業ほど、スキル化の対象になりやすいという点です。
この印象は、当事務所でスキルを増やしてきた感覚とも重なります。
108個のスキルは、どのパターンに偏っているか
当事務所の108個のスキルを、この8パターンに照らして棚卸ししてみました。
もっとも数が多かったのは、やはり「ルールベース検査型」でした。
税務申告書のチェックや月次帳簿のチェック、総会資料のチェック、会計ソフトの自動登録ルールの点検など、決められた基準に沿って対象を検証するスキルが数多くを占めています。
税務・会計は正確性が生命線の仕事なので、この型に厚みが出るのは自然な結果だと感じます。
次に厚いのが「テンプレート充填型」でした。
月次報告書や請求書の発行、議事録の作成など、決まった型に情報を流し込む定型業務は、たしかに取り組みやすく、実際にスキル化の入り口になっていました。
「差分検知→更新型」も、取引先マスタの整備や自動登録ルールの点検といった形で、思った以上に活用できていました。
「条件分岐カスタマイズ型」も、数えてみると案外な厚みがありました。
クライアントごとに記帳の仕方や決済手段が違うため、同じ「月次経理」という依頼でも、まず状況を判定してから枝分かれさせる作りにせざるを得なかったからです。
狙って条件分岐型を選んだというより、クライアントの数だけ事情が違うことに、後から気づかされた形です。
「ソース変換型」も、PDFの結合・差し替え・章単位への整理など、書類まわりの変換作業として一定の数がありました。

一方、手薄だったのが「多段階リサーチ→判断材料型」。
財務デューデリジェンスのスキルなど一部では使えていますが、情報収集から比較分析、提言までを一気通貫でこなすスキルは、まだ数えるほどしかありません。
「対話→構造化型」も、面談の議事録作成にとどまっており、書籍が挙げていたような、エスカレーション判断のような一歩踏み込んだ使い方までは手が回っていませんでした。
この2つの型は、税務判断そのものではなく、判断の材料を整えるところまでをAIに任せる使い方です。
専門的な判断はしないという当事務所の一線を守りながらも、判断の手前まで踏み込んで材料を揃えるスキルを増やす余地は、まだ十分に残っていると気づきました。
振り返ってみると、当事務所のスキルは「正確に処理する」「正しくチェックする」という守りの型に厚みが出ていて、「情報を集めて選択肢を示す」という攻めの型が薄い、という偏り方をしていました。
これから増やしたいのは、“判断の手前”を任せるスキル
判断の材料を整えるところまでをAIに任せるという発想は、方向性として有用と感じています。
税務・会計上の専門的判断そのものは人が最終確認する一線を崩さないまま、そこに至るまでの情報収集や比較検討をスキルに任せる余地は、まだ相当に残っています。
たとえば、補助金の情報を集めるスキルはすでにありますが、集めた情報をクライアントごとの状況と突き合わせて優先順位をつけるところまでは、まだ人の手に委ねたままです。
総会資料や決算書をチェックするスキルも、指摘事項を洗い出すところまでは自動化できていますが、指摘の重み付けや先方への伝え方の提案までは踏み込んでいません。
「多段階リサーチ→判断材料型」と「対話→構造化型」を意識的に増やしていくことが、次の一手になりそう、と感じました。
面談の議事録作成というひとつのスキルにしても、決定事項や宿題を抜き出すところまでは「対話→構造化型」として動いていますが、そこから「次回までにどの論点を詰めておくべきか」を提案するところまで踏み込めば、判断材料型に一歩近づきます。
1つのスキルを、別の型の要素で拡張していくという発想も、今回8パターンを整理して見えたところです。
スキルの数は、これからも増え続けると思います。
この8つの型でバランスを見ながら「次はどの型が手薄か」を意識して設計するほうが、遠回りに見えて着実な積み上げ方だと感じています。
