生成AIは単なる対話ツールから、自ら計画し行動する「エージェント」へと進化してきています。そのための5つのポイントを考えます。
松本勇気著「生成AI「戦力化」の教科書」(株式会社日経BP)を参考にして。
自ら考え行動する「AIエージェント」とは?
「エージェント」という言葉は、技術界隈だけでなくビジネスシーンでも大きな注目を集めています。
そもそもこれまでのGeminiのようなチャットボットや業務自動化のワークフローとは、一体何が違うのか?
「自律性」と「目的志向性」
従来のアプローチ(ワークフロー)があらかじめ決められた手順をなぞる「道具」だとした場合、エージェントは、与えられた目的を達成するために、自ら推論し計画を立てる「主体」であると説明されます。
例えば、「財務状況をレポートして」と頼んだ場合の違いは、以下の通りです。
- 従来のワークフロー: あらかじめ定義された計算式でデータを出力して終了。
- AIエージェント: 「まずは株価を確認し、次に競合情報をWeb検索し、最後に社内レポートと比較しよう」といった手順(Plan)をその場で自律的に構築し実行する。
エージェントの行動サイクル
エージェントは主に以下のサイクルを回して仕事を進めます。
- Planning(計画): ゴールから逆算して最適な行動手順を考える。
- Action(実行): 外部ツールや検索機能を使って情報を集める。
- Evaluation(評価): 自分の行動がうまくいったか自己評価し、必要なら軌道修正する。
このように、試行錯誤しながらゴールを目指せることが、エージェントが”物知りでタフで賢い新入社員”に例えられる所以です。
なぜ今「エージェント」なのか?その可能性と現実的な課題
LLM(大規模言語モデル)の推論能力が飛躍的に向上してきており、複雑な計画立案が可能になっています。
期待される可能性
すでに「Deep Research」のように、特定のテーマについて時間をかけて多角的に調査し、人間顔負けのレポートを作成する機能も登場しています。
主要IT企業も、こぞってシステムへの組み込みを進めており、ビジネス変革の手段として期待されています。
直面している「壁」
現時点では課題も残されています。
導入にあたっては以下のリスクを理解しておく必要があります。
- ミスの蓄積
エージェントは、複数の工程を経てタスクを行いますが、工程が増えるほど成功率は下がります。例えば、成功率90%の工程が5つ続くと、全体の成功率は約59%($0.9^5$)まで低下してしまいます。 - 信頼性の問題
LLMは依然として事実に基づかない情報を生成するリスクがあり、完全に任せきりにすることは難しいのが現状です。
エージェントを戦力化する5つのポイント
まだ発展途上であるエージェント技術を、私たちはどのように業務に取り入れていけばよいのか。
エージェント活用の5つのポイント
- すべての業務をエージェントにしようとしない
「エージェント」という言葉の響きに惑わされず、コストや確実性を見極めることが大切です。既存システムで解決できることは無理に変える必要はありません。 - やり方が明確な業務は「ワークフロー」の出番
手順が完全に決まっている定型業務なら、エージェントよりも従来のワークフローの方が確実で低コストです。適材適所でツールを選択しましょう。 - 人間との「コラボレーション」を前提とする
エージェントを「仕事を完全に置き換えるもの」ではなく、「能力を拡張するパートナー」と位置づけます。必ず人間が最終確認を行う設計にすることが不可欠です。 - 「新人の部下」として期待値をコントロールする
「優秀だが、まだ会社のことをよく知らない新人」と考えましょう。下書きはAI、仕上げやチェックは人間といった役割分担が、現時点では最も有効な協力関係です。 - 常に「ホウレンソウ」させる
自律的に動くからこそ、勝手な行動を防ぐ必要があります。重要な判断の前や処理の節目で人間に報告させ、軌道修正できる仕組みを組み込みましょう。
AIオンボーディングが未来への投資になる
エージェント技術は今後も進化し続け、より複雑なタスクをこなせるようになりそうです。
しかしながら、彼らが真に活躍するためには、企業固有の知識(ナレッジベース)と仕事の進め方(ワークフロー)を教え込むプロセスが不可欠です。
どんなに優秀なエージェントでも、社内の情報やルールを知らなければ力を発揮できません。
今のうちから社内のデータや業務プロセスを整備しておくことは、将来的なAI活用を加速させる最も確実な投資となるといえます。
